アースパイプを外し,寝室の骨組みを取り払ったことで,寝室の空間そのものの暖房は諦め,いわば布団を暖めるための装置という形に振り切ったことになる。布団の中の温度を測るため,昼のうちに温度計を敷布団と毛布の間に仕込んでおいた。 この日の夜,床についた筆者は多幸感に包まれた。敷布団ごと暖かくなっており,まるで事前に誰かが暖めてくれた布団に入るような心持ちだった。布団の中に仕込んだ温度計は23℃を指していた。この実践を始めてから,もっとも快適な寝床が整った瞬間であった。 エアコンやガスストーブのように,どこかに局地的に温風があたるような暖房ではなく,温床の体積全体が熱を発しているようであった。普段はあまり感じたことのない熱であった。横になった際の肩の部分などは発熱が特に著しく,熱いくらいであった。当時の筆者の日記にこのときの率直な喜びが書かれている。 写真4-9 温床をもう一度仕込み直した写真4-10 完成したベッド。結果的にこれが最終型となった その後,このパイプの口にふいごを取り付け,先日と同じように空気を送った。作業を開始した15時時点の温床内温度は22.1℃だった。また表面に鍬を入れて切り返しの作業も行なった。18時時点の温床内温度は18.9℃。⑪2月1日14時:20.3℃,23時︓10℃ 温床内温度が昨夜よりも上がっているが,これは外気温が上がったためと思われる。ビニールを剥がし,温床を露出させると方々から湯気が立ちのぼったが,発酵が進んでいることを示す菌糸は表面には見られなかった。しかし鍬で掘り返すと,内部には菌糸が張っている部分も見受けられた。そのまま10cmくらいの深さまで切り返し,最後に水をかけた。16時50分,切り返し後の温度は11.4℃。水をかけたせいで急激に下がった。⑫2月3日14時︓12℃ 2×4材の骨組みの内側に「サニーコート」という家庭菜園用のビニールシートを張り、テントの断熱を二重にした。⑬2月4日14時︓11.6℃ 現状,筆者が温床の上で毎日寝続けることで空気が抜け,それが温度を下げているものと考えられる。眠るときに温床内の空気を押し出さない工夫が必要である。⑭2月5日23時︓12.6℃ 大工事を行なった。寝室の骨組みを取り払い,温床のビニールを剥がし,テントの床にシートを敷き,その上に温床内の落ち葉をすべて掻き出した。アースパイプは破損している箇所があったので思い切って取りはずした。温床内には菌糸が張り発酵が進んでいる部分がまだらに存在した。特に筆者の体重がかかっていない部分は発酵が進んでいるようだった。 温床の底に追加でむしろを4枚敷き,踏み込まないように注意しながら,掻き出した落ち葉をもう一度入れた。空気を含ませたまま山積みにして,湯たんぽを中央付近30cmの深さに埋め,上から40度のお湯を3分ほどかけた。それから温度計を挿し,最後にビニールで蓋をした(写真4-9)。しばらく発酵が進むのを待つことになった。⑮2月6日14時︓26.8℃ 温度計を挿す位置が悪かったのではないかと考え、温床のビニールを剥がし,表面を切り返し,平らにならして,温床中央付近の5cmの深さに挿し直した。⑯2月7日23時︓38.7℃ 温度が少しずつ上がってくれている。⑰2月8日23時︓49.3℃ 温床がある程度の温度まで上がってくれたので,今日から再びテント内で眠るべく、ベッドを作りなおした。温床表面を鍬で平にならし,30mm×40mm×1820mmの木材を7本,カットせずに15cm間隔で木枠の長辺方向に渡す。その上に1820mm×910mmの金網を置き,その上からこれまで寝室の壁として使っていたビニールで木枠ごと覆う。ビニールの端は落ち葉と木枠の間に差し込み,できるだけ隙間を塞ぐ。最後に木枠の壁にビニペットをうちつけてビニールを留め,布団を敷き,ベッドが完成した(写真4-10)。
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