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重点テーマについて

平成22年度(2010年度)より、研究・実践活動の効率化と成果の集約化を図るため、各年度に取り組むべき重点テーマを定め、その年度に開催されるシンポジウムをはじめ、研究・実践助成の選定及び諸活動に反映しております。

過去の重点テーマ

2026年度重点テーマ

「リジェネラティブ(再生成)なすまいとまちへ
:持続可能性を超えて再編される住宅地と都市」

研究運営委員会 委員
小泉 秀樹(東京大学大学院 教授)

気候変動への対応や生物多様性確保、高齢社会や少子化問題の対処と解消、移民の受け入れなど21世紀に入り、多様な課題に対し、並立的・調和的もしくは創造的対応を求められている現代の住宅地及び都市の再編の実態や目指すべき住宅地・都市像を探究することをテーマとしたい。
その際、リジェネラティブ(regenerative:再生成的(筆者による和訳))概念に着目する。リジェネラティブ(再生成)は、特に欧州においてこれからの住宅地や都市の更新のあり方を示すものとして注目されている計画概念である(参考文献参照)。
リジェネラティブ(再生成)概念は、持続可能性を超えて、環境に配慮した再生を果たすという観点から紹介されることが多いが、本研究課題ではその点を包含しつつ、以下の2点をさらに付加した(含意した)概念として提起したい。一つは、現在未来の課題に応答し得る生成的に変化を生み出すメカニズムを持つ(人やもの(人工物)自然的環境が一つの系として相互に関連しながら生成的再生をすること、そのプロセスを具備すること)という含意であり、今一つは、気候変動への対応や生物多様性確保、高齢社会や少子化への対処と解消、移民の受け入れなどを含む社会的包摂への対応などが複雑に関連しあった現代住宅地・都市の課題について、調和的かつ創造的に解決方法を見出す、という含意である。
こうしたリジェネラティブなすまいとまちへと転換するために何が課題であり、何が求められているのか?
例えば、各課題を個別に解決すると想定される住宅地や都市のあり方はどこまで(どのような方法で)明らかになっており、またそれはどのような姿や像であるのかについて整理した上で、それらに関する探究をさらに深める必要があろう。(つまりは、気候変動や生物多様性に対応した住宅地や都市、高齢社会や少子化に対応した住宅地や都市、社会的包摂を実現する住宅地や都市とはどのようなものか、その像やその探究方法について検討し発展させる必要があるだろう)
その上で、カーボン及びネイチャーポジティブでありながら社会的包摂や高齢/少子化社会といった多種の課題に対応し得るリジェネラティブ住宅地・都市とはどのような形態であるのか、更にはどのように生成的に生み出されるものなのか(像や、生成方法メカニズム・実現に必要とされる社会制度や主体論、プロセス論など)について探究する必要があろう。そして、これらの点を探るために内外の先進的な事例に学ぶことも有効であるかもしれない。
持続可能性を超えて再編されるリジェネラティブな住宅地と都市のあり方を探究する意欲的な研究と実践を期待します。

〈研究テーマ設定のためのキーワード〉

  • リジェネラティブ
  • 気候変動・生物多様性への対応
  • 社会的包摂
  • 少子化、高齢化社会への対応
  • 場所論
  • スマートシティ

「リジェネラティブ(再生成)なすまいとまちへ」研究委員会
(委員五十音順)2024.10月現在

委員長
小泉 秀樹(東京大学大学院 教授)
委 員
中島 弘貴(東京大学大学院 特任講師)
西村 愛(明海大学 准教授)
三浦 詩乃(中央大学 准教授)
宮森 剛
(経済協力開発機構(OECD)
サステナブル建築ユニットシニアマネージャー)
村山 顕人(東京大学大学院 教授)

2025年度重点テーマ

「ネットワーク化する住み方と住まいのかたち」

研究運営委員会 委員
小伊藤 亜希子(大阪公立大学大学院 教授)

人口減少時代に入り、家族の形も縮小するとともに多様化しています。単身や夫婦のみ世帯の数は半数を超え、またひとり親世帯、世帯内単身者、非血縁家族など家族のかたちも多様になり、子育て核家族である「標準家族」はすでに標準ではなくなりました。戦後にモデルチェンジし、プロトタイプとして大量に供給されたnLDK 型住宅ストックは、その使われ方の変容を迫られています。
一方、縮小した家族は、必然的につながりを求めることになります。子育てや高齢者ケアを家族ネットワークで支え合う親子近居はその典型です。またこれからの時代は、シェア居住や住まいを開くことによって、血縁を超えてつながりをつくる住み方も重要性を増していくものと思われます。
一住宅一家族にとどまらず、そうした多様な家族と住み方を受け入れる住宅のかたちやしくみのあり方が問われています。
そこで課題になるのが、どこに住むのかの選択です。コロナ禍を契機とした在宅ワークの普及は、居住地選択の幅を広げました。勤務地との距離よりも住宅やライフスタイルを優先する人が現れ、地方移住も注目を集めるようになっています。Uターン移住による近居や多拠点居住、転職や起業による働き方の変化も含め、移住はライフスタイルの大きな変化を伴います。また関係人口とよばれる地域に強いつながりをもつ人々の存在も注目されます。多様な人口を受け入れ、ネットワーク化する新しい住み方に対応する住宅や場をどう供給するのかは、空き家ストックの活用を含め、高齢化・人口減少の課題を抱える地域としても大きな課題です。働く場を兼ねた住宅、小さな家族や家族を超えた居住を受け入れる住空間は、機能分離を主眼とする nLDK 型では収まりきらず、日本の伝統住宅が持っていた柔軟な空間特性への回帰、再評価も課題になるでしょう。
さらに移住や海外にルーツをもつ多様な人々が、新しい居住地や住宅にどのように馴染み、働き方、住まい、地域の人とのつながりを含め、段階的にライフスタイルをカスタマイズしてゆくプロセスとその支援も重要です。
こうしたネットワーク化する住み方に対応し、家族やコミュニティのダイバーシティと多様なライフスタイルを許容し、だれもが豊かに暮らせる住まいのかたちとしくみづくりに寄与する研究と実践を期待します。

