2022実践研究報告集No.2122
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 選考事例のヒアリングより,頻繁に利用されているDIY工房の要件として「予約なしで利用及び技術的な相談ができる」(①,③)「地域住民がスタッフにおり訪れやすい」(①,③)「簡単なものづくり体験イベントを提供している」(①)などが推察される。また,利用者の特性としてDIYに精通した人は他者のものを制作してあげるなど,「自らのスキルを発揮する機会を欲している人が多い」(②)ということが,指摘された。以上より,DIY Carのプログラムを次の通りに設定した。 ③ 11/20   ・「住戸が狭く,近隣への騒音も気になり,   作業スペースを住戸内に持てない」  ・「退去時に現状復旧しないといけない」  ・「自家用車がないのでホームセンターに家具を   つくりにいっても持って帰って来られない   (軽トラックのレンタルも面倒)」  ・「教えを受けながらでないとなかなか作業を   始める気にならない」② 6/19※ ④ 11/27 表2-1. 先行事例のヒアリング対象及び日程(2021年) No. 日程 ① 6/14※ (備考) ※のインタビュー調査は本助成期間外の調査成果。 対象者 大阪府堺市茶山台団地 DIYのいえ N氏(運営者) 大阪府堺市茶山台団地 リノベーションスクール T氏(DIYレクチャー付き住戸の講師) N氏(セルフリノベーション実践者) 京都府八幡市男山団地だんだんテラス T氏(だんだんテラス運営者) 福岡県宗像市ひのさと48 S氏(大分大学准教授) 1.背景と目的 空き家のセルフリノベーション,DIYのトレンドに見られるように,自身のライフスタイルに合った住環境への希求が高まり,住まい手自ら住まい環境を好みに合わせて作り出すことへの関心が高まっている。 一方で,特に団地など賃貸集合住宅において,2.実践の方法2.1 実践活動の「内容」など,興味はあっても気軽に作業を行えない人たちが多いと考える。 これに対し,まずは家具や簡易な間仕切り,壁の模様替え,書斎ブースの設置など,ホームセンターにある材料で1日~数日程度の作業で行える手軽な住環境改善を行う場を提供する方法を考えたい。 本実践では,賃貸集合住宅等,作業環境の確保が困難な住宅/住宅地においても,住まい手が自ら手軽な住環境改善を行いやすい環境づくりの方法として「技術サポート付き出張DIY作業スペースサービス」を実践しその効果や課題を検証する。■既往の活動と今回実践との違い・出張DIYサポートサービス 99%DIY(https://99diy.tokyo/diy_support/ 2021年1月30日時点) ︓出張サービスであるが,間仕切り変更や比較的大掛かりな内装変更(床の張り替えなど)まで扱っており,作業場所はサービス側での提供は無く利用者宅になる。・ホームセンター DIYアドバイザーによる講習 ︓製作したものを車等で持ち帰る必要があり,家具の製作などに限られること,自家用車の無い者にとっては手間がかかることから,本実践の意図する環境としてはハードルが高いものである。・UR フリースタイルハウス ︓一旦ワンルーム化されがらんどうとなった部屋の内装などを住まい手の自主改修によって仕上げるシステムで,退去時の原状回復の義務もない。セルフリノベーションに比べ格段に負担が少ないモデルである。本実践では今住んでいる住居にておこなうことができるさらに敷居の低い住環境改善を対象としている点で違いがある。 上記目標にある「技術的サポート付出張作業スペースサービス」の実践を,車を利用した移動式DIY工房を用いて次の3つの内容で展開する。①荷台,天蓋及び仮設的な防音ブースを組み合わせ作業スペースを展開でき,作業のための機材を収容した車=“移動式DIY工房car”の開発②“移動式DIY工房car”を用いたワークショップ(DIY教室, 以下WS)の実践(実際にニーズに応じて家具など作成し持ち帰ってもらう)③WS利用者の属性と利用目的及び評価調査2.2 移動式DIY工房Carの開発2.2.1  DIY 工房Carのプログラムの設定 本実践でのDIY工房の運営体制や内容を具体化するに先立ち,運営方法や工房の物理的環境について,先行事例でどのような工夫や課題があるかをヒアリング(表2-1)し,設計の参考とした。 A.作業場所の提供︓貸し工房(防音・防塵),  貸し道具B.技術的サポート︓建築士による設計相談,  資材手配,製作サポートC.成果品の蓄積と周知︓ニーズの地域的特性を  測るデータ,新しい利用者の獲得D.利用者によるDIY教室︓これまでの成果品に 興味を持って自らも制作したいと訪れた人に, その成果品のもとの製作者が技術的サポート を行う(互いに教える教わる関係から地域内 でのものづくりの活発化,交流の活発化, 地域特性に応じたものづくりノウハウの伝搬)E.気軽な交流場所︓公園内にDIY工房 Carを オープンカフェの装いで設置し,用がなくても 気軽に訪れることのできる公園の休憩所。  その気になれば,用意されたものづくりWS に参加もできる。

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