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清水建設所蔵「彩色図集」委員会

清水建設が所蔵する『彩色設計図』は、明治末から大正10年までの清水組の代表的な設計施工実績を彩色図面で表した、歴史的にも貴重な資料である。
2004年秋から『清水建設住宅資料研究会』(委員長:内田青蔵/神奈川大学教授)が、所蔵する『彩色設計図』のうち、「住宅の巻」に関して調査研究を実施し、その成果を『明治大正の邸宅』(柏書房2009年5月)として出版し、東京(学会ギャラリー)と大阪(大阪くらしの今昔館)において展覧会も開催した。
『彩色設計図』は、住宅他『銀行、會社・商店・事務所、學校・圖書館・病院、公共會館・娯樂場・旅館・料理店、工場・倉庫、室内並家電燈の巻』があり、総数353件(634枚)の設計施工案件が掲載されており、関連する設計図書の約7割のマイクロフィルム(図面枚数約4,900枚)や、当時の竣工写真も保管されている。
今回、住宅以外の『彩色設計図』について調査研究行い、登録文化財の指定を受けるとともに、その成果をまとめた図書の出版を行う。

研究内容

I 清水建設所蔵の『彩色設計図』の調査・研究
(1)調査研究報告書の作成:収集・整理し、それらの建築の近代建築における位置付けの概要を示す
(2)有形登録文化財(美術工芸品―歴史資料の部―)指定の申請等をおこなう
II 上記研究成果に関する図書の出版
(1)上記彩色図集より得られた成果を基に出版をおこなう

委員会・研究会の構成(敬称略)

委員会メンバー

委員長
鈴木 博之 (青山学院大学教授)
委員
内田 青蔵 (神奈川大学教授)
谷  直樹 (大阪市立大学教授)
波多野 純 (日本工業大学教授)
松波 秀子 (清水建設技術研究所研究員)
安野  彰 (文化女子大学専任講師)
事務局
上林一英・岡崎愛子 (住総研)

研究会メンバー

研究会委員長
内田 青蔵 (神奈川大学教授)
研究会委員
勝木 祐仁 (日本工業大学助教)
川上 悠介 (港区立港郷土資料館)
中嶋 節子 (京都大学准教授)
安野  彰 (文化女子大学専任講師)
横手 義洋 (東京大学建築史研究室助教)
鈴川 喜勇 (清水建設設計・プロポーザル統括主査)
畑田 尚子 (清水建設法務部文書課)
松波 秀子 (清水建設技術研究)
宮谷 慶一 (清水建設技術研究所)
須崎 文代 (フリーランス、内田研究室所属)協力委員
小黒利昭 (住総研特別研究員)

参考:「彩色設計図」について

「彩色図集」と称されるものは8巻10帙あり、各巻の表題は以下のとおりである。

件数 類別番号 総括番号
A 『設計圖集 住宅ノ巻 自1907年至1923年』 45件 A1〜82 15〜634
B1 『設計圖集 銀行ノ巻 自1905年至1914年』 52件 B1〜78 11〜301
B2 『設計圖集 銀行ノ巻 自1914年至1923年』 53件 B79〜163 303〜625
C1 『設計圖集 會社、商店、事務所ノ巻 自1905年至1917年』 53件 C1〜78 1〜445
C2 『設計圖集 會社、商店、事務所ノ巻 自1917年至1922年』 29件 C79〜155 457〜613
D 『設計圖集 學校、圖書館、病院ノ巻 自1905年至1923年』 24件 D1〜43 4〜631
E 『設計圖集 公共會館、娯樂場、旅館、料理店ノ巻 自1907年至1921年』 20件 E1〜44 29〜545
F 『設計圖集 工場、倉庫ノ巻 自1907年至1922年』 53件 F1〜82 20〜618
G 『設計圖集 室内並家具電燈ノ巻 自1909年至1913年』 23件 G1〜57 64〜349
H 『番町清水邸』(Gの続き) 1件 H1〜8 224〜231

