2019実践研究報告集NO.1827
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③自治体の空き家政策の把握: 空き家の発生要因と維持管理状況,空き家の分布状況,空き家対策(解体補助・リフォーム補助・耐震補助・空き家バンクなどの実施状況),空き家対策の目的と実績,防災計画と空き家活用の関連性,二拠点居住の可能性など(役所担当者/四万十町・串本町への聴取り調査,資料収集) ④空き家の実態調査: 非浸水想定地域(高台)の空き家の分布状況,建物の概要,維持管理状況,接道状況など(現地観察調査/四万十町・中土佐町・串本町) ⑤二拠点居住に向けて空き家の活用意向の把握: 浸水想定地域(四万十町志和地区)住民の空き家活用意向と属性,活用のための条件,活用内容,活用の有効性の広報と理解など(志和地区住民に対するアンケート調査,ワークショップ) ⑥二拠点居住の受け入れの可能性の検討: 非浸水想定地域(四万十町黒石地区)において二拠点居住に提供可能な空き家の確認,空き家の詳細調査(実測・維持管理状況),空き家提供の条件の確認,改修等の可否,非浸水想定地域による被災者の受け入れ可能性の検討など(黒石地区自治会代表者とのワークショップ,空き家所有者へのヒアリング) 2.1 「命を守る」から「暮らしを守りつなぐ」への展開 2.1.1 防災対策の進捗状況と課題 2012 年内閣府が発表した南海トラフ地震による津波高の新想定では,黒潮町の34.4m が最大値となる。これを受け高知県では,第2期計画で行動計画の見直しと新規対策が,第3期では一次避難としての「命を守る」対策が最優先で行われ,避難道・避難場所の整備,避難タワーの建設がほぼ完了した。現在,「避難生活段階=命をつなぐ」へと移行し,被災後の道路啓開計画の策定,仮設住宅の配置等を決める応急期機能配置計画などが進められている。 ここでは,甚大な津波被害が予想される高知県中土佐町・黒潮町を対象に,地区単位で構成される自主防災組織(以下,自主防)の活動特性の解明と評価を通して,津波対策の取り組み実態と課題を明らかにする。両町の6つの自主防と地域住民へのヒアリング,中土佐町67の全自主防へのアンケート調査(2018年度1月実施,回収率63%(42/67))により,防災活動の内容,留意点,評価を把握した。 ①自主防災組織の取り組み 住民自らが災害から自分の地域を守るために,行政区を1〜8区ずつに束ねて,67の自主防が組織されている。東日本大震災以降急速に組織化が進んだ。 各自主防の取組みでは,避難訓練が約9割と共通するものの(表2-1),地域の特性を反映した独自で多様な取り組みが進められる点に,各自主防の特徴が窺われる。同じ避難訓練であっても,浸水被害の大きい い地域での夜間実施や,完全避難までの時間計測,高齢者の多い地域では車椅子を利用して要支援者を運ぶ,グループホーム入居者が参加するなどである(表2-2)。また,防災倉庫の管理・点検,発電機の試運転,避難後は生活用水に困ると予想してポリバケツに雑水を溜めておく等の取り組みがある。 全体の傾向としては行政と同様に「命をつなぐ」対策に移行しており,避難所の運営マニュアルを作成し,使用訓練や炊き出し訓練などが行われている。個人の物も防災倉庫に保管できるよう2ヶ所目の防災倉庫の設置を申請するといった先駆的な取り組みもなされている。防災食を用いての懇親会や防災テントなどの資材を使い花見を行うなど,防災訓練を楽しむことをモットーに防災活動を行なっている事例も見られる。自主防ごとの活動の自由度や独自性は高いものの,長期の生活への具体的な対策は殆ど行なわれていない。 図2-1 自主防災組織の意識と活動数の関係 表2-1 地区特性を反映した取組み係 表2-2 地区特性を反映した取組み係

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