第155回
(話題)  関一(せきはじめ)と近代大阪の再創造
(要旨)
講師は大阪の都市論、特に関一を中心にした都市計画と都市文化論を“THE CITY AS SUBJECT: Seki Hajime and the Reinvention of Modern Osaka”として出版した。この本を中心に話がなされた。
経済学者であった関一は、経済学の世界的な潮流をとらえるとともに、ベルリン留学などの経験から、彼の都市論は世界的な視点で形成されていった。その後、大阪市政に携わった。そのとき、彼は労働者階級の住宅環境を焦点とした施策を実行するが、結果はうまくいかなかった。その主な原因2つある。中央官庁の中央集権的な体質と住宅会社の営利本位の体質からであった。
コメンテータの石田頼房氏は、当時の市民社会の未成熟性を指摘した。研究の対象が都市計画や政策そのものではなく、それに携わった人物を研究するという方法を評価した。内田雄造氏は、東京と大阪はその都市的規模は異なるが、都市下層の構造がよく似ているとして、関一が具体的にどのような行政を実施したかが述べられた。
関一は理論と実践のつなぎ方の大切さを示唆した。しかし、実現はできなかった。そのことを創造力が欠落している現在、学ばなければならないとまとめられた。