2019実践研究報告集NO.1827
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住),高齢者や母子家庭などの福祉と生活の融合化,地域との連携居住,維持管理=賃貸費用とのバーターなど,これからの生活課題を先取りし,生活スタイルや共住スタイルの変革を図る可能性がある。 ④地域活性化: 防災を通した沿岸地域と高台地域との域間連携と捉え,「地域活性化=UIJターンの促進」から脱却して,関係人口の確保や増加が期待される。また,産品の相互購入,行事への相互参加,地域特性や地域力の相互補完や相乗化,宿泊を含む相互交流など,実質的な連携活動の企画・実践・恊働により,両地域の活性化や地域力の向上も図られる。域間連携を通じて,地域コミュニティのバインディングの強化にもつながる。防災対策を手掛かりにしながらも,空き家活用の二拠点居住は,包括的な地域づくりにつながることが特徴である。 4. 今後の課題と展望 集落・地区単位で二拠点居住を中心にした脱災の方法を検討しながらも,それを四万十町に限らず,他の市町村へ,高知県や和歌山県,他の沿岸地域全体へと広げながら,二拠点居住の質を高めることや更なる脱災の方法の創出,それを基盤にした地域間の連携を深めることへの展開の必要がある。具体的には以下の通りである。 ①東海・東南海地震や南海トラフ地震による浸水想定区域全体(静岡・愛知・三重・和歌山・高知など)へと拠点居住や脱災方法の展開を図る。また,二拠点居住が長期化することへの対応策を検討する。 ③福祉的な視点や地域づくりの視点で空き家における高齢者の共同居住や老若提携型の住まい方など,新たな共に住むカタチを検討する。非血縁関係による共同居住やシェア居住,地域との連携による多様な共同居住のありようを検討する。 ④いつ来るともしれない地震・津波に対する住民のストレスの実態や緩和方法について医学的見地を交えて検討する。 ⑤脱災を起点にした域間交流による地域魅力の向上方法や実践方法を検討する。 ⑥空き家対策と防災計画とが連動するような施策の考案を行う。特に,空き家を防災に向けた二拠点居住の場に活用できるような支援・補助制度の構築が望まれる。 ⑦今後の脱災に向けての取り組みとして,地域の力だけでなく,行政による制度化された支援の必要性や可能性と具体的な方策を検討する。 <研究主査> ・横山 俊祐 大阪市立大学 教授・博士(工学) <研究委員> ・徳尾野 徹 大阪市立大学 准教授・博士(工学) ・蕭 閎偉 大阪市立大学 講師・博士(工学) <研究協力者> ・長崎 健 大阪市立大学大学院工学研究科・研究科長 ・浜辺影一 四万十町志和地区自主防災会・会長 ・中野未歩 四万十町危機管理室 ・國元豊美 四万十町黒石地区民生委員 ・澤田博睦 高知県理事・産学官民連携センター長 ・四万十町志和地区の住民の皆様 *当実践研究報告普及版は『住総研 研究論文集・実践 研究報告集』No.46の抜粋版です。 参考文献は報告集本書をご覧ください。 ○今後の取組み予定 ・地元の高知県立大学との研究の連携による課題の解決方法を模索する。 ・高知県いの町の地域グループが意欲的に実践している ものの,行き詰まりを見せる定住人口の増加を図る空き家の利活用を発展的に捉え,仁淀川下の浸水想定地域(土佐市)との防災を媒体にした域間連携に発展させる。 ・既に交流を実践している高知市下地地区と仁淀川町との間の域間連携を,防災対策を踏まえた二拠点居住へと発展させる。 ・和歌山県串本町において,浸水想定地域に居住する若年層家族数世帯が関心を有している高台での二拠点目住宅の確保に対する支援を行う。 ・危機感を有する学芸員と共同して,高知県海岸域にある文化財の避難方法について検討する。

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