第127回
(話題)  関東大震災と朝鮮人虐殺事件
(要旨)
関東大震災が起きたとき、政府は戒厳令を発布し、全国の軍隊に上京を命じて厳重な警戒体制をとる。政府はなぜこのような体制をとったのだろうか。この問題を、戒厳令発布を推進した中心人物である内務大臣水野錬太郎と警視総監赤池濃の経歴とその考え方が考察された。
そして、関東大震災による社会不安のなかで、朝鮮人虐殺事件が起こり、社会主義者が襲われる問題が起こる。虐殺を行ったのは、軍隊、自警団、一般民衆と地域によってさまざまである。埼玉では自警団と一般民衆によって虐殺が行なわれた。自警団は在郷軍人会、青年団、消防組で組織された。普段はおとなしい普通の民衆が虐殺に走ったのである。多くの人たちが朝鮮人虐殺に走るなかで、朝鮮人を殺すべきでないと頑張る人たちもいた。かってはこれを美談ととらえられていた。多くの人たちが日本の侵略政策のなかに巻き込まれるなかで、虐殺を批判することの出来た人たちの貴重な存在もあったとされた。
先年の阪神大震災の際には、神戸に大きな朝鮮人居住区があっても朝鮮人を襲うような事件は起こっていない。関東大震災の際には戒厳令が発布され、朝鮮人虐殺事件が起こっている。問題は日本社会のありようと深く関わっていると結ばれた。