2021実践研究報告集NO.1926
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2.本実践研究の仮説と主要な概念2.1仮説―コミュニティ再⽣の新たな⽅法従来のコミュニティ再⽣の取り組みでは,⾏政が各活動主体個々への⽀援を⾏うことが中⼼となっていた。また⽀援の対象は,例えば市⺠活動,介護等の福祉関連団体,町会等の地縁組織等,対象別に縦割りで実施されがちで,どちらかといえば「不⾜するものを補っていく」という考え⽅であった⽀援メニューは助空間の使⽤がそれにより不許可になったという経緯もあった)。この活動は多様なまちの資源を「ごちゃまぜ」に⼀堂に会して可視化する,いわば「⾒本市」であり,それらをそこに集ったみんなで(活動主体,プラットフォーム運営主体,⾏政や商店会等の他セクター,そして住⺠も)シェアすることが活動の主眼であることを鑑み,活動名を変更した。ていく」という考え⽅であった。⽀援メニューは助成⾦やイベント,ワークショップが中⼼で,⼀過性に終わることが多く,市⺠もそれの利⽤者で留まる傾向がある。本実践活動の取り組みではこうした状況を踏まえ,縦割りを超えた横断的な活動が可能な「住⺠」が主体となって,不⾜しているものを補うのではなく,「まちのなかにすでにある多様な資源(活動や活動主体,2.4概念③―創発國領(2011)⽂3)によれば,創発は⼀般的には「あるシステムにおいて,その部分の総和とは異なる性質,特徴が,システムの全体において現れる現象」(Luisi,2006)とされる。社会システムでは,アダム・スミスの「神の⾒えざる⼿」のように,様々な⽬的を持った多様な⼈々がおのおの⾃由に取引を⾏う場所等)やその種」を発掘して最⼤限に「活かしていく」という考えに基づいて⾏う。⽅法としてはコミュニティプラットフォームを形成し,そこから創発が⽣まれて持続的発展的にコミュニティを再⽣する。住⺠も利⽤者に留まることなく主体的に「当事者」として参加することが期待される。22概念①―コミュニティプラットフォームことで市場全体の需給を均衡させるメカニズムが創発だと説明される。國領(2011)⽂3)は,プラットフォーム上で⽣じる創発概念は「複数の主体が相互作⽤することで,必ずしも予測できない付加価値が⽣み出されること」と定義している。そこで「創発型まちづくり」を「相互作⽤のある活動主体や住⺠が集まると,それぞれの単純な総和にとどまらない活動が相互作⽤によって2.2概念①―コミュニティプラットフォーム⼈びとの社会関係の⼀側⾯として「⾃助,共助,公助」と分類される中で,コミュニティとは「共助」を対象とする概念である。それらは⼀定の共通の基盤を共有する集合体で,例えば,地域社会もまさにそうである。地域社会の中には,趣味サークル,清掃や介護のボラ単純な総和にとどまらない活動が相互作⽤によって現れる活動」と定義し,本実践活動の概念図を以下に⽰す(図2-1)前掲。3.CPの形成と活動筆者らの実践研究におけるCPの形成を段階ごとに辿る。下記の通り(表3-1)前回の実践活動を第⼀段ンティア活動及び⼦育て世代のグループ,さらに地縁組織である町会⾃治会や⺠⽣委員等,様々な活動が重層的に展開されている。しかしそれらの活動の多くは可視化されていないことや,活動の結節点というようなハブ機能がないために,住⺠からの認知度の不⾜,新規参加者の獲得の困難さ及び相乗効果が発揮できないなどの課題がある。また,伝統的な地縁組織の町会⾃治会と市⺠活動との連携若い世代の地域への関表3-1段階別CP内容段階,今回の実践を第⼆段階,主査によるそれ以前の宮前まち倶楽部での活動を第0段階とする。時期活動目的CPの内容第0段階(2012-2016)まちの資源を意図的に結び付けようとする。個別主体に呼びかけ,紹介しあう。CP以前の活動。会⾃治会と市⺠活動との連携,若い世代の地域への関わり,新旧住⺠の交流は地域コミュニティのかねてよりの課題となっている。コミュニティプラットフォーム(以下「CP」)とは,地域の多様な活動主体や組織が横断的に情報を交換,共有し,意⾒交換及び合意形成等が図られ,有機的なつながりによって地域社会を共創していく仕組み3.1これまでの活動の経緯(2012年〜2018年)主査が代表を務める宮前まち倶楽部が第0段階に発掘したまちの資源を⼟台に,第⼀段階ではCP第一段階(2017-2018)まちの資源が一堂に会する場を共創し,その後は創発に任せる。CP=まちかどマルシェ/担い手=miyamaeぷらっと第二段階(2019-2021)CP=資源発掘+まちかどシェア/担い手=プラットフォーマーである。当初筆者らはCPを「まちかどマルシェ」として捉えたが,実はそのイベントは当⽇だけで成り⽴つものではなく,⽇々のまちの資源発掘活動とそれを通じて得られたまちの活動主体や区⺠との信頼関係があって初めて成⽴する。そこでその担い⼿を本実践研究より「プラットフォーマー」と呼び資源発掘の⽇常『miyamaeぷらっと』を発⾜し,公共空間である公園でそれら資源が出展・出店する「まちかどマルシェ」を8回開催した。その結果,参加者間で,また他セクターから参加主体への,様々な働きかけが起こり,創発的につながりや連携,マルシェ以外の場での活動や事業機会等へと結びついた。しかしCP「miyamaeぷらっと」を構成する団体により「プラットフォーマー」と呼び,資源発掘の⽇常的活動と数か⽉に⼀度のイベント両⽅から得られる資源を基盤とする仕組みをCPと捉え直した。2.3概念②―まちかどシェアCPの捉え⽅の移⾏に伴い,「まちかどマルシェ」という名前を「まちかどシェア」と改めた(「マルシェ」という⾔葉が商品売買のイメージが強く,公共しかしCP「miyamaeぷらっと」を構成する団体には2つあり混在していた。『プレーヤー型』:テーマやコンテンツを持って活動し,発掘され可視化され,他団体や主体と「つながる」ことに主眼がある団体『マネジメント型』:資源を発掘し可視化させ,多様な活動を「つなぐ」ことに主眼をおく団体

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