2022実践研究報告集No.2123
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まず,高校生に対して,大手商業施設などに買い物客が流れることで商店街が廃れると,高齢者を中心に買い物弱者が生まれるという社会における相互関連性について知る機会を与えられたことがとても大きかったと思う。そして,その状況を打破するために,商店街を含めた地域一体に集客を図るというアプローチの仕方があるということは,目の当たりにしなければなかなか想像が追いつかないことである。さらに,地域に人を集める手段として,昔の写真と重ね合わせるAR技術を用いるという方法は,高校生にとってとても興味深いものであったことから,より一層このプロジェクトに対して熱意を持たせることができたと思う。高架下の活性化のために鉄道会社などが尽力するという社会のつながりを知り,このコンセプトに賛同して高架下に集まる方々との交流を通じて起業家の存在を知り,インタビューをしてポスターを作り地域にアピールするという社会とのかかわり方を知ったことが,日常の校内活動では得られない特殊な経験であり、彼らが自分の将来像を描く際に何らかの良い影響を与えるものとなったのではないかと考える。Q1 KOCAについてQ2 仕事をしたい業種4. 実践における意識調査4.1 生徒の意識の変化  ARアプリの開発準備のため,街歩き調査などを重ね本実践は44名(科学技術28名,深川16名)で行った。実施前後で街や起業家に対してどのようにイメージが変化したかを調査した結果を以下に示す(抜粋)。 深川高校3年・女子K参加前は起業家たちが主にどういうことをやっていのるかがわからなかったが、インタビューをしてアポをとるなどの活動した後は,具体的にどうすればいいかを明確にすることができ,目標を立てられた。このプロジェクトを通して,将来,自分の経験や能力を生かし,様々な体験活動の機会を充実させ豊かな人間性や社会性をもって地域社会に役立ちたいと思う。また,既存のものを尊重しつつ,時代の流れに対応していく「温故知新」の大切さを学んだ。科学技術高校3年・女子商店街はまだ残っているが,シャッターが閉まっているイメージを持っていた。商店街に行くならスーパーマーケットやショッピングモールに行った方が良いと思っていたが,商店街ならではの,雰囲気や人柄の良さを知って一概にどちらかが良いとは言えないと思い,商店街が好きになりました。自分が住んでいる地域の伝統的な行事に積極的に参加することで伝統をつないでいきたいと思います。たくさんの人たちと関わることで今までのイメージが変わり,新しいことを経験できて良かったと思っています。深川高校3年・女子起業家は自分には届かない遠い世界っていうイメージがあった。しかし,意外と身近にあり,自分でも起業しようと思え ばできるんだと思えた。また,ドロップスのようなグループに入って今後もこのようなプロジェクトに関わっていきたいと思っている。大学進学では,経済や経営に興味が湧き、進路を決めるきっかけになりました。科学技術高校3年・女子商店街はお店が減ってしまって暗いイメージを持っていて,親子やお年寄りが買い物のために利用する場所と考えていた。商店街を利用するお年寄りと若い起業家が交流していたKOCAのように歴史を捨てずに新しい街を計画から携わりたいと考えるようになった。起業家の皆さんは自分がなろうと思わないくらいイメージがわかなかったが,行動力や決断力がある人たちであると尊敬した。 また,本実践の委員ではないが,本実践に協力し関わった教員(深川高)から以下のような意見が得られた。4.2 取材協力者からのコメント 参加した16店の中で12店が当日プレゼンテーションに参加し,6店が意見を寄せてくれた。多くの店舗から今後も継続して関わりを持って欲しいと寄せられた。その中から意見を抜粋して以下に示す。Ball 藤咲さん自分が仕事を通じて何をしたいのか改めて考える機会となりました。私が高校生の時は社会人へのメールの送り方も知らなかったので立派だなと思いました。また,お二人とも自分がやりたいことをすでに持っていて素晴らしいと思いました。プチトリアン 浅原さんお話をする前は,すごく緊張していてとても不安でしたが,お二人が笑顔で迎えてくださったのでホッとしました。話しているお二人の方がしっかりされていて,私の方が沢山刺激を受け,とても勉強になりました。とても良い体験になりました。4.3 ポスター展来場者からのコメント  ポスター展期間中はCOVID-19による影響もあったと思うが来場者は100名程度であった。アンケートに22名が協力してくれた。その中で,目的であった「KOCAと地域をつなぐ」点に注目して報告する。 Q1で「KOCAを知らなかった」人の100%が「KOCAを知れた」と答えた。このことから,今回のポスター展によって,「KOCAと地域をつなぐ」ということは実行できたと考えられ,地域に高校生が参画することによる地域活性化のモデルとして十分機能したことが示唆される。また,高校生にとって「住まう」や「仕事」ということを考える機会の提供になったと考えられる。現在,梅屋敷周辺のAR(拡張現実)アプリ開発を行っているが,COVID-19の影響で遅れてはいるもののプレ・リリースまでは実行ができた。2023年1月の本リリースに向けて調整を進めていく。5. 今後について 本実践は地域の合意形成によるところが非常に大きい。しかし,高校生が地域を知り,地域が地域を知る機会の提供として,今後も継続的に何らかの形で実施していきたいと考えている。大田区からの依頼を受けて羽田空港で開催された(2022年9月17日~19日)の空の日イベントにポスター展で出展した。この際に雑色にある「水門通り商店街」から本実践の継続を依頼された。「地域が地域を知る機会」として機能し,地域にとっても住民と地域を結ぶツールとして魅力的に機能していると考えられる。

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