2020実践研究報告集NO.1923
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進めることの限界を迎えている。本格的な住環境改善に向けた取り組みを実践していくために,昨年の取り組みを知る者による継続的な活動⽀援が必要である。今後住⺠が,⾃⽴した持続的なまちづくりを実践していくため,今⾙⽥地区内で醸成されつつある機運を逃してはならない。14実践研究⽬的1.4実践研究⽬的本実践研究は,⾙⽥地区における住環境改善活動の⼀環として,地区内の私有地の公的な活⽤可能性を明らかにし,私有地を公的に活⽤する段階へつなげることを⽬的とする。これまでの活動で,⾙⽥地区に住む住⺠が所有する⼟地を⼀部または全部,公的な場として開放している状況が散⾒された。住共作成た邸庭将来M邸庭例えば,集落で唯⼀店舗を構えるM⽒は,⾃邸の庭から歴史的建造物であるレンガ橋がよく⾒えるため,他⼈が庭の内部まで⼊りレンガ橋を眺めることができるよう整備している。O公園図1-3住⺠と共に作成したM邸庭の将来イメージO公園O⽒は,⾃分が持つ空き地が集落のメインストリートに⾯していることから普段は敷地全体を駐⾞場として開放し,夏は盆踊り⼤会の会場として提供している。そのため,この敷地は住⺠からはO公園と呼ばれている。通り抜け道また,東⻄に伸びる奥州街道に沿って形成された宿場町は,⾼低差の激しい南北⽅向を繋ぐ道路はあまり整備されてこなかった。これに対し,⺠家の敷地は南北⽅向に向かって短冊状に分割されており,多くの⺠家の敷地には南北⽅向に通り抜けられる通りが存在し,ときにそれらは私的な通り道なのか開放されているのか曖昧になっている。け,⾙⽥地区を調査し図に起こす。調査は,⽬視によって領域を判断するフィールドワークと,⾙⽥地区の全世帯に活⽤実態を尋ねるアンケートをベースとしつつ,現地で活動する中で住⺠との会話から得られた情報をもとに随時更新した。図1-4住⺠と共に作成したO公園の将来イメージこのような,私有地を⼀部または全部開放する状況が起こる原因を探るため⼟地を開放している所有者や周辺住⺠に話を聞くと,衰退している地⽅にある集落という閉ざされた地域単位が独特の中間領域を⽣み出している事がわかった。つまり,世帯⼈数減少により1⼈あたりが負担すべき管理⾯積は増加傾向にあるうえ⾼齢化により管理能⼒が低下している⼟地公的活⽤領域図を作成しながら,公的に活⽤できそうな⼟地の所有者と交渉し,景観に変化を加えたり,地区内に⾜りない機能を補うための実験的イベントを開催するなどの実践へつなげる。私有地の活⽤実践は,提案を創るワークショップ,アイデアを形にするための家具制作ワークショップ,活⽤実験の3つのステップに分けて実施する。ため⼟地の所有意識が弱まっており,その⼀⽅で,古くから助け合うことで信頼関係が構築されてきた集落内では家の外で出会う⼈は基本的に知り合いや少なくとも顔⾒知りであるため警戒⼼は弱い。この傾向を肯定的に捉え,私有地の使われていない⼀部または全部を活⽤し,地域に不⾜している機能を補填する活動を実践する。2.⼟地公的活⽤領域図の作成2.1フィールドワーク⼟地公的活⽤領域図のベースを作るために,現地調査を実施する。⼟地公的活⽤領域図は,1.5実践⼿法実践研究は,「⼟地公的活⽤領域図」の作成,私有地の活⽤実践という2つの作業に分けて進める。まず,現在公的に使われている領域と今後公的に使われる可能性のある領域を,敷地境界線に関わらず調査し図に起こしたものを⼟地公的活⽤領域図と名付①道路など⾏政が所有し公的に活⽤されている公共施設,②所有は個⼈だが公的に活⽤されている領域,③所有は個⼈で今のところ公的に活⽤されてはいないが公的に活⽤できそうな領域の3つの要素によって構成される。観察した⼟地が

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