第165回
(話題)  よみがえれ江戸遺跡−都市遺構の保存と活用に向けて−
(要旨)
小澤弘委員(江戸東京博物館教授)が、挨拶とフォーラム趣旨、そして江戸東京フォーラムについて話された。谷川章雄氏(早稲田大学教授)から、「都市における遺構の保存と活用」が発表された。江戸遺構は18%残存していると言われているが、猛烈な開発により、保存事例は少ない。都市考古学は対象範囲が広くて深く、しかもその上で、都市生活が営まれている。だから、遺構の保存を含んだ都市開発理論が必要性であると主張された。
波多野純委員(日本工業大学教授)からは「都市遺構の積極的活用に向けて−アメリカ・カナダ・ノルウェーの事例から−」をテーマに、都市遺構は歴史を視覚的に確認できる重要な文化遺産であるとして、世界各国の先進的な保存・活用事例が紹介された。更に、発掘調査は歴史遺産の破壊行為であること、復元・解体修理においては技術を伝承し、残していくこと、復元したものを活かすこと、なども強調された。
後藤宏樹氏(千代田区立四番町歴史民俗資料館学芸員)の「江戸城関連遺構の保存と活用」は、江戸遺跡の事例を通して、遺跡活用の理念・計画・手法等が述べられた。
佐藤攻氏(東京都埋蔵文化財センター特別調査専門員)のテーマは「汐留遺跡」である。汐留から発掘された遺構・遺物を、関連機関へ展示を目的に贈呈や貸出し等をしている。その実態が報告された。
松尾信裕氏(大阪市文化財協会課長代理)は、「大坂における遺跡の保存と活用−難波宮跡・大坂城跡・住友銅吹所跡など−」と題して発表された。
難波宮跡と大坂城跡を結んだ公園は歴史が体感できるゾーンである。ここを高架高速道路で分断させないため、道路を地上まで下げて、大阪城が見える景観にしたこと等が発表された。
扇浦正義氏(長崎県都市再整備推進課学芸員)のテーマは、「長崎JALシティホテル等」である。中国貿易の拠点であった「唐人屋敷」や「新地唐人荷蔵」跡にホテルが建設されることになり、発掘が行なわれた。護岸石垣が検出され、一部がホテルのロビーに移設展示された経緯等が報告された。
最後に、七名の報告者によるディスカッションが、小林克氏(江戸東京博物館学芸員)の司会で進められた。都市の施設や建物の中に出土した遺構・遺物をいかに取り込んでいくか、その方法、考え方などについて、議論が学際的に展開した。そして、これからの文化都市東京づくりに活かしていこうと締めくくられた。