2021実践研究報告集NO.2023
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6)⼟台貫と前・後下張り⼟台貫と前下張り,後下張りは,横⽅向⼨法の基本となる。「下張り」は,経⽷を下⽅で張る部材であることに由来する。笠⽊を頂点として,前後の下張りに縦⻑の直⾓三⾓形状に経⽷をかける。これら3つの部材は,無節材を指定した。下張りはホゾだけでなく,柱を切り⽋いて下張りの曲断⾯を受ける。前下張りには直⾓⽅向に藺台受けも挿すため接合後さらにホゾを切図77笠⽊加⼯(張り⽮受け)(2021925)⾓⽅向に藺台受けも挿すため,接合後さらにホゾを切り⽋く複雑な仕⼝である(図7-6)。現場で修正図⾯を描いて刻んだ(図6-3)。8)仮組〜移設・本組9⽉16⽇に,秋岡⽊⼯所で躯体の仮組を⾏った。仮組した躯体はばらし,加⼯済みの⼀部樫材と共に10⽉3⽇に来⼭⼯房に移設して(図7-8),可動部を組み上げることとした。当初は可動部も委員らで組み上げ完成させてから,来⼭⽒に修正や調整を依頼する予定で図7-7 笠⽊加⼯(張り⽮受け)(2021.9.2〜5)させてから,来⼭⽒に修正や調整を依頼する予定であったが,⾦物製作や細部パーツの刻みも含め,期限内に完成度を求めることは難しいと判断した。織機の形や動きだけ真似ても,製品レベルの製織ができなければ技術継承とは⾔えない。織り⼿による細部調整の必要性を痛感した。7)笠⽊と下笠⽊織機頂部の笠⽊は,製織時に経⽷が擦れないように前傾させて4分(12mm)前に出す。前柱頂部のホゾに対して,約5°傾けてホゾ⽳加⼯する(図6-3)。笠⽊と下笠⽊の接する2か所を切り⽋いて樫材を埋めて,張り⽮を打つ部分を補強する(図77)本来は蟻加⼯し図7-6 前下張-前柱の取り合いと後下張り(2021.8.26)り⽮を打つ部分を補強する(図7-7)。本来は蟻加⼯して前に抜けないようにするが,実測段階で記録を失念し,蟻加⼯しなかった。前柱-笠⽊・下笠⽊の仕⼝は,張り⽮を打って経⽷を張る際に可動部となるので,少し緩めに加⼯している。前柱-下笠⽊のホゾとホゾ⽳がほぼ同⼨なのに対して,前柱-笠⽊の仕⼝はかなり緩く,両者の設計⼨法は⼀致しない。図7-8 (左)仮組(2021.9.26)〜(中)移設・(右)本組(10.3)9)コテ・指⽵と⾜踏み(左・右) 10⽉3⽇から来⼭⽒との共同作業を開始し,細部の製作⼯程を確認した⾜踏み(左)は踏み込むことで指製作⼯程を確認した。⾜踏み(左)は踏み込むことで指⽵を開き,⾜踏み(右)はコテを上げる(図7-9)。織機躯体の左右中⼼軸上には,⾜踏み(右)の中⼼線があり,重⼼となる。右は藺草を打ち付ける重いコテの上げ下げをする必要があるため,強度や耐久性が求められる。細い経⽷を繰り,繊細な藺草に直接触れるこの可動部調整の⼯程が最も困難で⼿間がかかり,織り⼿でなければ難しい。図7-9 共同作業,コテ・指⽵と⾜踏み取り付け(2021.10.3〜23)

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