N畑S■■■■■■■■■■■リビングDparkingS=1/300壁開口企画・運営依頼リビングA企画・運営キュレーター制作・展示アーティスト図2-3 グループ展をおこなった場合の事業壁開口作業場床作業場出入口設計兼運営アトリエAGROUP作業場出入口アトリエBスロープ建具撤去床開口作業場床作業場床作業場床作業場出入口アトリエC作業場出入口壁解体展示壁作業場床キャッシュフロー事業フローアトリエD作業場床無償利用共用棟住民工房付きシェアハウスエントランスリビングB展示収益中庭コモンリビングコモンガーデン運営委託費展示収益の一部展示場所リビングC無償貸し出しオーナー設備投資 1点目︓メンテナンス 住民間でのルール設定が必要であると考えている。理想を述べるとすると,そうしたルールなしに住民主導で行われるべき問題とも言えるが,住民やその関係者の利用であるものの不特定多数の人が利用しているため一定の水準を保つルールが必要である。 2点目︓事業計画 これに関してはいくつかの具体的な解決策が考えられる。例えば,イベントやホームページを介して売れたグッズや制作物の収益を一部オーナーに入れ,建物の実質的な管理をおこなっている我々にその一部を管理委託費として払ってもらう形である。本来であれば,このような形で運営を進めていくことが理想的であるが,実質そこまでの収益を上げれていないことも現実である。 もう一つは共用棟の一部に収益を得られるプログラムを入れることである。現在の共用棟は法律上,オーナーの住居でありそれを住民に無料で貸し出すという形式の運営方法であるため,希望者にその場所を無料で貸し出し,物販や飲食営業を行うことで,そこでの収益の一部を施設管理費に当てるというものである。しかしながら,こうした駅からも遠く都心から車のみのアクセスしか容易でない場合はこうした業態は営業が難しいようにも思える。そこで,住民を含めアーティストの知り合いが設計者の関係者に多いことを考慮すると以下のような事業計画も考えられるのではないだろうか。 例えば,アーティスト複数人によるグループ展を開催する場合を考えてみる。都心ではギャラリーを借りる場合一日数万円程度かかる場合やそれほどの展示面積も期待できないことがある。そこで,共用棟を無料で貸し出し,キュレーターが選んだアーティストがその場所で展示を行う。そこでの収益の一部をオーナーへと渡し,設計と運営をおこなっている私たちに運営委託費として渡す。オーナーはさらにそこから共用棟の持続的な利用を可能にするための設備投資を行うことで,住民は設備の整った場所を無償で利用することが可能になる。それ以外の展示収益をキュレーターとアーティストが貰い,展示期間の共用棟の運営を展示期間のみ代わりに行ってもらうという計画である(図2-3)。 展示収益がしっかりととれることを見込んだ計画ではあるため,その額が低い場合はキュレーターやアーティストにはいくらかオーナーから支払うことも必要な場合も考えられる。 運営や管理に関する課題は今後の建築設計という枠組みの中に入り込み,我々設計者も考えていかなければならない重要な問題である。さらに郊外という場所においては,都心のように人が多くいないため,資金調達,その運営は都市におけるそれとは異なる方法論が必要である。 そうした1つの方法として,都市がもつ場所のネットワークではなく,様々な方法を用いて人的なネットワークを繋いでいくことによって,間接的にでもその3. 「引越し」について 2章では,設計した工房付きアパートメントでのコロナ禍における活動を通して,知見と課題を明確化し,今後の展望を示している。そこでは,パンデミックという世界的な状況下での我々の具体的な活動を扱ったが,3章では2章で指摘した実践と課題をもとに,引越し(=社会環境の変化における移動)について建築以外の専門家にインタビューを行い,多角的に「家」の価値について分析することで今後の運営への有効性を検討する。建物に関わることのできるステークホルダーを増やしていくことが可能ではないだろうか。 加えて,運営に設計者自ら関わることで,単なる運営ではなく継続的な建築への介入も可能となる。そうした間接的かつ継続的な介入は,現在進行形のパンデミックによってあらゆる事柄がオンライン化する現代において,離れていてもその場にコミットできる仕方が増えたことで後押しされた。こうした変化は郊外の空き家が増加している地域にとっても新たな地域の在り方の兆しになるのではないだろうか,我々も引き続き模索しながら実践へと繋げていきたい。3.1「引越し」に関するインタビュー 以下に各インタビューの内容を順番に示し,得られた知見や実践における課題を明らかにする。■URG(Urban Research Group) まず初めにインタビューを行ったのは,アーティストやキュレーターとして活動するアートコレクティブURGの3人,石毛健太,垂水五滴,黒坂祐である。インタビューでは彼らが2019年に開催した「引越し」がテーマの展覧会「東京計画2019 vol.3」を振り返りながら,団地における引越しやアーティストの制作とその場所の関係ついて議論した。 初めに彼らの行った展覧会では,「引越し」という行為が個人的な要望や欲望から能動的に行われること以上に,複数の社会的な要因が複雑に重なり合った時,そうした外圧によって引越しを余儀なくされるケースが多いことが指摘された。こうした移動の中には,
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