2017実践研究報告集統合版
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⾼駅の駅前通り約600mを対象に、「避難指⽰解除直後(2016.7)」、「避難指⽰解除約1年後(2017.9)」の⼆時点において、通り沿いの建築実態の調査とゼンリン住宅地図を⽤いて、震災前と⽐較した。対象地区内では、震災前に存在していた建築物244件注2)のうち、避難指⽰解除直後(2016.7)までに62件(254%)、約1年後(20179)までに115件(3)不動産ストックの流通実態調査①⺠間不動産事業者インタビュー避難指⽰解除直前の2016年6⽉、原町から楢葉町まで相双地域の不動産の売買や賃貸2,000世帯を広く⼿がけ、⾃社物件も多く所有している⺠間不動産事業者に、不動産の動向についてインタビューを⾏った。(25.4%)、約1年後(2017.9)までに115件(47.1%)が⼀部または全部解体された(図1)。敷地境界が不明のため、空き地の正確な件数は定かではないが、解体後の約8割が空き地として残置され、砂利による被覆が最も多く⾒られた。新築の形態としては、駅前通りに接する店舗部分を除却し、住居のみを再建する例が多く⾒られた。これらの震災前は、⼩⾼区全体で100⼾ほどを扱っていたが、⼩⾼への移住は少なく、たとえば⼩⾼に⽴地する⾼校の先⽣も原町などから通っていたし、⼀⽅、不動産所有者もお⾦に困っている⽅があまりいないので⼟地を⼿放すことも極めて限られていた。不動産売却への周辺住⺠の⽬が気になることもあったろう。⼩⾼駅前(まちなか)と集落部での案件数はほぼ同じ程度だった。住居では、店舗部分の除却によって⽣まれた前⾯空地を駐⾞場として転⽤する例が典型的であった。(2)避難指⽰解除後の居住実態調査避難指⽰解除後に居住または⼀時利⽤を再開した住⺠に対して、現在の居住形態、その形態を選択した経緯、及びその課題に関してインタビュー調査を⾏った。震災後は、原町を中⼼に物件が動いた。新しい建物の売却希望もあり、⼩⾼や浪江の⽅が求めることが多かった。孫が原町までなら来てくれるという話もあった。2015年ゴールデンウィーク頃には動向は落ち着いていた。2016年6⽉現在は原町には空きが全くない。賃貸アパートの建設が続いているが、借り上げ住宅が終了したら空くと思う。元農地に30年ローンで建設したオーナーの借⾦は返せないのではないかと⼼配している。まちなかに居住再開された⽅の中には、震災後に東京の息⼦宅へ避難したものの、怪我をして⾜を悪くされ、帰還後は⼀⼈暮らしで外出も⼀苦労である上に、同世代の仲間が皆避難したり亡くなったりしてしまったため、⼈と話す機会がないという⽅(3区⾏政区80代⼥性)、帰ってきたが隣組が帰還しないので隣接⾏政区に混ぜてほしいと依頼される⽅(4区⾏政区男性)等がいる。⽐震災直後は150坪以上で静かなところという希望が多かったが、最近は80坪程度でも買い物や病院に便利なところへと要望が変わったと感じる。家族構成が、三世帯同居から核家族へと変わったことも影響しているのではないか。⼩⾼を希望する中で、住みたいという⼈は1割程度、それ以外は作業員宿舎を確保したい事業者の要望である。⾦銭⾯に関しては、⼩⾼の⼟地の値段は上がらないだろう。較的若い世代では、家族を避難先に残して、⾃⾝は仕事の関係等から⼩⾼区に帰還したが、休⽇は家族のもとへ帰る⽣活を送る⽅(3区⾏政区40代男性)がみられ、特に⼦育て世代では、避難⽣活の⻑期化や放射線への不安等に起因して、単⾝の⼆地域居住という⽣活形態が存在することが窺える。集落部では平⽇は相⾺市に新築した住宅で息⼦世帯⾦銭⾯に関しては、⼩⾼の⼟地の値段は上がらないだろう。また、公費解体が多いが、解除後に減免措置がなくなっていくことを考えていない⽅が多いように感じる。②南相⾺市建設部建築住宅課インタビュー同上主幹兼課⻑補佐兼住宅⽀援係⻑H⽒、主査E⽒(他市からの派遣)に解除前にインタビューを⾏った。集落部では、平⽇は相⾺市に新築した住宅で息⼦世帯と居住し、休⽇に震災当時の⾃宅に寝泊まりしている⽅(上浦⾏政区60代⼥性)や、津波により⾃宅が被災したが、同じ⾏政区内で、持ち主が移住し空き家となった住宅に⼊居した⽅(浦尻⾏政区60代以上男性)などもいる。60代夫婦帰還世帯で、運転できる夫が⽩内障⼿術をすることになり、まちなかでタクシー業務が戻っていない中で、⽇常の買物にも困難となった。議会の要望があって空き地・空き家バンクを始めた。しかし市には不動産業の資格がないので、仲介のみだが、効果はあると考えている。不動産業者にとっては売れるのか予測が⽴てにくいので⼿が出しづらく動かなくなっている不動産市場となっていた。⼀⽅で、不動産所有者の⽅は、これまでほとんど不動産流通がなかったので、⺠間には託し⾟くても市には声かけしやすいという⾯があり依頼があって購⼊や借りる希望者がこのように、世帯内での多世代同居や集落単位での助け合っていた⽣活が激変した。⼆地点居住や空きストックの活⽤といった居住実態も⼀定数存在しているが、まちなかには集落の⽣活を⽀える機能もあったが失われている。単⾝⾼齢者世帯も少なくない。グループ居住を可能にするシェアハウスを建設しようという住⺠の⽅の声が上がり2015年12⽉には⼀万⼈規模の署名が市議会やすいという⾯があり、依頼があって、購⼊や借りる希望者が出てきたところで不動産事業者に引き継ぐ。バンクでの賃貸物件の取り扱いは、⼩⾼ではまだない。売買については、解除前は補償があるのでそれほど売却希望は多くないが、固定資産税の減免措置がなくなることを考えて希望している⽅もいる。⽴地に関連して、市としては、居住が禁⽌されている災害危険区域の物件は受け⼊れていない。が上がり、2015年12⽉には万⼈規模の署名が市議会に提出されたこともあったが、実現していない。住総研 実践研究報告集 No.44, 2017年版 普及版 25

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