2020実践研究報告集NO.1922
3/11

1.マムハウス⽴ち上げの経緯1.1なぜシェアハウスなのか「シングルマザーの貧困」と「貧困の連鎖」,この2つのキーワードが主査の琴線に触れ,不動産賃貸業として解決策を模索し始めたのが2015年初頭である。シングルマザーが集住する事で⽣まれる共助互助が貧困解消に繋がるのではないかと考え,シェアハウスという居住形態に着⽬し検討を始めた抱えた専業主婦を⼊居者像とした。また,新たな⽣活を⾸都圏に求める地⽅在住の⺟⼦世帯も⼊居者像とした。2)家賃想定:⺟⼦世帯の家賃補助額を最低家賃とする世帯年収が200万円前後の⺟⼦世帯で,⽣活保護等の公的扶助を受けない,受けられない層の⾃⽴⽀援を⽬指すが,家賃の低減化は必ずしもシングルマザーの⾃⽴⽀援とはならないとも考えたシングルマザー向けシェアハウスからいう居住形態に着⽬し検討を始めた。当時⾸都圏を中⼼にシェアハウス建築が不動産投資のトレンドでもありピークを迎えていた。主査も都内⼗数件のシェアハウス(単⾝者向け)を⾒学した経験があり,その知⾒を基にシングルマザーとシェアハウスの親和性を考察した。1)シェアによる個々の経済的負担減らないとも考えた。シングルマザ向けシェアハウスから次のステップへ進むための最低限の経済的⾃⽴の指標として,⽣活保護の家賃補助額をベンチマークとし,家賃を設定する事とした。3)世帯数:シェアのメリットを活かす世帯数の最⼤化切れ⽬のない⾃⽴⽀援を⾏うためには本実践の継続には収益性を確保しなければならない。また,将来的にシェアシェアハウスは通常賃貸物件と⽐較して設備投資が抑えられる点から,⽉額賃料や共益費を低めに設定する事ができる。また,⼊居者ニーズに合わせた設備や⽇⽤品等をシェアする事で,個々の経済的負担も軽減する事も期待できる。シングルマザーの経済的な⾃⽴⽀援を⾏う上でも有効であると考えた。2)⼊退去の容易さリングエコノミーによる⼊居者利益を⽣み出す仕組み作りのためにも世帯数は最⼤化する事とした。4)付加価値:保育園の併設と雇⽤の創出マムハウス最⼤の特徴であり先進的な取り組みである。保育園は別経営であり認可保育園の為,⼊居者の⼦ども達が100%⼊園できる訳では無いが,当該保育園の経営者の協⼒のもと市内の保育園⼊園をサポートする体制が構築2)⼊退去の容易さシェアハウスに予め家具,家電,備品を備える事で⼊居時の新規購⼊費⽤,引っ越し費⽤など,新⽣活へ移⾏する為の⾦銭的負担が減り,⼊退去が容易となる。また,⼊居⾯談の必須化,及び定期借家契約の条件のもと,保証⼈を必要としない点も諸事情を抱えるシングルマザーの部屋探しの悩みを解消する事ができると考えた。協⼒のもと,市内の保育園⼊園をサポトする体制が構築された。また,病児保育の機能も有し,育児ケアニーズに⼤きく貢献すると考えた。主査が直接経営する⽣活関連サービス店舗にて直接雇⽤をする事により,⼊居直後の無収⼊状態を回避する。それと同時に,雇⽤証明書・内定通知書を発⾏する事で保育園⼊園をサポートする事が可能となる。直接雇⽤はあくまで⼀時的なものとして位置付け,正規雇⽤や資格取得を⽬指す3)共通の集団形成によるコミュニティの創出誰もが住みやすい住宅ではなく,コンセプトに特化した住宅設備や集住のルールを整備し,特定の⼊居者を募集することで⼊居者間のコミュニティを運営者が主体的に形成する事例(コンセプト型シェアハウス)が多数存在する。また,シングルマザーの仕事と⼦育ての両⽴は容易ではなく親兄弟に頼れないケスもためのものとした。5)間取り:⽔廻りを各部屋に配置⼀般的なシェアハウスとは⼀線を画すこととした。シェアハウスという特殊な居住形態に永く住むことによる,⼦ども達の「家」に対する認識,価値観への影響に対して考慮する事を重視した。また,⼦ども達特有の感染症などへの対策としても間取りの基本設計には拘ったまた初めてての両⽴は容易ではなく,親兄弟に頼れないケースも少なくない。「遠くの親戚より近くの他⼈」という⾔葉があるように,孤⽴させないコミュニティ作りがシングルマザーの居住⽀援には必須であると考えると,シングルマザー向けシェアハウスを⽴ち上げる意義は⼤きい。1.2基本⽅針とハード⾯の設計の対策としても間取りの基本設計には拘った。また,初めてシェアハウスに住むシングルマザーが懸念する⼈間関係や暗黙のルールなどの煩わしさを払拭する意図も含んでいる。数少ない既存のシングルマザー向けシェアハウスは⼾建て,もしくはマンションをリフォームしており,ハード⾯(広さ,間取り,設備等)には限界があり,ソフト⾯(家事,育児サポート等)をそれぞれが模索していた。本実践は新築2015年当時シングルマザー向けシェアハウスは東京近郊に数える程しか無く,参考物件や情報が少ない状態であった。シングルマザーのニーズが何処にあるのかも解らず試⾏錯誤を繰り返した。数名のシングルマザーへヒアリング調査も実施したが,調査データとしては不⾜で確信が持てず,仮説に仮説を重ねながらもブレない軸となる基本構想,⾻格となる部分を約1年掛けて固めていったの為,理想を追求する事が出来た。その中で「住,育,職」は⼀体不可分のものと捉え,建物⾃体に全て盛り込む事で,既存のシングルマザー向けシェアハウスとの差別化を計った。(図1-1)年掛けて固めていった。基本⽅針1)⼊居者像:住まいと保育と仕事を同時に探さなければならない⺟⼦世帯2)家賃設定:⺟⼦世帯の家賃補助額を最低家賃とする3)世帯数:シェアのメリットを活かす世帯数の最⼤基本⽅針1)⼊居者像:住まいと保育と仕事を同時に探さなければならない⺟⼦世帯住まいと保育と仕事を同時に決める事はかなり難しく,「住,育,職」⼀体型サポートが必要なシングルマザー,離婚を機にシングルマザーとなる未就学児を図1-1マムハウスを構成する3要素

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る