ごあいさつ -年度はじめにあたり-2023.4.1
令和5年度の期首にあたり、ごあいさつ申し上げます。
住総研は2011(平成23)年に公益法人制度改革のもと、一般財団法人として新規スタートを切ってから12年目を迎えております。引き続き、皆さま方のご支援をよろしくお願い申しあげます。2018年度からの創立70周年記念事業(5年間)も順調に実施され、昨年度で終了いたしました。
この3年間、世界的に拡大した新型コロナウィルスへの対応もほぼ終息を迎え、海外調査なども以前のように可能となり、新常態化の中で何をすべきかが問われ始めています。またウクライナ情勢やインフレの加速など昨年以降、世界的にも不安定な事態が発生し、社会・経済は予断を許さない状況が継続しています。その中でも“住まい”の諸課題はクローズアップされ、住まい方の本質そのものが改めて注目されています。
エネルギー問題も世界的に不確実な状況が続く中、日本では2050年カーボンニュートラルへの対応が政府より提示され、省エネや脱炭素住宅に向けての具体的な方策を私共一人ひとりの問題として考えていかなければなりません。しかし、家庭部門のCO2排出量はコロナ禍の中で逆に増加しました。また昨年来、光熱費の高騰は家庭の家計にもすでに大きく影響が出始めています。その状況に対応し、住総研からは住まい読本「なぜ住まいのカーボンニュートラルは進まないのか?―いま私たちがすべき住まい方とは―」を今年度9月に出版の予定です。
住総研は定款にありますように「住まいに関する総合的研究・実践並びに人材育成を推進し、その成果を広く社会に還元し、もって住生活の向上に資すること」をミッションとし、また、毎年定める重点テーマをヴィジョンとしてその活動を行っており、研究調査活動や公開普及活動を推進しております。論文助成は「研究」と「実践」の2つが軸となっておりますが、日本建築学会でも論文数全体が減少している傾向にある中、助成を受ける研究・実践の活動が活性化し、質が向上し、応募数が今後増えていくことを期待しております。
「住まい読本」として昨年度は「あこがれの住まいとカタチ」(2022年12月)と「和室礼賛」(2022年12月)を刊行しました。 本年度は重点テーマのまとめとして前述の「なぜ住まいのカーボンニュートラルは進まないのか?」(2023年9月)、および「和室の絵本」(2024年3月)を発刊する予定です。いずれも分かりやすく、かつ深い内容ですので専門家の方だけでなく、是非一般市民の方もぜひお読み頂ければ幸いでございます。後者は、(仮題)「和室ってなぁに」「和室にくらす」「和室をつくる」という児童・学生向けの絵本(3冊)を発刊する予定で、日本の歴史的な文化・伝統である「和室」の世界を子どもたちに向けて発信したいと考えています。
この12年間は重点テーマを毎年度設定し、委員会による調査・研究をしておりますが、今年度は「住まい造りの将来像」をテーマとしたシンポジウムや出版の準備をしております。また、「郊外住宅地のネイバーフッドマネージメント」研究委員会の継続、および新たに「ネットワーク化する住み方と住まいのかたち」研究委員会の立ち上げを致します。
既に49年間続けている研究・実践助成も今までの助成総計が一千件を超えました。「研究・実践助成」と名称を変え、より多くの実践を伴い、社会に対する貢献が目に見える形となった研究や実践に対しての助成を金額を拡大して推進し始めております。是非ご応募、ご活用ください。また、9年目となります「博士論文賞」も継続していく予定です。
また、「すまいろん」では、2023年2月の特集テーマ「コモンズと住まい」に続き、今後は「食と住まい」(同8月予定)はじめ今年度も2冊発刊する予定です。それぞれ誰にも分かりやすく、実践にも役立ち、楽しめる本になっておりますので多くの方にご購読いただけますと幸いです。
なお、今までの「住総研 研究論文集・実践研究報告集」等がJ-STAGE(科学技術振興機構:JSTが運用)にも掲載されており、検索が便利になっています。また、「すまいろん」の過去に掲載された論考の一部もJ-STAGEに掲載いたしました。どちらも住総研ホームページからの検索と共に是非ご活用ください。実績として昨年度も毎月平均で約1万件がアクセス・閲覧されています。
また、2023年4月に「実践研究報告集」のグラフィック版が刊行されました。住総研のHPにも掲載されていりますが、写真など多く、読むのが楽しく分かりやすくなった「実践研究」の紹介ですので是非ご覧ください。
また、次世代を担う「こどもたち」への「住まい・まち学習 教育実践研修会」も引き続き強化して参ります。
今年度の住総研の活動に一層注目して頂ければと存じます。
2023年4月1日
一般財団法人住総研
専務理事