2022実践研究報告集No.2028
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図4-1 2×4材を用いた骨組み。以下、「準備期間」中のすべての作業は、主査と副査の二人で行っている。上記のテントの内部に入子状にひとまわり小さなテント(寝室)と,幅1600~1800mm,奥行1800mm,高さ600mmの木箱を作り,内部に落ち葉等を入れて発酵熱を生じさせた。その上に金網を載せ,布団を敷いた。発酵槽の中には暖めた写真4-2 銀色のレール状のものがビニペット。専用の黒いスプリングを用いてくぼみの部分にビニールを挟み農業用資材を扱っているホームセンターで入手できる。図4-2 温床の概念図。外気を寝室内部に排気するアースパイプを仕込んだ込むようにして使う。3.3 素材の選抜理由 《広告看板の家 札幌》では,厚さ0.1mmの農業用ビニールシートでテントを制作し,その内部を居室とした。ビニールシートを用いた理由はふたつある。 ひとつは安価な割に丈夫で扱いやすく,断熱性能に優れた素材であるという点である。農業用ビニールハウスのために作られた製品であるため,ホームセンターなどで簡単に入手でき,専用の金具を用いれば素人でも容易に脱着することができる。 ふたつめには法規的問題がある。テントを制作するにあたり,建築確認申請が不要となる条件を満たすため,札幌市の建築基準法の運用基準を参考に,①特殊な機械を使用せず,素人でも膜材を取り外すことができる。緊急の場合にはカッターナイフなどで切り裂く等の対処ができる。②床面積200㎡以下である。③季節限定的な使用である。という三つの条件をクリアする必要があった。3.4 敷地について 本実践の敷地を提供してくれた札幌市中央区のアート・ギャラリー「CAI03」は,札幌護国神社の向かいに建つ高松パレスB棟というマンションの1~2階部分にある。2階のギャラリー・スペースの前には鉄骨製の屋外テラス(道路に面した駐車場の屋上にあたる)があり,普段は利用されることの少ない空間だったが,「CAI03」がこの場所の利用を大家と交渉し,本実践が実現した。高松パレスの住民たちもみな寛容に見守ってくれた。・1月10日 ホームセンターで買い出した木材を切り出し,骨組みを組み立てた。木材同士はインパクトドライバーを用いて長さ70mm程度のビスで固定(写真4-1)。4. 実践《広告看板の家 札幌》の内容4.1 温床制作期間の記録 1月8日から15日までを温床の準備期間とし,テント(図4-1)や温床(図4-2)の制作を行った。(※補足として,2022年は北海道が記録的な大雪に見舞われた年であった。どれだけ雪かきをしても,翌朝現場に行くと五十センチ近く積もってしまっているという日々が続いた)。・1月12日 ビニペットと呼ばれる,農業用ビニールを固定するための金具をディスクグラインダで切断し,ドリルドライバーを用いて四十センチ程度の間隔でビス用の穴をあけ,30mmのビスで骨組みに打ちつけた(写真4-2)。 また,あらかじめスポンサーのロゴをアクリル絵の具で描いておいた農業用ビニールの外壁を張った(写真4-3)。

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