サイトトップ重点テーマについて アーカイブ

  • 助成事業
  • 住総研アーカイブ
  • 住総研シンポジウム
  • 住総研住まい読本
  • 住総研動画アーカイブ
  • 住まい・まち学習(住教育授業助成)
  • 市ヶ谷加賀町シェア居住
  • 図書室蔵書検索
  • すまいろん検索
  • 住総研清水康雄賞
  • 住総研研究選奨
  • 住総研博士論文賞

重点テーマについて アーカイブ

2017年度重点テーマ(平成29年度)

「住まい手からみた 住宅の使用価値(Value-in-Use)」

研究運営委員会 委員
野城 智也(東京大学生産技術研究所 教授)

日本人は生涯収入の相当な割合を住宅建設・購入にあててきた。しかし既存住宅市場が未成熟であるため、持ち家の売却可能価格は、建設・購入への支出総額には遠く及ばない。「持ち家取得で住宅双六上がり」は幻想となり、住宅費の支出は資産形成のための費用ではなく、消費財への支出となってしまっている。
住宅が(資産のふりをしながら)消費財に留まっていることは、人口構成変化や経済構造の老朽化により日本の縮みこみを加速させ、長寿社会における住まいへのあり方に暗い影を落としている。 では、日本の既存住宅は住むにたえない、二束三文で扱われる代物なのであろうか?見えざる欠陥住宅が少なからず存在してはいるものの、総じてみるならば、過去半世紀以上にわたる先達たちの努力の結果、耐震性・耐久性は格段に向上し、これから豊かな住生活をおくる器として使用に耐えるストックは数多く蓄積されている。
問題の本質は、住まい手からみた使用価値(Value-in-Use)と、長年の慣行のなかで形成されてきた市場における使用価値評価が大きく乖離していることにある。 本重点テーマは、この不毛な乖離を如何に埋めていくことができるのか、を包括的に考察していくことを目的とする。具体的には以下の四つの論点をたてる。

1. 「住まい手からみた使用価値」を見える化するためには、どのような情報をどのように用意すればよいのか? そのためにはどのような「逆・転写」技術*注1が活用できるのか?
2. 「住まい手からみた使用価値」を、誰がどのように評価すればよいのか? 言い換えれば、どのような住まい手視点の、わかりやすく、かつMRVの原則*注2を満たす物差しを用意すれば、使用価値を、市場価値に翻訳できるのか?
3.どのような社会システムを構築すれば、新たな評価システムが社会実装できるのか?
4.構想された社会システムを「絵に描いた餅」にしないためには、どのようなシナリオを描き、アクションをおこしていけばよいのか?そのためには、どのようなプレーヤーの関与が必要となるのか?そのためには、どのような動機付けを用意すればよいのか?

*注1 「逆・転写」技術とは、センサーやスキャナーなどを活用し、既存住宅という人工物の物理的様態、機能様態を映し出す情報を作り出す技術である。図面という情報が人工物に「転写」されて、住宅が新築されるプロセスの逆プロセスとなる。
*注2 Measurable(計測可能), Reportable(報告可能), Verifiable(検証可能)の略語で、物差しが、市場取引や政策規制・誘導など経済・社会で使用されるための要件となる。

〈研究テーマ設定のためのキーワード(参考例)〉

  • 住まい手の使用価値
  • 住まい手からの情報
  • 新たなる社会システム(住宅金融システム、住宅関連の法制度、住宅流通システム、等)
  • 中古住宅のマーケット・資産価値
  • 住宅の維持管理の制度化・家カルテ(住宅履歴情報)
  • ライフステージに合わせた住み替え

住まい手からみた住宅の使用価値研究委員会

委員長
野城 智也 (東京大学生産技術研究所 教授)
委 員
大垣 尚司 (立命館大学大学院 教授/立命館大学金融・法・税務センター長)
齊藤 広子 (横浜市立大学 教授)
園田 眞理子(明治大学 教授)
中林 晶人 (優良ストック住宅推進協議会 事務局長)
森下 有  (東京大学生産技術研究所 助教)

