2019実践研究報告集NO.1827
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め,郷里に住まいを確保しておく必要があること, 空き家を処分する,あるいは,賃貸に対する強い抵抗感がある為に,空き家が流通に乗らないこと,関連して,実家の仏壇や家財道具を処分できないことなど,二拠点居住の実現に向けての障害も指摘されている。 2.2.2 高知県との折衝 各自治体の空き家の実態を把握したうえで,高知県に対して空き家を活用した二拠点居住の実践に向けて,趣旨説明,モデルとなる地区の選定と市町村への紹介などの協力依頼を行なった(2019年6月〜7月)。 県庁内で,危機管理部,中山間振興・交通部と産業振興推進部の地域本部(高幡地域・幡多地域)に対して主旨説明が行なわれた。 市町村の選定にあたって,その可能性が担当監を交えて検討され,高幡地域(須崎市,中土佐町,四万十町含む)では,中土佐町は庁舎移転などもあり対応が困難,四万十町は30分圏内に適当な集落が見いだせず,須崎市は同一市内では適地がないため,市町村のエリアを越えての対応にならざるを得ないとの議論がなされた。幡多地域(黒潮町,四万十市含む)では,宿毛市中心部と松田川上流地域(橋上地区)土佐清水市中心部と三原村・四万十市中心部と後川や富山地区などが考えられるが,両地域間に日ごろの交流がないこと,30分以上の距離があることなどの課題が指摘された。加えて,中山間地域から中心部への移住者が多く,地震や津波が発生したときには,中山間の元の家に避難する人が多く,そのためにも移住者に貸したくないとの反応もあることが紹介された。 また,市町村レベルでは,避難訓練対策を重点に行っており,その後の生活支援まで意識がいっていない状況で,現在,大学の専門家の指導を仰ぎながら震災対策を段階的に進めている中で,二拠点居住という新たな視点での対策を進める余裕がないというのが市町村の実態であるなどの障害も指摘された。 これに対し, 改めて二拠点居住の可能性や有意性を説明し,モデル地域の選定のために,高知県の危機管理部,および,土木部(総括・住宅課)と直接に折衝を行なった(2019/07/23)。二拠点居住の有意性や必要性の検討を通して,空き家対策・防災計画に活発に取組んでいる(一旦は困難と判断された)四万十町が再度候補に挙がり,比較的集落規模が小さく,地域の意見の取り纏めが行ない易い志和地区がモデル地区として選定され,県庁により四万十町役場の危機管理室へ打診され,協力を得られることが確認された(2019/08/03)。 2.2.3 四万十町志和地区での二拠点居住の取組み ① 地域特性・防災計画 志和地区は四万十町東部の太平洋沿岸部に位置する。124世帯,人口250人足らずの小さな行政区で,定置網の発祥の地として漁業を中心としてきた「浦分」と米やショウガを主産物とする農業を中心にした「郷分」の二つの地区からなる。少子高齢化,過疎化が顕著であり,志和小学校は平成23年に廃校(黒石小学校へ統合),地域内には空き家も目立つ。 南海トラフ地震の際には,震度6強,揺れの継続時間は2分〜2.5分,津波による浸水想定は最大水深15m,到達時間(30cm水深)は10分〜20分であり,甚大な被害が予想されている(図2-5)。 図2-5 志和地区津波ハザードマップと避難場所

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