写真5-1 意見交換会(第2回・オンライン会議)の状況第1回目 2022年1月11日の10:00~11:30に,神栖市の防災安全課と文京区の危機管理室防災課を交えた意見交換会を実施した。文京区は避難所運営に力を入れており,避難所開設キットを保有・展開し,防災士や地域住民と連携した訓練等も実施している。神栖市は,2021年度から防災士協会が設立され,今後防災士育成に注力していく段階であった。意見交換会では,神栖市の自主防災組織の状況や防災士協会設立の経緯等について説明され,文京区における防災士の登録状況や訓練の事例等について意見交換が行われた。 第2回目 2022年8月5日の10:00~11:30に,第1回出席者に加えて,文京区の社会福祉協議会ならびに認定NPO法人の全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)を交えて,災害時の情報共有会議の考え方,内閣府,東京都,茨城県の最新の状況等について話題提供,意見交換を行った(写真5-1)。 2回の意見交換会を通じて,避難所開設中の時系列の中で,ニーズの多様化に伴い,多種多様な関係者が避難所に関与することになること(エコシステムの形成)。自治体としては,住民主体の避難所運営(自助共助の強化)の啓発とともに,平常時から顔の見える関係性構築のための,体制づくりの重要性が確認された。 このような草の根の動きをきっかけとして,今後,持続的,組織的な体制づくりにつなげられるように,継続した取組が求められる。自主防災組織レベル,防災士レベル,施設レベル,行政レベルなど多重な階層で,人的・物的ネットワークが強化されることが期待される。5. 神栖市,文京区,NPO法人との意見交換会 住民主体の避難所運営を普及・定着させるためには,行政のバックアップや連携が不可欠である。このため,避難所大学と並行して,行政同士の連携による避難所開設訓練事例や防災士育成ノウハウ・カリキュラムの共有化,復旧・復興時の外部からの支援団体(NPO等)との連携や平常時からの体制づくりに向けた関係構築を目的として,行政や支援団体を交えた意見交換会を,計2回実施した。2回とも形式はオンライン会議で実施した。6. 総括と今後の課題・展望交換会 本実践研究では,2021年12月と,2022年10月の2回,神栖四中学区地域コミュニティ協議会の協力のもと,「神栖避難所大学」を開催し,ワークショップ参加者の防災意識がどのように変わるかについて考察を行った。 さらに神栖避難所大学の開催と並行して,行政セクターである神栖市に対して,避難所運営等について先進的な取組を行っている文京区や,全国規模でNPO等の災害復旧支援団体の連携支援を実施している全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)との意見交換を実施し,平常時からの連携体制構築の重要性や,避難所の住民主導型運営の重要性について認識を共有化する試みを実施した。 調査の結果,津波被害が予想される市町村では,津波からの避難を優先するためか,避難所の指定自治会が不明確な場合が多く,事前準備が進みにくい状況を招いている。一方,対象地域の住民は,地縁的交流が比較的盛んで災害時の共助意識が高く,特にPTAや子ども会の若年女性層,シニアクラブの高齢層の共助ポテンシャルが高いことがわかった。しかし開発に伴う移住者が多いため,過去の災害経験や危機意識が継承されにくいという特徴も明らかになった。具体的には当事者意識などを今後醸成していく必要がある。その前提条件となる避難所の地域指定や運営体制に課題があることが分かり,こうした現状を踏まえた住民への働きかけが重要となる。 こうした調査を踏まえて実施した2回の避難所大学では,座学やグループ討議を通して知識,避難所生活や課題のイメージをもてるようになり,当事者意識の土台となる避難所自主運営の認識が特に高まった。一方で,事前に自分たちで準備すべき項目では,身近な生活課題に関わる項目が上位にあがったものの,避難所開設や運営への関心がうすい現実があり,この点についての課題が浮き彫りになった。 参加者の個人スキルに関しては,避難所への関心等で意識が次の段階へ進んだ。ただし自主運営を認識しても,主体的な参加意思は二分されるなど,全員の意識が変化したわけではない。また,効果の考察に関しては,個人の意識や社会的な属性別にワークショップの効果がどのように現れるのかについて,さらに踏み込んだ分析も今後必要であると考えている。 ワークショップを通じて見出された「避難所開設や自主運営への関心が薄い」という課題は,項目としては事前に想定されたものであった。しかしその課題の問題の深さに関しては,関心を高めることが決して不可能ではなく,改善の可能性を期待させるものであった。グループ討議への満足度,避難所の課題に取り組んだ学習効果,自分の問題として捉えて考えたという手応えはアンケート結果にも表れており,今回の一連のワークショップが住民同士での解決に向けた動機付けになったことがうかがえる。その意味からも,今後の継続した啓発・訓練の取組みが重要であり,啓発活動の継続が避難所自主運営の実現に向けた平常時にで
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