第82回
(話題)  東京一極集中と今後の課題−より豊かな都市空間をめざして−
(要旨)
東京圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)の常住人口の推移をみると、昭和40年(1965)に既に常住2,102万人(全国9,921万人の21.1%)に達していたものが、平成2年(1990)には全国12,361万人のうち3,180万人(25.7%)と増えており、東京都だけに着目すると常住1,185万人で、実に全国面積の0.6%の地域に全人口の10%が住み、そのうち都区部では逆に889万人から816万人と常住人口が減少(千・中・港の都心3区は46万人から27万人へ)していることがわかる。
一方、国際化・情報化の進展もあって企業の本社機能や金融機能を中心とする経済的管理機能の集中は著しく、61年度(1986)東証1部上場(資本金50億円以上)の大企業の59%は本社を東京に置き、しかもその83%は都心5区(3区+新・渋)に立地している状況である。集中状況を区部の事務所床面積の側面からみると、昭和57年〜平成3年(1982〜91)の10年間に1.6倍とかなり高い伸びを示しており、東京はまさに日本の経済機能の中枢を司っている訳である。言うまでもなくオフィス活動のほか商業・文化さまざまな都市機能も都心部に集中の度をたかめた。
かくして、都心3区の夜間・昼間人口比率は8.3倍で、ニューヨークの3.7、ロンドンの2.7と比べて異常に大きな乖離を示し、種々の政策にも拘わらず昼間就業者は1980〜85の5年間での45万人増が、85〜90年の5年間では73万人増となるなど問題は解消されず、事務所面積も平成4年(1992)には前年より320haの増床とバブル後も増大の傾向を示している。
このように、東京圏とその中の東京都への一極という2重構造であり、さらに都心区という「核」に一点集中しているといえるが、これら都市機能の過度の集中とそれを支える都市構造とのアンバランスが、「首都・東京をどうするか」の大きな課題なのである。結局は「需要と供給」ということであろうが、地価の高騰、都心定住、住宅、職住遠隔化による通勤交通、道路・自動車、ゴミ、環境などさまざまな問題への対応もさることながら、一極集中の是正・改造が基本であり、都の諸政策も職と住の均衡のとれた多心型都市の形成をはかることを意図しているのである。
都民の信を問う意味で都知事選の前年に「長期計画」が打ち出されるのが常であるが、第3次全国総合計画(3全総・52年11月)に拠をおいた「首都改造構想」の公表(58年1月)のときもその例に漏れない。3全総では首都機能の移転(遷都と分都)が掲げられており、多核多圏型の地域構造を形成して東京大都市圏を再構築することも謳われている。しかし国・都の整合がはかられた結果の「首都改造計画(60年5月)」は、改造というよりは東京圏における機能再配分、特に業務管理機能の再配分に力点をおいた計画というべきものであった。
61年6月決定をみた「第4次首都圏基本計画」は、「首都改造計画」の考え方がほぼそのまま織り込まれた。特徴は、1.東京中心部に中枢管理機能・国際機能を分担させていく、2.国際交流機能について積極的に展開する、3.既成市街地における工業生産機能の集中抑制方針の維持、が明示されたことであろう。
62年6月の4全総でも“政府機関の一部を東京圏外への移転を検討”とあったが、都心商業地の地価高騰を契機に、国の79機関の地方移転が閣議決定され、第112国会(62.12.28〜63.5.25)では4全総を推進するための「多極分散型国土形成促進法」が制定された。平成2年(1990)11月には国会の移転が決議され、4年12月には「国会等の移転に関する法律」が制定されている。しかし都民1,200万の民意を汲むプロセスはなく手続き的に若干疑問が残る。
国土政策と併行して、都では昭和54年(1979)、鈴木都知事が多心型都市の形成に向けた「マイタウン東京」構想を打ち出し、長期計画懇談会が設置されて、集積した業務管理機能を都心部から誘導・分散する方策、「心」となる副都心の育成と多摩地域の自立都市圏化などが審議され、地域特性を活かしながら職と住との均衡のとれた多心型構造への転換と東京を住みよい都市に再生していく努力が続けられている。
今後は、1.首都移転、2.地方分権、3.東京圏整備、4.東京における成長管理の問題が課題となろう。職と住、都市開発と基盤整備のバランス、人口を含めた地域間のバランスとコミュニテイ、土地取引など規制緩和と誘導・分散の方策など問題は山積みであり、「21世紀第1四半世紀に多核多圏域型を基調とした東京大都市圏を再構築する」という目標を達成するには険しく複雑な途が続いていると言えよう。真剣な取り組みが強く求められている。
ニューヨークやロンドンと東京の用途地域ゾーニング、江戸の町づくりと西洋風ゾーニング、広域コミニュティ論と都心3区のゴーストタウン化防止、合区や国直轄地の構想、地価高騰と遷都論・1種住専廃止論、首都移転をふまえた5全総の基本骨子と都民の民意の汲上げのプロセスと東京都長期計画、臨海都市計画の都心へのインパクトと住居、過密対策と町並み・景観、新都庁のアーバンデザインと汐留・旧都庁跡地の計画、など。