〈研究テーマ設定のためのキーワード〉

  • 家族縮小
  • 家族のダイバーシティ
  • 近居
  • 移住
  • 多拠点居住
  • シェア居住
  • 開かれた住まい
  • 脱nLDK
  • 住宅ストック活用

「つながりをつくる新しい住まいのかたち」研究委員会
(委員五十音順)2023.7月現在

委員長
小伊藤 亜希子(大阪公立大学大学院 教授)
委 員
川田 菜穂子  (大分大学 准教授)
葛西 リサ    (追手門学院大学 准教授)
近藤 民代    (神戸大学 教授)
土井 脩史    (大阪公立大学大学院 講師)
柳沢 究      (京都大学大学院 准教授)

2024年度重点テーマ

「郊外住宅地のネイバーフッドマネジメント」

研究運営委員会 委員
齊藤 広子(横浜市立大学 教授)

重点テーマは、「郊外住宅地のネイバーフッドマネジメント」である。ここでいう、住宅地は、所有形態を問わず、戸建て住宅地、団地、集合住宅、マンション、そしてこれらが混在するものを指している。こうした住宅地では、再生の必要性が高まっている。住宅所有者自身は高齢化し、なかなか自らで再生することが難しい。また、行政も私有財産に手を出すことには課題がある。住宅地・住宅をつくった開発事業者は、「手離れ良く」その場から去っている。そこで、なんとか、地元町内会や自治会での対応もあるが課題が多い。そのなかで、町内会をベースにした NPO、一般社団法人、民間企業などによる再生事例も見られている。今後、補助金に依存した再生は持続可能ではない。再生を市場のメカニズムを使いながら、ソーシャルビジネスや金融等と連携し誰が(主体)どう進めていくのか。そのために必要な対応として法制度、政策なども含めた社会システムのあり方を考えたい。
『ネイバーフッドマネジメント』とは、あらたに設定した概念である。そこで、この言葉への思いを伝えたい。ネイバーフッドとは、近隣のエリア、地域や地区を指す概念で、かつ、ここには人だけでなく、暮らし、空間、その関係性、それを支える、慣習、ルールや文化、制度や仕組み等を含む概念である。従来のエリアマネジメント、コミュニティマネジメント、コミュニティディベロップメント等を包括する概念である。エリアマネジメントでは、地域を限定したマネジメントとなり、クローズドになってしまう。むしろ、エリアを限定せず、核を創り、その核から境界を越え、まわりに影響を与えていくような動きが必要ではないか。コミュニティマネジメントでは、コミュニティが主体となり、主体が限定的になってしまう。主体の多様性や連携がこれからの住宅地の再生に必要ではないか。コミュニティディベロップメントでは、開発がイメージされ、管理や再生が含まれない。そもそも、再生が必要になったのは、日常的な管理が適正に行われていなかった、あるいは、開発時から将来のことを考えた空間の作り方や、マネジメント体制が設定されていなかった可能性がある。そこで、開発、管理、建替え、改善などを総合的に考える必要がある。そうしたネイバーフッドをマネジメントしていこうというのが主旨(テーマ)である。
具体的には、郊外の戸建て住宅地の再生を含んだマネジメントのあり方、団地やマンションのマネジメント、両者を含んだまちのマネジメントなど、その実態と課題を明らかにし、あらたなマネジメント手法の確立と、そのための社会システムのありかたを考察していきたい。ゆえに、挑戦的な実践や、実践事例からのネイバーフッドマネジメントのあらたな手法確立を目指す研究を大いに応援したい。

〈研究テーマ設定のためのキーワード〉

  • 郊外住宅地
  • エリアマネジメント
  • 住宅地再生・団地再生・マンション再生・まちの再生
  • 公民連携(PPP、PFIなども含む)
  • 市場活用・民間力活用
  • ソーシャルビジネス・社会関係資本
  • HOA・管理組合

「郊外住宅地のネイバーフッドマネジメント」研究委員会
(委員五十音順)2023.9月現在

委員長
齊藤 広子(横浜市立大学 教授)
委 員
佐藤 元 (横浜マリン法律事務所 弁護士/横浜市立大学大学院 客員准教授)
柴田 建 (大分大学 准教授)
長谷川 洋(国土交通省 国土技術政策総合研究所 建築研究部長)
藤井 さやか(筑波大学 准教授)
矢吹 剣一(東京大学先端科学技術研究センター 特任助教)