2017実践研究報告集統合版
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地域の景観固有性を活かした実践研究報告No.1619 実践No.1619地域の景観固有性を活かした避難誘導照明の実践東京都市⼤学/⼩林茂雄本プロジェクトは、甚⼤な津波被害を受けた気仙沼において、沿岸部の独特の⾵景を夜間にも感じ取るようにすることと、夜間に災害が発⽣した際に速やかに避難できるような光環境を整えることを同時に提案するものである。湾に張り出した五⼗鈴神社などの沿岸地域を対象に合計78⽇間に渡って仮設的な照明設備を取り付けた。/⾓舘政英地域を対象に合計78⽇間に渡って仮設的な照明設備を取り付けた。実践の結果、気仙沼らしい景観の形成と⾼台への避難路の認識は両⽴できることが⽰された。1.背景と⽬的気仙沼市は宮城県の北東端に位置し、東は太平洋に⾯する。三陸の他地域と同様にリアス式海岸が続いているが、深く⼊り組んだ海岸線が波の穏やかな気仙沼湾を形成し湾内には⼤島が浮かぶ街の中気仙沼湾を形成し、湾内には⼤島が浮かぶ。街の中⼼は気仙沼湾の最奥部に位置し、古くから交易港・漁港として栄えてきた(写真1-1)。2011 年3 ⽉11 ⽇、東⽇本⼤震災により気仙沼は津波により甚⼤な被害を受けた。市内の建物被害状況は全壊棟数が8,383 棟、半壊家屋数が1,861 棟であり、飲⾷店の7 割が津波により店舗を失った。2017年現在は⼟地区画整理事業が進められており、写真1-1気仙沼⿃瞰写真写真1-2気仙沼南部で建設中の堤防(2017.3)街から海が直接確認できず、それまで⾒慣れていた⾵景が失われつつある。盛⼟・嵩上げ⼯事が実施されている。かつての港町の活気を取り戻そうと、港と⼀体となった街づくりが計画されている。⼀⽅で、市の南部には⼤規模な堤防が建設中であり(写真1-2)、震災前から続いていた街の景観をいかに継承していくかが課題となっている。本実践活動は復興に向けて⼤きく変わろうとす東京都市⼤学⼩林茂雄ぼんぼり環境計画株式会社⾓舘政英本実践活動は、復興に向けて⼤きく変わろうとする気仙沼において、沿岸部の独特の⾵景を夜間にも感じ取るようにすることと、夜間に災害が発⽣した際に速やかに避難できるような光環境を整えることを同時に提案するものである(図1-1)。安全性の確保が求められる沿岸地域では、通常JISの照明基準や道路照明基準に沿った画⼀的な屋外照明が計画されることが多く、地域の⾵⼟や景観住総研 実践研究報告集 No.44, 2017年版 普及版 32

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