2016年度重点テーマ(平成28年度)

「住環境を再考する」

研究運営委員会 委員
田辺新一(早稲田大学 教授)

2013年に省エネ法の基準が改正され、住宅・建築も一次エネルギー消費量、いわゆる燃費性能で評価されるようになった。先進的な住宅ではゼロ・エネルギーやゼロ・エミッションも可能になってきた。日本の住宅分野におけるエネルギー消費量は増加を続け、いまや日本全体のエネルギー消費量の約15%を占めるまでになっている。断熱や気密性に優れている住宅が建設されているにも係わらず、増加の主な原因として挙げられているのが、核家族を主な原因とする世帯数の増加とともに、居住水準の向上を目指す住まい手の要求、それを可能にしてきた設備機器の発展などである。
こうした動向に加え、スマートコミュニティやスマートシティ等の送配電網に関わる新規技術も提案されるようになった。しかしながら、技術が先行している感があり、建築空間の提案や生活の豊かさに関して考察を加えた研究は必ずしも多くない。住宅の環境は古くからそれを使用する人間との関係で考えられて来たが、近代になって冷暖房技術の発展によって安易に技術に頼り過ぎる傾向もみられるようになった。
また、地球環境レベルでは、温暖化による気温変動や異常気象、PM2.5等の大気中の有害物質の増加など、これまでの想定を超える状況も起きてきている。これら対策面では、国内での世帯数は2019年をピークに減少するため空き家がさらに増加し2028年には住宅ストックの約23.7%に達するとの試算もあり、大多数を占める既存住宅が大きな課題となる。高齢化もさらに進み健康で快適な暮らしをどのように持続するのかが課題になってきている。
個々の住まいから地域、そして地球規模に広がりを見せる住環境への対応には、家電などの個々の設備や技術単体から住まいとの融合、更には地域、そして地球の温暖化対策へと連続した、横断的かつ総合的な対策が求められている。将来的には、自然の持っている水や大気の浄化力や循環力の利用、自然の生態系との融合を図り、限られた地球という空間での永続できる環境を創出することが要求される。これから未来へ引き継いでゆく居住環境について、多面的な議論と研究の深化により、新たな展望を描くことを期待して柔軟な提案が出来るように設定したテーマです。

〈研究テーマ設定のためのキーワード(参考例)〉

  • 住環境の豊かさと幸福感
  • 健康で快適に住むこと
  • 人間の環境行動を誘発する住宅
  • 燃費性能とデザイン
  • ICTと住宅
  • 未来へ引き継いでいく住宅(住環境の持続性)
  • 住環境に配慮した新しい木造住宅

「住環境を再考する」研究委員会

委員長
田辺 新一 (早稲田大学 教授)
委 員
岩船 由美子(東京大学生産技術研究所 特任教授)
甲斐 徹郎 ((株)チームネット 代表取締役)
清家 剛  (東京大学大学院 准教授)
星  旦二 (首都大学東京 名誉教授)
山本 恵久 ((株)日経BP 建設局 プロデューサー)

2015年度重点テーマ(平成27年度)

「受け継がれる住まい」

研究運営委員会 委員
内田青蔵(神奈川大学 教授)

