2017実践研究報告集統合版
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近代住宅遺産を継承する実践研究報告No.1617 近代住宅遺産を継承する制度づくりの実践―神奈川県葉⼭町の別荘建築の継承を対象として―特定⾏政庁でない神奈川県葉⼭町において「その他条例」を策定するための課題を明らかにするため、神奈川県下における「その他条例」の策定状況を⽐較検討した。その結果、「その他条例」の多様性と条例策定過程における県との調整の困難性等が確認された⻑岡造形⼤学准教授/津村泰範尾⾕恒治、藤森照信、野沢正光、⽊下壽⼦、吉⾒千晶様性と条例策定過程における県との調整の困難性等が確認された。本報告は、このような調査結果を踏まえて、葉⼭町の近代住宅遺産を形づくる別荘建築群に着⽬し、これを保存継承するための仕組みとして具体的な「その他条例」案を提案することした。1はじめに1.1活動の背景と⽬的・意義多くの近代建築史上価値のある住宅建築が失われている近年、これらの保存・継承に対する社会の関⼼は徐々に醸成されており保存要望書の提出や⼼は徐々に醸成されており、保存要望書の提出や、調査研究による歴史的価値評価等、多くの試みがなされてきてはいるが、抑⽌策として必ずしも有効とは⾔えない。仕様等が現⾏法規には不適合であったり、概して規模が⼤きく世代交代や家族構成の変化等で住宅として使⽤し続けるには不向きになっていたり、経年劣化が進んで⼤規模な修繕が必要な状態であったりして、住まい⼿にとって、その住宅建築写真1-1気仙沼⿃瞰写真⾃体を⾃分たちの⼿で保存継承することが困難になっているのは周知のとおりである。⼀⽅、第三者に委ねることを視野に⼊れた場合、いくら歴史的・⽂化的価値が評価されても、不動産マーケットではむしろ資産価値は低いため、さらに保存・継承を困難にしている。本委員会の構成委員は神奈川県葉⼭町にある加地邸(昭和3年竣⼯東京都市⼤学⼩林茂雄ぼんぼり環境計画株式会社⾓舘政英は、神奈川県葉⼭町にある加地邸(昭和3年竣⼯・遠藤新設計)の保存・継承を2014年から「加地邸保存の会」として取り組んできた。その中で、特に制度上の課題に対する解決⽅法を検討する必要性に迫られた。本実践活動は、現⾏制度上の課題とその解決に向けての⽅向性を明らかにすることを⽬的として、写真1-1 シンポジウム「加地邸をひらく:継承の実現へ」2015年11⽉28⽇(「加地邸保存の会」の活動)類似の条件下の葉⼭町の近代別荘建築群を対象に⾏うこととした。同様の近代建築史上価値のある住宅建築の資産価値を⾼める可能性を⾒出す意義があると考え、本実践活動に着⼿した。住総研 実践研究報告集 No.44, 2017年版 普及版 12

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