第147回
(話題)  千住の町おこしと地域博物館の取り組み
(企画趣旨とフォーラム要旨)
このフォーラムは波多野純委員の企画によるもので、趣旨は次の通りである。
足立区立郷土博物館には、江戸時代の千住宿の一部を復原した模型が展示されている。昨年夏の発掘調査では、問屋場・貫目改所の跡の一部が見つかった。
千住は、江戸時代、品川・板橋・内藤新宿とともに江戸の四宿と呼ばれた。文化12年(1815)の千住の酒合戦は、千住の諸家飛脚宿中屋六右衛門の離れで催され、判者として大田南畝・亀田鵬齋・谷文晁など当代一流の文化人が江戸から招かれている。日本橋から2里8町(9km)、近世人の足なら大した距離ではない。同時に江戸の支配からは距離を置いている。そこに庶民的な文化の薫りが育まれた。
千住の旧道沿いには、江戸時代の商家や「やっちゃば(青物市場)」の石畳が残り、庶民的な食べ物も手に入る。地域雑誌やさまざまなイベントを通しての町おこしも盛んである。地域の博物館とともに、歴史のストックを活かした町づくりを考える。
このような企画趣旨のもとに、まず、所氏から「地域博物館の取り組み」と題して、地方史運動の一環として地域博物館の活動と、将来の地域展望を開くために、「足立学」の構築が提言された。つぎに、荒居氏は、「ミニミュージアムの実現に向けて」と題して、ビデオによる現在の千住の町が紹介された後、旧街道沿いに残存する江戸時代の商家や「やっちゃば(青物市場)」を、生きた素材として活用するミニミュージアム構想が述べられた。そして、波多野委員からは、「江戸時代の千住宿」と題して、足立区立郷土博物館の千住宿の復原模型を見ながら、千住宿の様子や模型づくりに携わったときの話があった。
フォーラム終了後、千住の町歩きをした。蔵、路地、石畳、神社など、江戸時代の宿場町として栄えた歴史の息づかいを、旧日光街道を踏みしめながら感じ取った。