2022実践研究報告集No.2122
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①組立やすさ︓防音ブースのパネルユニットの重量による重労働,木材の反りの問題があり,気軽に土地土地を訪れすぐ使用可能とするには難しい仕様である。一方,3人程度で設営解体とも可能であり初参加者でもすぐに手伝えるほど簡単な組立てシステムであった点は評価でき,総じて労力の問題を除けば,運営しやすいものであった。結論として,より扱いやすくするために,組立を極力行わない車にほぼ作りつけた仕様が望ましい。②防音性︓ 合板の内側にウレタンゴムシートを貼り付け,受音点までの離隔距離を17m程度取ることで,条例の騒音基準以下に抑えられる仕様であり,今回のように駐車場や公園など住宅地に近接するオープンスペースを利用することで騒音の問題は解決できると考えられる。測定値を見る限り,隣家の傍での作業音を防音する場合には今回よりも効果の高い防音仕様が必要になることが予想され,①で述べた「車にほぼ作りつけた仕様」を検討する際に併せて検討することが望まれる。③空間の使い勝手や居心地︓ 利用者から開放的で和やかな雰囲気に居心地が良いという評価が多かったが,特に「アットホーム」「明るく楽しかった」「ゆるやか,やさしかった」など人による雰囲気が良くてという評価が多かった。れいに浮き出していた杉板を座面に、褐色の堅いナラ材を運営者としては,これはその場にいたスタッフや利用者の現れ古材ならではの表情を楽しめるデザインとした。人柄だけによるものではなく,輪をつくりやすくした中央の大テーブルや公園内での開放的な構えによる和やかさといった「居間」的な空間の設えも起因したと考えている。一方で長く作業する防音ブース内の暑さや換気の悪さの問題は,出入り口が常時開放しているだけでは不十分であり改善が必要である。<研究主査>・鄭 弼溶 神戸大学大学院工学研究科研究員 Doktor-Ingenieur<研究委員>・外間 守咲・石田 卓朗 合同会社雫羽織 代表社員 修士(工学)*当実践研究報告普及版は『住総研 研究論文集・実践研究報告集』 No.49の抜粋版です。参考文献は報告集本書をご覧ください。4.2 WSの内容について 多様な世代がDIYに関心を持っており,工房利用,オリジナル家具製作,スツール製作体験DIY相談と設定した全てのサービス内容に需要があることがわかった。また,製作物のデザインや作り方を考えたり,難しいところは一緒に製作するなど,ある程度スタッフが手伝ってあげることで予想以上に上質な成果品の製作を自ら行えた点が高評価されていることがわかった。 オーダーメイド家具製作のデザイン提案・調整に費用を払っても良いという意見や,隔月で計4回の開催にも関わらずリピーターがついたことからも,今回の運営内容が概ね適切であったと実感している。 家具製作で興味深かった点として,材料持込みの事例が2件ありアップサイクルという取組みの可能性が見えた。さらに発展させれば,団地内住民による材提供を受け,DIY Standにて別の住人と共にアップサイクルといった団地内循環の取り組みも考えられる。この場合はストックヤードの要否やマッチングの方法などが当面の課題となる。4. まとめ-学んだ点と発展的課題4.1 DIY工房Carの設計について ①組立やすさ,②防音性,③空間の使い勝手と居心地の点から検証した。 一方で,難易度を下げてDIYに慣れていない子供や高齢者でも簡単に取り組め楽しさ体感できることに特化した内容も要望されており,今後対応する必要がある。また,参加者に日曜大工に強い男性群が無かったことも課題だと考えている。 加えて,2.2.1で設定したプログラムのうち「C.成果品の蓄積と周知」「D.利用者によるDIY教室」を十分に行えなかったことも課題である。「C.成果品の蓄積と周知」はWS当日のうちにSNSを利用し成果品を速報的に通知するなど徹底すべきであったと反省している。「D.利用者によるDIY教室」については,上記Cにも関連するが,WSに関心を持つ人たちへ成果品の情報提供を徹底することと,特にリピーターを対象にした人間関係の構築が必要になると考えている,その意味ではWSの開催回数4回では,その実現へ至るのに難しいと考えており,今後の展開で考慮されることが望まれる。

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