各作品を用途別に分類し、それぞれ24〜53件を収録して綴じている。帙の装幀は、表紙は厚紙、背は革装とし、背表紙には、「合資會社清水組設計部」の金字が刻されており、大正12年の震災以降、昭和12年に株式会社に改る以前の時期に、図面集として装幀されたものと思われる。各巻の巻頭には図面と同様のワットマン紙に印字された組す「目録」(目次)を綴じている。目録には、[類別番號](例:A1、種類別の各巻における竣工年順の番号)、[總括番號](例:15、全巻全作品の竣工年順の通し番号)が付され、作品名として[工事名](例:日比谷氏邸)、図面名称として[摘要](例:各階平面(日本家共)、洋館4方建圖)が記され、各巻とも「類別番號」順に並べている。図面の大半は横使いで、各図面の枠外の左上に目録に対応する[總括番號](例:No.15)、左下に[類別番號](例:A.1)の番号印が付され、縦使いの場合は、綴じ代と反対側の左側を下とし、下端の左(横位置では左上)に[總括番號]、下端の右(横位置では左下)に[類別番號]の番号印が付されている。枠外の天地の高さは一定せず、図面によっては裁ち落とされて番号印の上半分あるいは下半分が欠落しているのもあり、類別番号、総括番号とも製本する前に番号印が付されたことは明白である。番号印には2種類の字体があり、赤褐色と黒色のものがあり、それぞれに濃淡が見られ、整理に際して一斉に押印したのではないが、個々の作品の図面の[類別番號]と[總括番號]の字体と色調は同一であり、おそらく図面を描き上げた段階で番号を付したものと思われる。いずれにせよ、まず竣工年順に整理がなされて分類整理して各図に付されたと思われる。各巻の載録状況は上記のとおりである。

各図面は、B4版よりやや小振り(323〜328mm×230〜233mm)のワットマン紙に描かれているが、後述のように最初はB4版(365mm×240mm)程度の大きめのワットマン紙に描かれ、製本の際に裁断されたものと思われる。各図面の基本レイアウトは、単線(稀に2重線)の図面枠(300〜303mm×215〜218mm)を引き、図面上中央或いは左寄に建物名(目録では工事名)が手書され下線(大半が単線だが稀に2重線)を引く。建物名の表記は基本的には「日比谷邸」、「山田邸」のように姓に邸を付すが、「柳澤伯爵邸」、「鎌倉堀越別邸」、「染井松平邸新築設計圖」、「大橋新太郎氏本邸平面図」など、若干異なる表記もある。また、図面に書かれた建物名と目録の工事名の表記は必ずしも1致しない。建物名の下に縮尺を記し下線を引くが、「縮尺二百分ノ一」、「縮尺二百分之一」など、それぞれ表記が異なる。スケールバーは、基本的には図面下部中央に入れるが、下部右、上部右に入れているものもあり、バーの表現もそれぞれ微妙に異なる。各平面、立面、断面図の下には、図面名称を記して下線を引くが、1階平面図、階下平面図、2階平面図、階上平面図、正面、南面、背面、北面、側面、右側面、東面など、表記は一定していない。各図とも1定のレイアウトの基本にしたがい、例えば、平面図を下に描き、その平面の上に通り芯を合わせて立面図を配して建物の姿をイメージし易くするなど、枠内に各図を工夫して配している。比較的小規模な作品は1枚に納められ、大規模な作品については複数枚にわたり各図面には、第1號、第2號と枝番が記されている。
各作品とも、基本的には各階平面、立面(建図)、断面が描かれているが、1階平面図を敷地全体に描き込んだ配置図を兼ねる場合もある。立面図は基本的には4面とするが、正面図のみのもののもあり、断面図は描かれていないものもある。縮尺は全て2百分之1に統1され、スケールバーを表示している。
各図面は、烏口及び面相筆で墨入れし、水彩による彩色が施されている。彩色図面のほかに、当時の設計図・竣工図といった「関連図面」や創建時の竣工写真の資料がある作品について、これらを照合すると、2百分ノ1の図面なので厳密な比較はできないが、平面、立面、断面とも、わずかに差異が見られるもの、概ね合致しているものが大半である。しかし、色彩については、現存する作品が少なく、また当時のカラー写真がないので確認することはできない。少なくとも晩香廬については、赤い屋根瓦が描かれ、「緩い勾配の屋根に赤い瓦を葺いた」(中村鎮「晩香廬の記」、『美術寫眞畫報』大正9年3月号所収)という当時の見聞記の記述に合致している。晩香廬の現状の瓦は戦後に葺き替えられたもので、当初の瓦は現存しないが、彩色図面により当初の屋根瓦の色調を特定することができた。当初の設計図や写真では確認することのできない色彩情報を伝える資料として、彩色図面の持つ資料価値は特筆すべきものである。(『明治・大正の邸宅』より抜粋)


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