2021実践研究報告集NO.1924
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1.実践活動の背景1.1地域の⾼齢化と⼈⼝減少⽇本の総⼈⼝は2010年頃をピークに減少し,⾼齢化の進展とともに世帯規模の縮⼩が顕著になってきた。地⽅や中⼭間地で先⾏している⼈⼝の減少と⾼齢化は,⼤都市圏内においても顕著に現れてきた。地域社会での⼈⼝減少と世帯規模の縮⼩は,世帯内や地域社会内での互助を困難にし⽣活⽔準の維内や地域社会内での互助を困難にし,⽣活⽔準の維持が困難になりやすい。それにも関わらず,⾼齢化の進展は⼼⾝の機能低下や疾病による居住⽀援や看護・介護の需要を増⼤させている。更に1990年頃をピークとするバブル経済崩壊以降は,経済格差の拡⼤が顕著になり不安定で低額所得の家計が増え,安定した居住の維持の困難な世帯が増えてきた。写真3-4「ゆいまーる⼤曽根」のフロント1.2研究会設⽴の経緯と組織構成以上の社会経済状況は,⾼度経済成⻑期に建設された住宅団地においてより増幅して顕在化している。それは⼀時期に集中的に⼊居が実施されたこと,ほぼ同じ年齢や家族形態であったこと,集合住宅の場合には住居規模が世帯の成⻑に対応できなかったことなどの理由で⼦ども世代が住宅団地内に留まることがなかったことなどの要因でこの現象が増幅された更にけん引産業が製造業から三次産業やサービ実践対象の愛知県住宅供給公社の⼤曽根併存住宅は,1975年竣⼯の全480⼾,4棟から構成される住宅団地である(写真1-1)。⼤曽根は,名古屋市内の北東に位置し,⾼蔵寺ニュータウンなど郊外住宅団地への⽞関⼝となり,名古屋の市街地と郊外の結節点になっている。名古屋鉄道瀬⼾線,JR中央本線,名古屋市営地下鉄名城線,新交通システムゆとりーとラインが⼤曽根で交差する⼀⼤交通拠点である⼤た。更にけん引産業が製造業から三次産業やサービス業に移⾏したことも⼈⼝構造の変化を加速させた。⼈⼝減少と⾼齢化の進展が地域の購買⼒を低下させ,商業施設,⾦融機関,医療施設,教育施設なども居住地域から撤退することとなった。消費者がより⼤規模な施設に集中するという性向も従来の施設配置計画の前提には組み込まれていなかった。ラインが⼤曽根で交差する⼤交通拠点である。⼤曽根駅からは名古屋市の中⼼市街地である栄や名古屋駅に10分程度で到達できる。⼤曽根地域はかつて名古屋市街の郊外に位置づけられ,⼤規模な⼯場が多く⽴地していた。現在ではそうした⼯場跡地を利⽤して公的住宅が⽴地し,名古屋市内でも有数の公的住宅の集中地となった。以上のように住宅団地における顕著な⼈⼝減少と⾼齢化の進展が,居住地内の⽣活施設などの⽣活を⽀える資源をも消滅させ,居住者の⽣活を不安定にするとともに地域全体の衰退を招くこととなった。全国各地で衰退傾向の⾒られ始めた住宅団地などで再⽣の試みが⾏われている。住棟の建て替えや修復・リハビリテーション医療・福祉施設の団地内⼤曽根併存住宅は3DK,49.95㎡の住⼾プランで愛知県住宅供給公社が建設したが,築40年以上が経過して⼤きな問題を抱えるようになった。第⼀に三分の⼀以上の空き家を抱えていたこと。第⼆に1号棟,2号棟にまたがる⼀階部分に⽴地していた床⾯積千㎡のスーパーが撤退したことである。それらの空スペースを有効活⽤しなければ,住宅団地と地域の衰退が予測された復・リハビリテーション,医療・福祉施設の団地内や住棟内への導⼊,学⽣をはじめ多彩な地域活動の団地内への導⼊などその試みは多彩である。それらの活動や試みは,地域や住宅団地の再⽣を⽬的にしつつもどうしても試みや活動の継続を⽬指すことになりやすい。そこで,本実践活動では従来の試みとは異なり,⼀⼈ひとりにふさわしい安⼼できる⽣活の実現という観点から住宅団地の地域⽣活拠点活動退が予測された。店舗跡だけの有効利⽤は困難で,空き住⼾も含めた住宅団地全体の⼀体的な検討が進められた。愛知県住宅供給公社への構想提起と検討を経て,⾼島平で導⼊されていた分散型サービス付き⾼齢者向け住宅の導⼊が認められ,空き住⼾をバリアフリーに改修して70⼾の「ゆいまーる⼤曽根」が運営されるこを捉え直した。ととなった。写真1-2⼤曽根居住研究会の様⼦

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