4. 避難所大学(第2回)の概要と結果 避難所大学(第1回)の結果を受けて,第2回を2022年10月16日(日)に,大野原コミュニティセンターで実施した。講座受講者は41名で,このうち第1回の受講者は15名であった。全体として組織化スペーペット合計その他混雑汚れ1合計その他混雑1汚れ1合計その他食糧・物資混雑・弱者暑さ・寒さトイレ参加者番号1111321402003100557614217611122211ス1129薬1112136123111451122133①②③1④1⑤1⑥23⑦111表3-4 グループ討議の付箋提出数の内訳(Aグループ)Aグループ(課題①)合計5710(課題②どんな状態か)(解決策)1111トイレトイレ331846121回目 神栖避難所大学 通常の講演会形式のような一方向の情報伝達ではなく,住民が避難所運営に関わる課題を主体的に見出し,グループで話し合うことによって,住民が主体的に協働しながら避難所にかかわることをめざした市民啓発プログラムを計画した。グループ討議を中心にすること,また専門知識を有したファシリテータが各グループにつくことにより,討議の方向性をずらさず,充実したグループ討議ができるという効果を生むことをめざした。 その成果については計画通りとなり,参加者の満足度が高く,特に避難所の運営は避難所大学実施前の意識では運営者にまかせるとしていた人が多かったのに対し,事後にはみんなが参加して決める方式を多数が希望した。避難所大学でのグループ討議を経て,みんなで課題に取り組んだ内容が解決方法として有効であったことを評価する声も多かった。自由記述においても「とても効果的な話し合いができた」,「みんなでたくさんの意見を出して勉強になった」,「みんなで議論するといろいろな意見が出るのでよかった」という意見が多く得られた。その一方で1回目では,地域の課題を複数見出し,その1つをとりあげて対応策を発想した段階であり,避難所運営に関する直接的な課題とその解決方策を議論したわけではなかった。 2回目 避難所の初期が最も混乱することから,開設当初,迅速に住民同士で自主的に動き出すことができることを目的とした教育プログラムを計画し,グループ討議を通じて,避難所に主体的にかかわる住民を増やすこと,住民が実際に動き出す一歩となることをねらいとした。 実際に避難所として指定されてるコミュニティセンターを会場としているため,備蓄物資の実物と数量を実際に見ることができることに着目し,神栖市防災安全課との連携のもと,備蓄倉庫を全員が見学した後,物資の量などを考慮しながら解決策を検討した。 各グループの模造紙と付箋の記録から,グループ討議の進行に沿って課題①②の話し合いがどのように進展したか,過程を整理した(表3-4)。表頭の項目は,模造紙上でファシリテータが分類した群を,数字は各参加者が書き出した課題と解決策などの意見数を示す。グレーの網掛けは参加者の意見をファシリテータが付箋に新しく記録した内容とその数である。 ここでは,代表的なグループ討議の推移の例として,Aグループについて示す。このグループでは,課題①では避難所の初動期に起きる問題について,全員から合計46の多数の意見が活発に出ている。これがトイレなどおおよそ8項目に整理され,幅広い観点での意見がみられる。3つの重要課題として,トイレ,暑さ・寒さ,弱者が挙げられ,課題②ではトイレ問題に取り組んでいる。汚れ,混雑,その他の3つの観点での解決策が付箋に書き出され,トイレ問題から組織化へ発展してファシリテータがまとめた様子がみてとれる。解決策の実現性・有効性までは判断できないが,複数の観点から付箋の意見が多く出されている。グループ討議を通して解決策をイメージできたといえる。3.5 避難所大学(第1回)の総括 神栖市では避難所自主運営への準備は未着手だが,コミ協所属の住民などのポテンシャルは高いことが明らかになった。今回のワークショップを通して知識,避難所生活や課題のイメージをもてるようになり,当事者意識の土台となる避難所自主運営の認識が特に高まった。一方で,事前に自分たちで準備すべき項目では,身近な生活課題に関わる項目が上位にあがったものの,避難所開設や運営への関心がうすい現実があり,この点についての課題が浮き彫りになった。 参加者の個人スキルに関しては,避難所への関心等で意識が次の段階へ進んだ。ただし自主運営を認識しても,主体的な参加意思は二分されるなど,全員の意識が変化したわけではない。 グループ討議の進行過程について,付箋などの記録,ファシリテータへの聞きとり調査からみると,どのグループも避難所生活の課題をイメージできたが,解決策を個人で出せたかについては分かれる結果になった。解決策をイメージしづらかったグループでも,話し合いから解決策を導くことができた。 グループ討議への満足度,避難所の課題に取り組んだ学習効果,自分の問題として捉えて考えたという手応えはアンケート結果に表れており,今回のワークショップが住民同士での解決に向けた動機付けになったものと考えられる。
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