第104回
(話題)  住文化の体験の場としての博物館
(要旨)
博物館の役割のひとつとして、生活体験と想像力の貧困を補うことがあげられる。
欧米では資料重視型より利用者重視型が、特に子どもの視点から、「触って確かめよう」の展示が注目を浴びている。ハンズ・オン、つまり五感を刺激する体験と参加した者全員がわかちあう共感が大事とされる。子どもには、体験・学習つまり自然などの対象に体全体・五感全部を使って働きかけ把握していく学習が基本にあり、発育に伴い概念を操作できるようになってはじめて知識が入ってくる。そこから疑問・比較・相関、そして複合判断ができるようになり、総合的に物事が見えるような想像力が働くようになるのである。幼児のゴッコ遊びは五感を使った体験・学習であり、日本の博物館では視覚とせいぜい聴覚に限られ、我々が積み重ねてきた生活・文化・暮らしぶりを映し出す学習の場となっていない。
博物館は、ものそれ自体の収集・展示も大事だが、ものと生活・空間・人・エネルギー、あるいはその土地の気候風土などとの関わりを知ることができる場でありたい。それは、豊かな人間を育成する場につながる。