第111回
(話題)  関東大震災後の東京の住宅地形成について
(要旨)
関東大震災が東京の郊外住宅地発展の契機になったことはよく知られている。この動きを従来とは違うマクロな視点でとらえてみる。具体的には、1.郊外に転居した人々の職業や転居の特徴、2.勤務先と居住地との関係、を東京全般について考察する。
史料には紳士録を用いた。(1)では『人事興信録』の1921年(大正10年)と31年(昭和6年)発行のものに共通して掲載された人物の住所や職業などを分析した。その結果、震災をはさんだ10年間における郊外への転居の様子が明らかになった。(2)では『丸の内紳士録』を用いた。これは当時の日本を代表するビジネスセンター・丸の内に勤める人々の居住地や職格などを掲載したもので、その1922年(大正11年)版、26年(昭和1年)版、31年(昭和6年)版を分析した。
その結果、彼らの居住地や職格による居住地分布の違いなどが明らかになった。