2019実践研究報告集NO.1826
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資料3-1 提言の骨子 としている。 提言は,沖縄県,国,建築関連団体や専門家を含め,あらゆる関係者と関係団体へ向けて基本的な考え方を示すものであり,連絡会議を含めたあらゆる関係者が継続的に努力すべきと考える内容を示した。 連絡会議は,2019年11月12日に沖縄県の建築指導行政および住宅行政部門に「提言」の提示を行った。さらに国土交通省や全国の関係者,関係機関への提示を想定している。一方で沖縄県内の関係者の認識の共有のための活用も必要である。 4. 活動の意義と今後の展望 4.1 活動の成果と意義 本活動の目的は,沖縄の気候風土に適した住まいづくりの方向性を示すとともに,建築物省エネ法にもとづく省エネ施策が望ましい方向に向かうよう影響を与えることであった。 住まいづくりの方向性については,2章で記した冊子において課題を10項目に整理し,設計実践集の資料を作成することができた。6名の設計者の取り組みからの実践の抽出という限られた材料ではあるが,内容は連絡会議内の議論と公開研究会での発表を経て,過去の沖縄での取り組みの蓄積(表2-1)を踏まえた検討を重ねたものである。この資料は第一期版と称しており,引き続き地域の設計者に開かれた形で資料作成を継続し内容を充実するための型とすることを意図している。 資料集の作成を通じて,多くの項目において,各々の設計者が課題とし実践してきたことが互いに付合することを発見したとともに,湿度への対応など個々の模索が継続しており相違点が発見された事項もあった。独立した活動を行う設計者が,共通の気候風土の元での住まいづくりの理念と技術を共有する場を継続的に設定できたことが重要な成果と考えている。 省エネ施策への影響については,結果としてηACの基準値の6.7への変更という大きな状況の変化があったが,このことについての連絡会議の活動の影響は公式記録では確認することができていない。 連絡会議としては,様々な機会を通じて県,国他に意見の表明を行ってきており,状況の変化へ向けて可能なことを取り組んだことと,国の基準の見直しの方向がある程度一致したものと理解している。 ただし,連絡会議の議論においては,ηACの基準値が変更されたことについて,基準値がより現状に沿った方向へ変更されたと評価する一方,外皮基準の基本的な考え方が変更されていない点で本質的な変更ではないとも理解している。基準値をめぐる規制の強弱の議論ではなく,住まいの環境形成の基本的な考え方についての議論として継続することが重要ととらえている。 理念,技術,施策について実質的な検討を継続できる場を,地域の建築設計関連団体と連携しつつ設定することの意義を示せたことが,本活動の意義であったと考えている。 4.2 「外皮」概念の再編と沖縄モデルの提示について 題目に示すように,「外皮」概念の再編と沖縄モデルの提示を当初の活動の目標に掲げていた。 2章の②(バッファーゾーン),③(遮熱),④(外部空間)で記した考え方は,夏季の熱に関わる環境を建築の外部から内部に至るまで連続する多重の要素で日射を遮り風を活用する方法で対処するものである。これに対して基準上の「外皮」は面積が計算可能な連続面であり,一枚の皮として建築の内外の境界をとらえる。 外皮という語の使用が実務において一般化する中,建築における内外境界を外皮とする考え方の是非についての本質的な議論を,本活動では提起してきた。

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