2017実践研究報告集統合版
21/44

・居室に、換気のための⼀定⾯積の開⼝部がない。・⽯綿(アスベスト)を使⽤している。・居室内において衛⽣上の⽀障を⽣ずるおそれのある物質の区分に応じて、建築材料および換気設備について政令で定める技術的基準に適合していない。・住宅の居室等の地階において、壁および床の防湿の措置その他の事項において衛⽣上必要な政令で定める技術的基準に適合していない。・下⽔道法に規定する処理区域内だが、⽔洗便所以外の便所である。る。それゆえ、近代建築の三⼤巨匠の⼀⼈であるフランク・ロイド・ライトの「ライト式」と呼ばれる建築様式を⽇本で伝える最⾼峰の別荘建築であり、葉⼭町にとっての⾄宝といっても過⾔ではないであろう。冒頭で述べたように、この実践研究の最中に、幸いなことに加地邸は継承された。従前は住宅⽤途であったこの建物を継承したオーナーは個⼈としての利⽤ではな下⽔道法に規定する処理区域内だが、⽔洗便所以外の便所である。ただし、法第86条の7に規定される既存不適格建築物に対する遡及適⽤の緩和もあり②集団規定(1)道路・道路法による道路等(2項道路も含む)に2m以上接していない。(敷地の周囲に広い空き地がある場合等で、特定⾏政庁が交通上、安全上、防⽕の建物を継承したオーナーは、個⼈としての利⽤ではなく、不特定多数の⽅々に利⽤していただく施設として活⽤する意向である。地下1階地上2階建であるこの建物の地下1階部分を、地域に開放する⽤途で活⽤をしたいという意向が運営企業から出ており、地下1階を活⽤すると、建築基準法上3階建てとなり、「耐⽕構造」とする必要が⽣じた。既存では⽊造であり特別な⽊材を使わずに「耐⽕構造」とすることは困難なため、建築基準法3上、衛⽣上⽀障がないと認めて建築審査会の同意を得れば許可される)・道路内に建築されている。(2)⽤途・⽤途地域(当該地域は主として住居系)について定められている建築できる建築物の⽤途制限に適合しない。(特定⾏政庁が許可した場合は建築することができる)※建築基準法48条ただし書き(3)建ぺい率・容積率・⾼さ制限・各規程の制限を超えている。条の適⽤除外をこの場合受けなければならないということになる。そこで、どのような⽅法で適⽤除外とするかを検討した。⼀つは歴史的・⽂化的価値の証明はそう困難でないことから町指定⽂化財(3条1項2号建築物として建築審査会の同意を得て適⽤除外にできる)とする⽅向であり、もう⼀つは葉⼭の別荘建築群が葉⼭の良好な景観の⼤きな各規程の制限を超えている。(4)低層住居専⽤地域内(当該地域は、第⼀種低層住居専⽤地域を含む)の制限・絶対⾼さの制限を超えている。・建築物の外壁から敷地境界線までの距離(=外壁の後退距離)は都市計画で定めた限度以上。なお、防⽕・準防⽕地域内の制限に関しては、当該地域はほぼ該当しない。うつは葉⼭の別荘建築群が葉⼭の良好な景観の⼤きな構成要素であることの証明もそう困難でないことから景観法に紐づくその他条例(3条1項3号建築物として建築審査会の同意を得て適⽤除外にできる)を制定する⽅向である。現在、葉⼭町としては指定⽂化財にすることは難しいとの⾒解もあり、景観法に紐づくその他条例を制定するのであれば、加地邸を景観重要建造物とし、3条1項3号建築物として建築審査会の同意を得て適⽤除外にでき3.3その他検討を要する関係法令消防法は、規模や⽤途に応じて適合させねばならず、耐震改修促進法(建築物の耐震改修の促進に関する法律)では所有者に対して耐震診断・耐震改修の努⼒義務を課しており、対応が必要である。さらに、規模や⽤途に応じては、バリアフリー法、省エネルギー法などの関係法令の適合も⼤規模の修繕や模様替え増築の際には検討ることとなる。ただし、その他条例制定までに時間がかかるのは否めず、この⽅向も容易ではない。したがって、単体規定(構造規定)の適⽤除外を求めることは断念することとして、当⾯は、地下1階を倉庫・機械室として不特定多数の利⽤を制限することで2階建ての建築とし、「耐⽕構造」とはせず、既存のままとすることが考えられる。そして、将来的にその他条例が制定された段階で地下1階部分を活⽤という⽅向も考えられるただこの令の適合も⼤規模の修繕や模様替え、増築の際には検討を要する。もちろん新築の際には、すべての建築物にこれらの法に適合する措置が取られているのは⾃明であるが、葉⼭の別荘建築に関して、誰がどのような⽤途で継承するかが定まらない限り、法適合のための改造(改修)がどこまで必要かも明確にならないところも、円滑に事が進まない要因の⼀つとなっている。地下1階部分を活⽤という⽅向も考えられる。ただこの場合、⼿続きが⼆段階になってしまい、かなり効率は悪い。また、いずれにしても当該⽤途地域は「第⼀種低層住居専⽤地域」のため、集団規定(⽤途制限)に抵触するため、48条のただし書き申請を⾏い、⽤途制限をこの建物のみ外すために近隣の公聴会を数回開催する必要が⽣じ3.4加地邸について我々の活動の発端となった加地利夫別邸は、建築家・遠藤新の設計により1928年(昭和3年)に葉⼭町⼀⾊に竣⼯した。遠藤は、フランク・ロイド・ライトの建築思想を受け継ぎ、殊に⼤正期にはプレーリースタイルと呼ばれる緩勾配屋根で軒が深く⿐隠し板等による⽔平線る。不特定多数の利⽤者の活⽤を⾏い、加地邸を地域に開くことは⼤前提なので、48条のただし書き申請は進めていくことを検討している。近隣の公聴会を何度も開催することは、かなりエネルギーがいることが想像に難くない。そこで、加地邸をこれまでのように住⺠にひらくイベントをうちながら、町と近隣の理解を得て、加地邸を地域で使いながら残すための公聴会にすることで葉⼭町で「その他条例」を制れる、緩勾配屋根で軒が深く、⿐隠し板等による⽔平線が強調された住宅の作⾵を「祖述」した。加地別邸は、遠藤の⼤正期の作⾵を⽰す住宅(別荘含む)建築の頂点といえる作品であり、彼の設計した全ての住宅の中でも最⾼峰といえる。また、⼤正期から昭和期に変容する遠藤の作⾵の⼤正期最後の作品であると共に、変容の分⽔嶺とその後の遠藤にとって、あるいは⼀つの様式とも⾔える「ライト式」建築の建築史上における重要な作品であめの公聴会にすることで、葉⼭町で「その他条例」を制定することを促せればよいと考えている。葉⼭町としては、特定の物件(ここでは加地邸)だけに特別扱いするように町⺠に思われるのは良くないので、「その他条例」制定を推進することで、葉⼭町別荘建築群を平等に保持するということで、理解を得、遺産の保存継承が周辺の住環境に影響を及ぼすことにつなげたい。住総研 実践研究報告集 No.44, 2017年版 普及版 17

元のページ  ../index.html#21

このブックを見る