2022実践研究報告集No.2028
7/11

写真4-6 仕込んだ温床の上に寝室用の骨組みを制作した写真4-7 1月23日8時。最初の一晩を過ごした寝室の様子筆者は中で眠っている写真4-8 パイプを挿して温床内部を掻き回す熱を利用する本実践においては,踏み込まない方がいいことがはっきりした。温床から醸し出される鶏糞の匂いと発酵臭が気になったので,ビニールで温床に蓋をした。蓋をした途端に温度は下がり始め,片付けを終えた18時前には57℃になっていた。酸素の供給が絶たれたことが原因だと思われる。温床のビニールの上に寝室用の骨組みも制作した。(写真4-6)。④1月22日14時︓45.9℃ 1月22日から2月18日までは本実践の居住期間であった。この間,筆者は基本的に制作したテント内で寝泊まりをした。 寝室用の骨組みに農業用ビニールを張り,寝室を完成させた。テント内の室温は1℃,外気温は-1℃にもかかわらず温床は発熱を続けて床暖房として機能し,炬燵か温泉に入っているような心地であった。アースパイプも機能しており,供給口からはうっすらと湯気が立っていた。 副査の内田も暖かさに驚いていた。この快適さを人に伝えるには実際に体験してもらうのが一番いいだろうということで,会場であるCAI03アートディレクターの端聡氏と,同ギャラリーで個展を開催中の鈴木悠哉氏にも寝室に入ってもらった。端氏は入ってすぐに「あったけえ︕汗かいちゃうね」と驚き,床に這いつくばっていた。鈴木氏は「これは寝れますね」と言っていた。 寝室に布団を敷き,布団と温床の間に温度計を入れてみたら35.7℃まで上がった。体温に近い,快適な温度である(写真4-7)。⑤1月24日23時︓48.9℃ 匂い対策として温床の表面にくん炭10リットルを撒いた。その効果は体感できるものだった。くん炭を撒くためにビニールの蓋を一度剥がしたことがきっかけになったのか,温床内の温度は上がっていた。⑥1月25日14時︓49.6℃ 同じく匂い対策として外壁を途中で切り,通気口を作った。風除室の空気が外気と繋がり、匂いはかなり改善された。⑦1月26日23時︓37.4℃ まだ快適に眠れる温度ではあるが、温床の温度が下がってきた。早くも酸素不足かと思われる。⑧1月27日14時︓35.1℃,23時︓32.9℃ 内部に酸素を供給するため,先端を斜めにカットした鉄製のパイプ(直径3cm)を,温床の上から挿し,ハンマーで叩いて中まで食い込ませ,ふいごの口に接続し,しゅぽしゅぽと空気を入れる作業を6箇所に行った。しかし35.1℃だった温床内温度は,冷たい空気が入ったことで32.9℃に下がってしまった。とはいえ前日の下がり具合と比べると,下降はすこしゆるやかになっている。多少の効果はあったものと思われる。⑨1月29日23時︓29.3℃ いよいよ眠るのに支障がある温度になってきた。 この日は外気温も低く,23時30分時点の風除室の気温は-6.7℃まで下がっていた。⑩1月31日14時︓22.6℃ 酸素を供給するため,今度は温床の壁にドリルで直径3cmほどの穴を3箇所あけ,先日の鉄製パイプをハンマーで挿し,半分ほど挿し入れたところで,てこの原理で掻き回した。しかし筆者が温床の上に 乗って寝ていたためか,内部の落ち葉は思っていたよりも密に詰まっており,表面近くの浅い部分は掻き回すことができたが,深いところを掻き回そうとすると鉄パイプのほうが曲がってしまうほどであった(写真4-8)。

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る