2022実践研究報告集No.2123
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  大田区立郷土博物館との協働(2019年度東京都商店街実態調査報告書)図1-1 東京都内商店街数の変化1. 実践の背景1.1 実践の社会的背景 本実践は東京都大田区西蒲田にある商店街を起点にして,地域における商店街の活性化に高校生が参画することを目的として行う。本実践の対象地である梅屋敷は,江戸時代には梅林が広がる農村であったが,現在の第一京浜は東海道の休憩所としていくつかの店が立ち並び,海苔,梅干し,わら細工などの名産品が売られていた。「和散中」という薬屋が作った梅園が人気を博し,将軍や後の天皇も訪れる名所となり,これが現在の梅屋敷公園である。また,明治時代に京浜急行の梅屋敷駅が開業すると多くの店舗が並ぶようになり,昭和初期には梅屋敷梅交会が設立された。京浜急行線に梅屋敷駅は存在するが梅屋敷という地名はなく住所は大田区蒲田となる。 梅屋敷梅交会は,東京大空襲で打撃を受けるも復興し,昭和56年には,東京都「マイタウン構想」の一環である「モデル商店街」の第一号に指定されている。現在,約550Mの街路に140店舗が営業している。このような大規模な商店街は,都内でも数えるほどである。東京都内の商店街数も調査開始の2001年以降,20年ほどで約15%が消滅してしまっている(図1-1)。商店街の衰退は都心であっても「買い物弱者」を生むことが危惧され、高齢者にとって生活していく上での大きな不安のひとつとなってしまう。すでに東京都港区では再開発地区における買い物弱者問題が2014年には露呈している。本実践の背景として高齢社会における「買い物弱者」対策として商店街の維持はインフラとして重要であり,東京都の高齢化率は全国の高齢化率と比較すると緩やかな傾向ではあるものの2020年には東京都も人口減少が始まり,高齢化が一層進むとされている(総務省資料より)。 1.2 実践の目的 2018年に実践した「高校生と商店街の協働による地域再考と商店街活性化のための取組」において,我々は高校生が商店街の活性化に参画することによって,以下の2点を明らかにしたいと考えた。(i)高校生と商店街が地域を再考し,その地域の魅力を発見し地域に発信することによって社会がどのような取り組みをどのような背景で取り組んでいるか実態を捉えながら活動を進めることができる。(ii)高校生が地域を知り,地域の人が地域を再発見することで,商店街で働く人々,生徒がどのようにして課題意識を構築していくのかの様相を捉えることができる。 まず初めに,私たちが今回設計を行なった建物に関する設計概要や運営方法を含む竣工後の活動を明らかにし,郊外地域における職住の近接した暮らしにどういった課題があり,知見が得られたのかを明確化する。 

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