2020実践研究報告集NO.1923
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1.はじめに1.1背景⽇本の⼈⼝減少,都⼼への⼈⼝集中などにより,消滅する集落が多数存在する。存続を願う集落にとっては,故郷を離れた⼈々がUターンしやすい環境,他地域で育った⼈々がIターン,Jターンしやすい環境,また定住はしなくともファンが多拠点居住の1拠点として選んだり定期的に訪れて地域活動に参時点の⼈⼝のピークを形成している60­64歳が65歳以上になる頃,⾙⽥地区は限界集落となる。⾙⽥地区は江⼾時代に宿場町として形成された地区である。宿場町としての役割を終えたあとは養蚕業として栄えたが,集落の真裏を⾛る蒸気機関⾞から舞う⽕の粉が度重なる⽕災を引き起こし,養蚕住宅の数も⼤幅に減少する中で農業へと主産業をシフ拠点として選んだり,定期的に訪れて地域活動に参加しやすい環境を整える必要がある。2018年に⼀般社団法⼈移住・交流推進機構によって実施された「若者の移住」調査⽂1)によれば,20代から30代の移住に興味のある既婚男⼥のうち約5割がその理由として⾃然溢れた魅⼒的な環境をあげており,3割以上が⼦育てに適した⾃然環境をあげているなど,⾃宅周辺の環境を移住先選びの⼤きな宅の数も⼤幅に減少する中で農業へと主産業をシフトさせて現在に⾄る。宿場町時代から様々な危機を助け合いながら乗り越えてきた歴史があり,2011年の東北⼤震災でも,⾃治体の補助なく⾃主的に炊き出しを⾏い危機的状況を乗り越えている。⽕災に苦しめられた名残で,今でも⼤⾕⽯で造られた蔵や防⽕⽔槽,鋼の外壁材など独特の要素が⾒られ,歴まち法の計画区域内にも指定されている。決定要素と考えている。新型コロナウィルスの影響によりリモートワークが⽇常化し,⾃分の住む地域への関⼼が⾼まっていることに鑑みれば,この傾向は強まっていくことが予想される。多くの集落では,地域内の景観や機能といった環境の不⾜,質の低下が懸念される。景観に⽬を向けてみれば,世帯数が減少すると空き地が増えたり,世帯⼈数の減少や⾼齢化により管理不全の家⼟地このような環境的資源も活⽤しつつも,歴史的⽂脈に依存しすぎず住⺠の⽣活を中⼼に考えた集落の在り⽅を模索したい。35404550世帯⼈数の減少や⾼齢化により管理不全の家,⼟地が増えることで景観が悪化するといった問題が起きている。機能⾯で⾒れば,公共施設の劣化や,変化する住⺠のニーズを既存の空間が満たしていないといった課題があげられる。これらの課題を改善し,移住者希望者が移住しやすい住環境を整える⼿法を確⽴させることが,集落を存続させる上で必要不可⽋である。0510152025300〜4歳5〜9歳10〜14歳15〜19歳20〜24歳25〜29歳30〜34歳35〜39歳40〜44歳45〜49歳50〜54歳55〜59歳60〜64歳65〜69歳70〜74歳75〜79歳80〜84歳85〜89歳90〜94歳95〜99歳100歳以上1.2対象地本実践研究は,福島県国⾒町⾙⽥地区という集落で実施されている。国⾒町は福島県の最北端,宮城県との県境に位置しており,⼈⼝約9,000⼈の⾃治体である。⾙⽥地区はその中でも最北端に位置しており,JR⾙⽥駅から徒歩5分,福島市と仙台市をつなぐ国道4号線からアクセスできる好⽴地にある(図11.3これまでの活動国⾒町の役場職員と知り合ったことをきっかけに,2018年から⾙⽥地区のまちづくりに関わっている⾙⽥地区に通い現地調査を実施したり住⺠と20年前基準年(2015)図1-2 国⾒町⾙⽥地区の⽣年コホート分析国道4号線からアクセスできる好⽴地にある(図1-1)。⼈⼝は約300⼈,世帯数は90を切っており,これらの数は年々減少傾向にある。図1-2の⽣年コホート分析が⽰すとおり,80歳以上⼈⼝の⾃然減だけでなく,40歳未満⼈⼝の社会減も顕著である。2015年る。⾙⽥地区に通い,現地調査を実施したり住⺠と交流しながら地区の課題を発⾒し改善の⽅法を住⺠と模索する伴⾛型のまちづくりを実施している。夏には,⽇本国内,そして海外から建築やまちづくりを学ぶ学⽣を公募し,⾙⽥地区の実態を把握するための調査や住⺠を巻き込んだワークショップを開催した。資⾦的な準備もなく,短期間での調査,ワークショップであったが,私有地を所有権を移動することなく⼀部または全部開放し公的な空間としている特徴を発⾒し,住⺠と話し合いながらその特徴を活かす提案を作り上げることができた(図1-3,図1-4)。この取り組みがきっかけとなり,⾙⽥地区内でのまちづくりの機運が⾼まりワクショップ終了後図1-2 国⾒町⾙⽥地区の⽣年コホート分析まちづくりの機運が⾼まり,ワークショップ終了後に住⺠が⾃主的に提案の内容を実践してみたり,本格的に提案を実現するにあたって住⺠どうしで話し合いが⾏われるなどの動きがある。役場職員も個⼈的に⾙⽥を訪れ,ワークショップ中にあがった住⺠からの要求に個⼈レベルで応えられる範囲で応えているなどの報告がされている。しかしながら,それよりも踏み込んだ取り組みを図1-1 福島県国⾒町⾙⽥地区の⽴地

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