第106回
(話題)  考古学からみた江戸と他都市との比較
(要旨)
1980年代後半以降、東京の地下に眠る江戸遺跡の発掘調査が盛んに行われてきたが、外国でも、最近になって同時代の都市の発掘調査が実施され、その成果も明らかにされつつある。江戸東京博物館は江戸・長崎・アムステルダム・ロンドン・ニューヨークの発掘調査の成果と出土遺物の一端を紹介する企画展を、「掘り出された都市」と題して、今秋(1996年10月)に開催する。
アムステルダムの遺跡からは、有田焼の器や中国製の陶磁器などを含めて、東アジアの製品が多く発掘されている。埋立構法、建物の基礎構法、出土したタイル絵に描かれているこま回しや凧揚げは、江戸のものと類似している。徳川2代将軍秀忠の墓から出土した有田焼の陶磁器と同じものが発掘されている。
ロンドンでは、前述の2都市と同様に、クレーパイプ、オランダ製や日本製の陶磁器が発掘されている。ニューヨークの遺跡からはアムステルダムで発掘されたもの遺物とかなりの共通性がある。
それぞれの国で発掘された遺物の考古学的な事例調査を通して、17〜18世紀を中心とした各都市の生活、都市の基盤的構造、物質文化的交流の可能性について考察を続けている。また、都市遺跡の保存問題に国民の関心を高めて、現在の都市施設との共存を推進したい。