2017実践研究報告集統合版
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④技能の再活⽤・醸成の場[e,B,C]空き店舗や空き地を活⽤して、地域住⺠の持つ職能の抽き出しや新たに醸成する可能性。実験Bのように、農業経験を活かした農的活動交流や、事例e,Cのように、新たな仕事や創作活動を⽣み出すことが期待できる。⑤来街者と地域との接点[d,B,D]空きストックを活⽤して朝市や収穫祭ワーク「飲⾷業」であり、再開場所も同業種の空きストックであった。「準備宿泊期(2015.8〜2016.7)」では、商店などの開設により⽣活環境が徐々に整備され、⽇中の滞在⼈⼝が増えてきたことから、⽇中に集まる場所への需要が⽣まれ、事例aのような「地域住⺠の集いの場」としての活⽤につながったと整理できる。さらに、事例bでの活⽤後の反響を受け「さきがけ店舗」としての活⽤から空きストックを活⽤して、朝市や収穫祭、ワークショップなど、来街者も参加可能なイベントを開催することにより、来街者と地域との接点とする可能性。実験Dのような復興ツーリズムとしての役割や、実験Bのように短期で参加できる⽀援活動としての役割が期待できる。⑥⼀時居住・宿泊[D]空き家を活⽤して、以前の仲間内の集まりなどで⼀時⽤後の反響を受け、「さきがけ店舗」としての活⽤から、従前の経営者による常設店舗の再開へと展開した。また、外部からの⽀援者の参⼊が多く⾒られ、事例eや実験Aのような外部⽀援者による空きストックの活⽤が進展した。ただし、建築解体も進み、空きストックの⼤量発⽣が認知され、活⽤に向けた「空き地空き家バンク」の整備がなされたものの、登録は売買が主で、賃借に適した空きストック情報へのアクセスは依然として知帰還する元住⺠や、外部からの⽀援者、視察希望者などを対象とした⼀時居住・宿泊の場とする可能性。やむを得ず他地域へと転居した元住⺠と住⺠との交流の維持や、外部からの⽀援者の活動の基盤となることが期待できる。5.2空きストックの活⽤可能性の展開過程まちなかの復興状況と空きストック活⽤の関係を把握縁に依存していた。そのため、空きストックの活⽤は「避難指⽰解除準備期」から活動を⾏っており、知縁を獲得していた⽀援者が地権者に対して個別に打診する形であった。これは震災前と同様の不動産流通の姿でもある。「居住再開期(2016.7〜)」からは、住⺠の帰還意向が進展し、改めて明確となった空きストックの⼤量発⽣が主要な問題の1つとして住⺠懇談会や「部会」の場まちなかの復興状況と空きストック活⽤の関係を把握するため、3段階に分けて展開過程を整理した(図7)。「避難指⽰解除準備期(〜2015.8)」では、公費による建築解体が進んでおらず、住⺠の帰還意向も確定していないため、空きストックの特定が困難であった。そのため、活⽤事例は限定的で、再開した主な業種は「震災特需がある⾦融業や建設業、もしくは元々の常連客の⽀えがあり材料を多くは必要としない理容店、時計店」⽂⽣が主要な問題の1つとして住⺠懇談会や「部会」の場で指摘され、その活⽤が取り組むべき課題として、特に現場にいる帰還者や外部⽀援者によって共有された。空きストックへの課題視を背景として、事例c(空き地→「さきがけ店舗」)や事例C(空き家→「職能の再活⽤・醸成の場」)、事例D(空き家→「⼀時利⽤」)のように、従前の利⽤⽅法とは異なる新たな活⽤が外部からの⽀援者によって模索され始めた。また,仮設住宅か6)といった既存の地域産業であった。例外的に活⽤の⾒られた事例bも、復興局⾯において極めて需要の⾼いらの転居が進み、事例dや実験Aなど仮設住宅からの機能移転による空きストックの活⽤があった。<研究委員>尾⾕恒治早稲⽥リーガルコモンズ法律事務所・弁護⼠藤森照信東京⼤学名誉教授・⼯学博⼠野沢正光野沢正光建築攻防代表・⼀級建築⼠⼀般社団法⼈住宅遺産トラスト代表理事⽊下壽子有限会社コミュニティー・ハウジング取締役⼀般社団法⼈住宅遺産トラスト代表理事吉⾒千晶吉⾒千晶⼀般社団法⼈住宅遺産トラスト理事⽂学修⼠・学芸員*当実践研究報告普及版は『住総研研究論⽂集・実践研究報告集』No.44の抜粋版です。図7空きストック活用の展開過程住総研 実践研究報告集 No.44, 2017年版 普及版 29

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