図1-1 本実践研究の構成実施日方法対象者回答数調査項目集合調査法、自記式、直接配布・回収神栖市総合防災訓練への参加者回収数141部/配布数154部(回収率92%)属性(居住地区など)かみす防災アリーナの日常利用と災害時利用神栖市に津波警報が出た場合の避難行動地域活動への参加状況と災害時の協力表2-1 アンケート調査の概要2019年11月10日1.2 目的と本実践研究の構成 本実践研究では,まずはじめに当該地区の地域コミュニティの現状や特徴について,アンケート調査やヒアリング調査に基づいて整理・考察を行った。その結果に基づいて,2021年12月と,2022年10月の2回,神栖四中学区地域コミュニティ協議会の協力のもと,「神栖避難所大学」を開催し,ワークショップ参加者の防災意識がどのように変わるかについて考察を行った。 さらに神栖避難所大学の開催と並行して,地域防災計画を整備し,避難所運営のガイドラインや防災士等の避難所運営の担い手育成を主導する行政セクターである神栖市に対して,避難所運営等について先進的な取組を行っている文京区や,全国規模でNPO等の災害復旧支援団体の連携支援を実施しているNPO全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)との意見交換を実施し,平常時からの連携体制構築の重要性や,避難所の住民主導型運営の重要性を,行政側とも共有するための活動も実施した。本実践研究における活動の構成を図1-1に示す。1. 本研究の背景・目的1.1 背景 茨城県神栖市大野原地区では,2013 年9 月から市民自らがまちづくりを実践する地域コミュニティ協議会「大野原小学校区地域コミュニティ協議会(2019 年から神栖四中学区地域コミュニティ協議会に改組。以下,コミ協と記す。)」が発足し活動を続けてきたが,地域防災のマインドの定着が課題となっている。そうした中,2019 年6 月から同地区に隣接する神栖中央公園に,災害時に一時避難10,000 人,中長期避難2,000 人を収容できる大規模避難所「かみす防災アリーナ」が,指定管理施設として供用開始された。 著者らは,これまで同アリーナの避難所機能を高めるために,行政の防災マニュアルの改訂への支援,指定管理者の体制構築への支援などの実践活動を実施してきた文1),2)。また著者らは,防災市民教育を通じて住民の日常のつながりを強め,避難所の自主運営スキルを高める「文京避難所大学」(文京区・日本女子大学共催)を2019 年9 月より立ち上げ,実践を続けている。これらのプログラムを,神栖市大野原地区のコミュニティの実情に合わせた形で改良・実施し,避難所運営のスキルを向上させ,「住民参画型の避難所運営を実現する」段階へと進む実践活動を行う。 2. かみす防災アリーナ周辺の地域住民の 防災意識,及び大野原地区の コミュニティ協議会の現状の分析 2.1 かみす防災アリーナ周辺の地域住民の防災意識 かみす防災アリーナの周辺住民を対象として,防災意識および避難行動を把握し災害時の避難所自主運営の可能性について考察する文3),4)。同施設の周辺5 行政区(A~E 地区)および大野原地区(F地区))を対象とする総合防災訓練への参加者へのアンケート調査を実施した。 訓練受付人数は約170 名であったが,子どもを除く参加者へ154 部配布し,141 部を回収した。調査項目は,当施設の日常の利用状況,災害時の想定避難行動,地域活動への参加状況などである(表2-1)。 5 地区住民の特徴をみると,回答者の42%が自分は地域とのつながりが強いと答え(図2-1),また48%が人付き合いが好きだと回答した(図2-2)。これはいずれもコミュニティ協議会のあるF 地区よりも高い割合である。回答者が地域の防災訓練への参加者であるという偏りがあるが,地域のコミュニティ力,個人の資質ともに高く,災害時の共助,避難所運営参画の可能性がある。 地域の組織や施設での活動への参加状況を尋ね,その組織でよく連絡をとる関係かどうかを質問した(図2-3)。40%程度だが,自治会や近隣交流,趣味やスポーツのグループへの参加者が,連絡を取り合う関係を構築していることがわかる。また,災害時に共助体制を構築できる可能性がある組織を探るため,災害時に情報交換したりお互い手伝ったりできそうかを質問した(図2-4)。自治会や近隣交流は,日常の連絡と同様に災害時に協力し合える割合が高い。た,必ずしも日常の日常活動の連絡が密でないPTA,ボランティア・市民活動
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