写真4-5② 汗だくになりながら,丸一日かけて温床の仕込みを終える。この時点で,温床の深さは50cmほどだった表4-1 温床内部とテント内の温度変遷。下の折線はテント内の室温,上の折線は温床内の温度を示す。共に摂氏温度(℃)である。1月15日23時から計測を始め,2月21日までの毎日7時,14時,23時の温度をグラフ化している。 落ち葉と鳥の糞と米ぬかにまみれながら,落ち葉→切り藁→鶏糞→米糠→水の順にミルフィーユ状に重ね,時々温床内に空気を入れるために手を突っ込んで切り返しを行う。準備していた落ち葉を使い切るころには温床の枠の9割くらいの高さまで埋まっていた。最後に上から水道水を10分程度かけ続け,上から足で軽く踏み込んだ。嵩は7割くらいまで減った(写真4-5①②)。 温度計を温床の表面から30cm程度の深さに挿し入れ,上から新しいむしろを二枚かけて蓋をした。19時の時点で温床内の温度は2.2度,テントの中の室温は0.2度であった。4.2 温床を仕込んでからの記録 温床の仕込みを終えた15日を起点に,温床内に仕込んだ温度計とビニールテント内に置いた温度計が示す数値を1日に3回記録し始めた(表4-1)。 一般的に,落ち葉で作った温床の温度は,仕込んでから1~3日で急激に上昇し,その後温床内の酸素量の減少に伴って徐々に下がっていく。本実践の核心は,暖房として適した30~40℃前後をいかに保てるかという点にあった。 右記に、下記表内に記した数字に従って,その都度の作業の内容を記していく。①1月17日7時︓1.5℃ 仕込んでから約40時間経っているにも関わらず,温床の温度が上がらない。テント内の室温は-0.5℃。外気温はもう少し低いと思われる。温床の断熱性能の悪さが原因ではないかと考え,厚さ50mmスタイロフォームを温床の内壁と床に入れた。また新たに籾殻4kg,2枚のむしろから切り出した藁,鶏糞15kg,米ぬか1.75kg,水を混ぜ,切り返しながら温床を仕込みなおした。最後に保温のための籾殻をまぶすようにかけ,温度計を挿し入れ,上からむしろを4枚被せた。②1月19日7時︓3.3℃ 低気温下で落ち葉の常在菌たちが発酵を始めるためには何らかのきっかけが必要なのではないかと考え,湯たんぽを入れてみることにした。2.6リットルサイズのプラスチック製の湯たんぽに沸騰させたお湯を入れ,温床の表面から深さ20cmのところに埋め込んだ。加えてビニールを温床の表面に被せ,上からスタイロフォームとむしろも被せた。作業をしている間もすこしずつ温床内温度は上がっていき,18時40分には6.3℃になっていた。テント内の温度は-3.3℃であった。③1月21日7時︓50.7℃,14時︓61.3℃ 朝7時の室温は-8.2℃だったが,温床内では急速に発酵が始まった。14時には60℃を越え,表面のビニールを剥がしてみたら一気に湯気が立ち上がり,テント内がサウナのようになった。チッソ材を思い切って増やしたこと,「湯たんぽ」という発酵のきっかけ,そして温床を仕込む際にあまり踏み込まなかったことが功を奏したと思われる。踏み込むと酸素が押し出され,常在菌の活動はくすぶる。農業的用途で温床を作る際は,温度が上がりすぎるのを防ぐために仕込んだ後に上から踏み込むのが一般的だが,暖房として発酵
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