第101回すまいろんシンポジウム 2024年3月18日(月)15:00~18:00
廃棄物からつくる 終了しました。
都市・住宅政策においてストック活用型社会への移行の必要性が指摘されて久しい。だが,日本の住宅市場では未だに新築志向が根強くあり,住宅ストックが毎年一定の割合で新規供給され続けており,他方で活用も解体もされず放置される住宅が大量にある。そうして生じた空き家は年々増え続けており,全国の空き家に眠る建材や家財を含め時間経過とともに朽ちるに任せている。そのような状況の一方で,都市圏では住宅価格の高騰により若年世代の住宅市場からの締め出しとも言える状況が深刻である。このように,戦後の高度経済成長?バブル経済期に確立されたフロー型社会をひきずり,ストックの新築と活用・解体がアンバランスな関係にある日本の社会は,地球規模の資源問題・環境危機が指摘され「人新世」(ひとしんせい)の時代と呼ばれる現代の世界において特異な状況にあると言わざるを得ない。
本シンポジウムでは,こういった問題について考える端緒として,「廃棄」と住まいをテーマとする。具体的には,廃棄された住まいやモノを拾い集めてそこに自ら手を加える専門家,そして,そこに集まってくる人びとが他者や空間と取り結ぶ関係性に注目したい。彼らは従来の新築志向のフローとは異なる形での住まい,モノ,ヒトのフローや循環を作りだし,都市のなかで廃棄され,見捨てられたかのようなストック,場所に新たな意味を見出しはじめている。リノベーションやアップサイクルという言葉でも表現されるように,それらは特定の場所での運動にとどまらず,廃棄物によって新たな社会的潮流をつくる営みと言えないだろうか。
廃棄されたストックや場所で生まれる新たな住み方やコミュニティとはどのようなものか,廃棄されたストックに新たなフローが芽吹く時,そこに関わる「専門家」や人びとはどのようにふるまっているのか。現場の実践者や住み手の目線で廃棄から新たなフローがつくられるプロセスを描き,また,そこに人と空間,モノが一体となって社会が形成されると捉える人類学的視点を交差させて,廃棄物と住まいの可能性について議論したい。人口減少で家や土地が余る時代になり,棄てられたモノや場所とともに生きていかざるを得ないとすれば,そこにどのような風景やコミュニティの新たな像を私たちは描くことが可能だろうか。
企画:前田 昌弘(京都大学大学院 准教授/すまいろん編集委員会委員)
第101回すまいろんシンポジウム 廃棄物からつくる
15:00~18:00
「廃棄物と共に住まう」
「棄てられたモノが動きだすとき:インフラの人類学」
西村 周治(西村組,合同会社廃屋)
「棄てられた住まいに手を入れる人びとがつくるコミュニティ」
一杉 伊織(株式会社TOOLBOX,デッドストック工務店)
「産業廃棄物やありものでつくる空間の価値」
※講演者、講演タイトル等は変更になる場合がございます。
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このシンポジウムの内容は、2024年8月発行予定の『すまいろん』(No.115)に掲載予定です。