かつて、イエの象徴としての住まいは、家族の場としてのものだけではなく、地域社会に根差した風俗習慣などの生活文化を維持する器であり、安定した社会や身分・生活を維持すべく祖先から受け継ぎ、未来の後継者に受け渡すものでもあった。いわば、住まいは過去からの一族の存在やその繁栄の歴史を示すものでもあり、それ故、人々は住まいに畏敬の念を抱き、その住まいが自らの代で失われることを恐れた。そして、その一族の繁栄や住まいの維持のために時には、養子を求めた。こうした住まいや生活文化を受け継ぐことは、基本的には、職業を受け継ぐことを前提とした身分制社会の中で生まれたシステムであった。しかしながら、わが国は、近代化の中で、とりわけ、明治期以降の性急な欧米化の動き、および、第二次世界大戦後の民主化の動き、という2つの大きな変革を経るなかで、従来の受け継がれてきたものを維持できなくなってきたように思う。
こうした近代化の中で、住まいや住文化の意味やその実態も大きく変化してきた。住まいは、一族のものから当主の存在はもちろんのこと趣味・教養あるいは経済力などを示す個人のものとなり、受け継がれるものとしての意味が希薄になってきたのである。
それでも、現実社会では、親や親族から住まいや敷地などの財産を相続したり、仏壇やお墓を任されることもある。ただ、相続された住まいの多くは、若い世代の生活の場には適さない場合が多いものの、家族との思い出などの心情面から売却も解体もできず、結果的には放置し朽ちるのを待つという処置を採ることもあるという。こうした現実の中で、近年、十分使える空き家の再利用をめざした研究や、また、逆に受け継ぐ意思があっても経済的に維持できないという切実な問題の中で住まいを受け継ぐ方法を探る研究も開始されている。また、文化財としての住まいの継承をどう展開し、社会に位置付けていくのかという問題も重要な課題といえるであろう。
いずれにせよ、住まいや住文化の追求は重要な課題であるが、一方で、これまでつくられ維持されてきた多様な多くの住まいを社会の共有資産として有効活用することも極めて重要な課題といえよう。そのためにも、われわれは受け継がれる住まいについて、すなわち、“もの”としての<家屋、建物>と、“こと”としての<暮らし、作法、習慣、儀礼、美意識>の継承について、その意味や在り方、方法、あるいは、受け継がれるべき住文化とその展開といった様々な問題を真剣に考える時期に来ているのではないかと思う。今回は、こうした受け継がれる住まいを巡る問題を様々な角度から掘り下げ、提起されることを期待して選定されたテーマです。

〈研究テーマ設定のためのキーワード(参考例)〉

  • 1.受け継がれる住まい・受け継がれない住まい
  • 2.受け継がれる住文化・受け継ぎたい住文化
  • 3.住まいを受け継ぐための仕組み

受け継がれる住まい調査研究委員会(所属・肩書は当時のもの)

委員長
内田 青蔵 (神奈川大学 教授)
委 員
小林 秀樹 (千葉大学大学院 教授)
祐成 保志 (東京大学大学院 准教授)
早田 宰  (早稲田大学 教授)
松本 暢子 (大妻女子大学 教授)

2014年度重点テーマ(平成26年度)

「作られたものから作るものへ」−主体形成としての住宅

研究運営委員会 委員
木下勇(千葉大学 教授)

高度消費社会の中で、各地の歴史や文化的な背景のもとで造られてきた住まいは、住宅供給の産業化とともに、現代的なテクノロジーを武器に住宅産業に参入したハウスメーカーやデベロッパー等で巨大化した市場経済の仕組みに呑みこまれようとしている。こうした状況のなかで、住まいはますます商品化の傾向を強め、住まいの「作るもの」*注1という住まい手の主体性や、伝統的住文化、生産の仕組みを支えていた職人の技術や地域文化もが失われるのではないかと危惧される。
技術をはじめ様々な進歩は否定されるものでもなく、また過去に戻れということでもないが、このテーマの背景は、今を生きる我々が、未来を見つめる時に、もういちど住むという根源(それは“「場所」に存在を関係づける、生きる主体的行為”)に立ち返り、主体性を発揮する道を見つめ直すべきではないかとの疑問にある。
ここでは伝統技術や文化の継承だけではなく、人口減少や少子高齢化及びストックの利活用などの社会的課題への対応や、国際化、環境問題、エネルギー問題など、これからの時代において、かかる課題の解決も主体の問題として考慮する必要があるだろう。過去から未来へ持続可能性、住む・作る主体が形成される住宅(住宅地)のあり方を、研究・実践面での多様な角度から提起されることを期待して選定されたテーマです。

