2021実践研究報告集NO.1926
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具体的には,「旧住⺠と新住⺠の断絶」における旧住⺠の思いとは,旧住⺠の農家から仕⼊れた「朝採野菜」等を買い求める新住⺠は消費には興味を向けるが,郊外地開発前の作法や⾵⼟にほとんど関⼼を⽰すことがないという無⼒感。開発され道路が敷かれ,アスファルトの下に追いやられた⾃分たちの基層⽂化への誇り,社寺を護っているのは⾃分たちだという⾃負こうした気持ちを新住⺠にどうシェアすればいまた地域の住⺠として活動するからこそ,その地域固有の暮らし全体に関わる多様なプレーヤーを分野横断的に包摂し,創発が起こりやすい「ごちゃまぜ」の空間を創ることが可能になるといえる。6.最後に筆者らは公共空間を活⽤したCPによる地域づくり負。こうした気持ちを新住⺠にどうシェアすればいいのかがわからない焦り。そこで朝採野菜をまちかどシェアで販売する際には,その農家の成⽴ちや農家飯,初午や花祭り等の年中⾏事も併せて紹介し,新住⺠に興味を持ってもらい,旧住⺠との相互理解を深める機会を提供するなど,各地層の⼈々の気持ちに丁寧に寄り添うことだ。圧倒的筆者らは公共空間を活⽤したCPによる地域づくりの⽅法論『まちかどシェア⼊⾨』の制作を2020年1⽉より本格的に始動。毎⽉⼀度内容の打ち合わせを開催。「HOW TO MACHIKADO SHAREまちかどシェア⼊⾨」を制作した。今後さらに研究を深め,まちかどシェアブックをさらに充実させていきたい。に⼈⼝の多い新住⺠と,郊外ニュータウンを新旧住⺠が互いを認め合い良さを活かしあう「郊外共同体」として⽣成させたいと願い,筆者らは旧住⺠と定期的に勉強会を開催している。3)「地域固有」の資源資源発掘活動が重要なのは地域の特質に呼応した資源発掘活動が重要なのは,地域の特質に呼応した地域固有の活動やプレーヤーがいるからであり,それを発掘することが地域のニーズに最も即した連携が⽣まれる素地となるからだ。宮前区は農業や地産地消の農産物を使った⾷育を⽀援する活動の層が厚い。それは川崎市全7区のなかで最も農地⾯積が広いからだ。また帰国⼦⼥の多い地域であり,帰国⼦⼥⽀援やその親による活動団体等の存在もこの地域ならではと⾔える。区内の⼀部が戦時中陸軍に接収されていたから歴史研究のグループも多い。さらに,なぜ地域活動に参加する若い世代が少ないのかについて,まちに積極的に参加している⼦育て世代にヒアリングを実施した結果彼⼥たちが地域に参代にヒアリングを実施した結果,彼⼥たちが地域に参加しているのは,⾃分が「○○ちゃんのママ」や「○○さんの奥さん」としてではなく,「○○さん」個⼈として,⾃分の趣味や関⼼事によってつながりや出番を持てたからだということがわかった。郊外住宅地は⺟や妻などの役割による出番で括られることの多い地域である。これもこの地域固有の資源「固有種」と⾔えるだろう。個⼈としての出番をいかにまちの中に作っていけるかが課題である。5.4プラットフォーマーこの⼿法の特徴は,この活動が⼀市⺠,あるいは市⺠有志の誰でもが容易に取り組める活動だという点である。まちづくりの先進的取り組みは得てしてモデル地区に選出され資⾦が付与された地区で実証実験<研究主査>・辻⿇⾥⼦宮前まち倶楽部代表・⼯学修⼠<研究委員>・渡邉秀樹有限会社リノベイトダブリュ代表取締役・⼯学修⼠藤牧功太郎ル地区に選出され資⾦が付与された地区で実証実験的に実施されることが多い。しかしこの活動は資⾦がなくとも,思いを持った市⺠であれば誰でも,地域を歩き,⼈々と出会い,関係性を築くことでプラットフォーマーになれる活動だ。・藤牧功太郎新宿区役所・⼯学修⼠・加藤聖(株)ミサワホーム総合研究所・⼯学修⼠*当実践研究報告普及版は『住総研研究論⽂集・実践研究報告集』No.48の抜粋版です。参考⽂献は報告集本書をご覧ください。

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