参加者からは総じて,暖かく快適だったという感想をもらったが,匂いが気になったという人もいた。札幌での実践でも匂い対策には苦労したので,例えば温床と寝室を完全に切り離し,アースパイプを応用して発酵熱だけを寝室に伝えるなどの工夫が今後考えられる。6. 今後について 3筆者らは落ち葉を暖房としてある程度機能させ,その体験を少ないながらも人々と共有することはできたと自負している。しかし本実践はまだまだ再現可能性が低く,4.3で述べた反省点も解決できていない。今後,他の実践者が現れ,サンプル数が増えることを願うが,落ち葉の種類や気温,その土地の気候など様々な要素による変数は大きく,本実践の汎用性は高いとは言えない。しかし指定された材料だけを使うような実践になってしまっては,災害時に実用可能なものにはならない。筆者らができることは,この実践を続け,小さな輪を広げるような形で,サンプル数を増やしていくことと,落ち葉を使った暖房は可能であるという認識を広めることである。 現在は,本プロジェクトをより波及力のあるものにするため,千葉県に約150平米の土地を購入し,本プロジェクトを応用させたものを進めている。今後ますます切実な問題になっていく気候危機のためにも,落ち葉の暖房活用の実践を続けていきたい。 Nさん(20代,木工職人)Mさん(30代,小学校教師)Aさん(20代,学生)Tさん(40代,自営業)<研究主査>・村上 慧 アーティスト 造形学士<研究委員>・内田 涼 アーティスト/デザイナー 造形学士・清原 惟 映画監督 映像修士・John Wells 映像人類学研究者 B.A.(Communications) M.A.(Visual Anthropology)*当実践研究報告普及版は『住総研 研究論文集・実践研究報告集』 No.49の抜粋版です。参考文献は報告集本書をご覧ください。Kさん(20代,会社員)メッセージ(抜粋) 日時 4月27日-28日 気温等 27日22時の外気温:24℃ 27日22時の温床内温度:55.1℃ 気温等 28日8時の外気温:18.7℃ 28日8時の温床内温度:54.8℃ 感想 気がついたら寝ていた。普段は夜中頻繁に目が覚めるのだけど,すごく寝た感じがあった。すっきりと目覚めがよかった。森の中を歩いているような香りが漂ってきて,地面に寝てるようだった。子供の頃,ボーイスカウトでキャンプに行った時のことを思い出した。匂いは記憶と繋がっている。熱はほのかに感じられた。すごく大きいものに包まれている感じがあった。普段使ってない感覚が研ぎ澄まされた。 メッセージ わすれかけの身体感覚と記憶。とおくてちか地球からちょっと浮いているけど丁度良い関係ですね。ぬか床の中に暮らすとこんな感じなのかも。ごゆっくり暖まって下さい。 い感覚を目覚めさせる睡眠装置。不思議なくらいすっきりしました。 日時 4月1日-2日 気温等 気温等 感想 電気毛布とは違う,やさしい暖かみを感じた。自分には足りない熱を菌たちが補ってくれている気がした。2時半に寝て8時のアラームまで一度も起きなかった。匂いは,最初は感じなかったけど寝る前に考え事をしている時に,やっぱりあるなと思った。でもすぐに気にならなくなった。安心感があり,このメッセージ 熱とともに心地よくやすめますように 日時 4月2日-3日 気温等 気温等 感想 「カナヘビを飼ってるときの水槽の匂い」だと思った。小学生の時に水槽に落ち葉入れて,土入れて。メッセージ(抜粋) 日時 4月4日-5日 気温等 気温等 感想 最初から布団が暖かくて,二度寝する時みたいだとメッセージ テントの中で耳をすますと外が見える。かも日時 4月6日-7日 気温等 気温等 感想 よく寝れた。匂いを感じなくなることはなかった。1日24時の外気温:4.9℃ 1日24時の温床内温度:51.8℃ 2日8時の外気温:7.1℃ 2日8時の温床内温度:50.9℃ 熱の中にいていいんだと感じられた。寝るというよりも,休むって大事だなと思った。 2日22時の外気温:9.3℃ 2日22時の温床内温度:50.9℃ 3日8時の外気温:7.6℃ 3日8時の温床内温度:47.1℃ 飼い始めではなく,何ヶ月か経ったあとの匂い。めちゃくちゃよく寝れた。ちょっと床が固かったかな。シーツとかに鼻を擦り付けない限り,匂いは途中からわからなくなった。暖さはすごかった。小学生に戻った夢を見た。寒くも熱くもなく,心地良かった。 カブトムシとかトカゲを子どものころに飼っていた人はなつかしい夢が見れます! 4日22時の外気温:8.3℃ 4日22時の温床内温度:45.2℃ 5日8時の外気温:10.4℃ 5日8時の温床内温度:45.1℃ 思った。特に体が床に接地する部分が暖かくて,最近座り仕事ばかりで腰が痛かったから,気持ちが良かった。土の匂いがするなとは思ったけど不快ではない。音が記憶に残っている。起きた直後に救急車が鳴っていたり,鳥の鳴き声が聞こえたりした。Mさんからのメッセージの通り「トカゲが枕元に出てくる夢」を見た。このテントにいるとすることがないので色々なことを考える。自己省察の家だった。 しれない 6日22時の外気温:14.1℃ 6日22時の温床内温度:46.1℃ 7日8時の外気温:19.3℃ 7日8時の温床内温度:44.2℃ ずっといい香りだと思っていた。干した布団とも違う,人の匂いや部屋の匂いでもないから,自分がどこにいるのかわからなくなる感じがした。1時半くらいに寝て,普段通り6時に目が覚めた。昔チュニジアに旅行に行った時,荒野で野宿することにして,焚き火を起こして寝ようと思ったのだが底冷えがひどくて,椰子の葉を集めて体の下に敷いたら眠れたことを思い出す。地面との関係が遮断されない感じ。
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