研究課題の例はこちらをご覧下さい

*注1「作られたものから作るものへ」は西田幾多郎の『絶対矛盾的自己同一』(1939年初版、岩波書店1989)よりの引用である。

主体性のある住まいづくり実態調査委員会(所属・肩書は当時のもの)

委員長
木下 勇  (千葉大学大学院 教授)
委 員
松村 秀一 (東京大学大学院 教授)
内田 青蔵 (神奈川大学 教授)
村田 真  ((株)日経BP建設局 編集委員)
宮前 眞理子(NPOコレクティブハウジング社 副代表理事)

2013年度重点テーマ(平成25年度)

「一般市街地」のすまいと居住を再評価する

研究運営委員会 委員長
森本信明(近畿大学 名誉教授)

戦後の高度経済成長下での都市化の流れの中で、大都市・地方都市を問わず、郊外部では大きな団地の計画開発が進められるとともに、都心や駅前では大規模な土地利用の転換が図られ高層住宅の建設や再開発が実施されてきました。これら新しく大規模開発されてきた住宅地を「図」であるとすると、「地」にあたる一般市街地では、一般的な法規制の下で小中規模の私的開発が積み重ねられてきました。その結果、面積的には「図」よりはるかに広く、また多くの住民が住むにもかかわらず、建て方や用途の混在化が進み、まちなみ・景観という点からも問題視されてきました。研究面でみても、密集市街地など基盤未整備地区での防災上の危険な地区は除き、大きな注目を集めることもありませんでした。しかしながら、これら一般市街地を持続可能性という視点から見直すと、空間更新の柔軟性、居住世帯の多様性、生活利便施設との近接性など、居住地としての「すみよさ」が再発見され、幾つかの点から見直しがされるようになってきています。これら「地」としての一般市街地におけるすまいと居住は、どのように再評価できるものなのか。新たな視点での研究と活動を期待して選定されたテーマです。

市街地実態調査委員会(所属・肩書は当時のもの)

委員長
高見澤 邦郎 (首都大学東京 名誉教授)
委 員
森本 信明  (近畿大学 教授)
竹内 陸男  (シビックプランニング研究所 所長)

2012年度重点テーマ(平成24年度)

「リアルな地域のあり方を住まいとの関係で描く」

研究運営委員会 委員長
松村秀一(東京大学大学院 教授)

現代の「地域」の多くは、かつて生業が住まいとともにあった時代の「地域」とは異なります。この数十年の間「地域」は、市場経済とは異なる原理で人々の住まいや暮らしを支えるものと期待されながらも、必ずしもその期待に相応しい実態を伴っていなかったのではないでしょうか。しかし、最近になって状況は少しずつ変わり始めているように思われます。ストック型社会への移行、家族形態の変化、少子高齢化の急速な進展といった社会変化の中で、個々の「住まい」を支える社会的あるいは空間的な環境として、「地域」に求められる事柄が、具体的になってきていると感じられます。
こうした認識の上に立って、現代社会の生活者が潜在的に希求している、社会的あるいは空間的な環境としてのリアルな「地域」、そのあり方について「住まい」との関係の中で描き出し、個々の「住まい」ではなし得ない「住生活の向上」に資する研究・活動を提案して頂きたいと願って研究運営委員で決めたものです。
エネルギー・水・資源に関わる環境経営、介護や子育てといった生活支援、空き家の有効活用や、関連する雇用の創出といった生活環境としての地域の持続的な経営、それぞれの風土に応じた効果的な災害対策、住に関わる地域内産業の活性化等々、個々の「住まい」では到底解決できず「地域」で捉えてこそ解決への道が開ける事柄は、多方面に亘ると思われます。本年度の重点テーマ「リアルな地域のあり方を住まいとの関係で描く」は、「住生活の向上」に資すると予測される様々な視点から、住まいと地域の関係を描き出されることを狙いとして選定されたテーマです。