第177回/第4回「東京の地域学を掘り起こす」シリーズフォーラム
(話題)  発掘資料からみる江戸東京の連続性・非連続性
(要旨)
たばこと塩の博物館の特別展「幕末nippon」と連携・共催した。
フォーラムは、まず、特別展を担当した谷田有史氏から、幕末という時代、そしてその幕末に初代アメリカ駐日総領事として来日したハリスについて言及があった。毎田佳奈子氏は新橋付近の発掘数例から、人が生きているところでは、遺物は連続していると報告をした。水本和美氏(千代田区四番町歴史民俗資料館)は江戸遺跡では地面を知りつくした上での土地利用がされていることを、豊島・新宿・千代田の発掘事例から示した。仲光顕克氏(中央区立郷土天文館)は、土地利用からすると、町人地には大きな変容はみられないが、武家地は細分化・町場化していると発表があった。
波多野純委員は、江戸が東京にかわったとき、政治は断絶するイメージがあるが、生活は連綿と続いている。その境目の部分を埋めることは難しい。普通の人が普通に生きてきたことは連続性につながることをこのフォーラムで得たとコメントをした。
ディスカッションでは、(1)各自治体で埋蔵文化財の調査を続けてきたが、いまそれが崩れようとしている危機的な状況にある。(2)考古学では、近世と近代の時代区分、西洋化や近代化という用語の概念を、各地域の考古学研究を積み重ねからアプローチしたい。(3)江戸東京学に対して、考古学からのアプローチは少ない。このフォーラムでそれを試みたが、まだその第一歩でまとまらないところがある。等の意見があった。近世・近代考古学が20年をかけて認知されてきたと実感するフォーラムであった。