2017実践研究報告集統合版
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2.6 「その他条例」の⽐較検討(分類)その他条例は、⼤別すると、Ⅰ.新規条例の制定とⅡ.既存条例の改正のいずれかの⽅法で定められている。また、Ⅱ.既存条例の改正による場合も、改正の対象とな条例建築基準条例観条例⽂化財保護定めている。これは、法の適⽤除外をした後の建築物の安全確保を図るための規律(例えば、藤沢市の場合、中間検や完了検査、改修後の維持管理等を定める)を統⼀的に適⽤するのが望ましいとの判断があったものと考えられる条例はⅰ.建築基準条例、ⅱ.景観条例、ⅲ.⽂化財保護条例があり、制定⽅法は多様である。神奈川県下では、鎌倉市が上記Ⅰ、藤沢市が上記Ⅱ・ⅰ、横浜市が上記Ⅱ・ⅱ、箱根町が上記Ⅱ・ⅲの⽅法によっている。このような違いは、各⾃治体がもつ地域の資産の性格や置かれた状況などが異なることに起因するものと考えられる。まず、鎌倉市では新規条例を制定しているが、これは全国に先駆けて新規条例を制定した京都市などに倣ったる。(景観重要建築物を含めるか否か)保存建築物の対象に景観重要建造物を含めるか否かについても判断が分かれている。箱根町の場合、⽂化財保護条例の改正によってその他条例を定めたこと、景観重要建造物が1件もないことから景観重要建造物を対象として明⽰しなかったものと考全国に先駆けて新規条例を制定した京都市などに倣ったものである。鎌倉市は「古都における歴史的⾵⼟の保存に関する特別措置法(古都保存法)」の対象になっており、第3次鎌倉市総合計画でも歴史を中⼼としたまちづくりが謳われている。そのような中で、同じく古都保存法の対象になっている京都市と抱えている課題に共通項があったため、これを参照するのが便宜であったものと考えられる。他⽅横浜市場合都市観創造中⼼ら景観重要建造物を対象として明⽰しなかったものと考えられる。もっとも、今後、景観重要建造物が指定された場合には、「その他、町⻑が特に認めたもの」として対象になる余地はある。鎌倉市の場合、新規条例を制定していること、数多くの景観重要建造物を指定していることから、これを対象として明⽰することは考えられたはずであるが、条例の名称に「歴史的建築物」との⽂⾔があるとおり、主とし他⽅で、横浜市の場合、都市景観の創造を中⼼としたまちづくりを進めてきたため、その他条例も景観条例の改正によったものといえる。藤沢市の場合、新規条例の制定も検討されたようだが、鎌倉市などと⽐べて、想定される対象建築物が多くはないこと、建築基準法を適⽤除外をした後の安全性確保も、建築基準法を所管する部局が対応するのが妥当だと考えたことから建築基準条例によって定められることになって有形⽂化財などの歴史的価値を有する建築物を対象とすることを意図していたため、明⽰しなかったものと考えられる。もっとも、「これに準ずるものとして市⻑が認めるもの」として景観重要建造物についても、その他条例が適⽤される余地はあるように思われる。藤沢市の場合、当初は景観重要建造物を中⼼としてその他条例の適⽤を考えていた経緯もあり、景観重要建造物を対象とすることが明⽰されている他⽅で横浜市たことから建築基準条例によって定められることになった。箱根町は、全国有数の温泉地であり、⽊造旅館の多くが登録有形⽂化財になっている。登録有形⽂化財は、国宝や重要⽂化財と異なり建築基準法の適⽤除外が定められていないことから、その他条例による適⽤除外を可能とするために、⽂化財保護条例の改正によっている。(保存建築物対象)物を対象とすることが明⽰されている。他⽅で、横浜市の場合、景観重要建造物をその他条例の適⽤対象から明⽰的に除外している。(保存活⽤計画の主体)保存活⽤計画の主体について、横浜市はこれを市⻑と定めている。このような例は、現時点で横浜市以外には神⼾市だけである。横浜市及び神⼾市に共通するのは、(保存建築物の対象)保存建築物の対象は、まず、県指定重要⽂化財及び市町指定重要⽂化財を含めるか否かにより⼤別できる。建築基準法第3条第1項第3号は、「⽂化財保護法第百⼋⼗⼆条第⼆項の条例その他の条例の定めるところにより現状変更の規制及び保存のための措置が講じられている建築物」を保存建築物としている。そのため、本来であれば、⽂化財保護法第182条第2項の条例=⽂化財保護条まちづくり部局と⽂化財保護部局との連携の強さである。⼈事上の交流もあり、まちづくりのための多様なメニューとして、⽂化財や景観重要建造物の指定制度を位置付けており、その他条例も同様に理解しているようである。そのため、⽂化財や景観重要建造物の指定制度と同様、⾏政の側に⼀定のイニシアティブを持たせているものと考えられる。鎌倉市・藤沢市・箱根町では保存活⽤計画の主体をば、⽂化財保護法第182条第2項の条例⽂化財保護条例により現状変更の規制及び保存のための措置が既に講じられている県指定重要⽂化財及び市町指定重要⽂化財については、その他条例の対象に含めなくても、同号により建築基準法の適⽤除外を受けられるはずである。その意味で、県指定重要⽂化財及び市町指定重要⽂化財を指定対象外建造物として明⽰的に対象から除外する横浜市及び保存建築物の対象として積極的に位置づけて箱根定建築準第条第第鎌倉市・藤沢市・箱根町では、保存活⽤計画の主体を所有者として位置づけているが、ここで注⽬されるのは、少なくとも鎌倉市と箱根町では、所有者による申請権を認めている点である。例えば、国宝・重要⽂化財や登録有形⽂化財については国⺠の申請権は定められていないが(⽂化財保護法第57条参照)、その他条例は、対象建築物の保存活⽤を求める所有者が⼀定のイニシアティブをもって建築基準法の適⽤除外を受け得る仕組みにするこいない箱根町の定め⽅は、建築基準法第3条第1項第3号の⽂⾔に即した素直な整理だといえる。他⽅で、鎌倉市及び藤沢市は、県指定重要⽂化財及び市町指定重要⽂化財をその他条例の対象として明⽰的にとが肝要であろう。住総研 実践研究報告集 No.44, 2017年版 普及版 15

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