2019実践研究報告集NO.1826
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3. 省エネ基準の見直しをめぐる経緯 3.1 省エネ基準の運用の見直しとパブリックコメント 助成を受けた活動を開始した時点(2018年6月)においては,延べ面積300㎡未満の小規模住宅を含む全ての住宅について審査による省エネ基準の義務化が2020年までに実施されるとの見通しがあった。 この方針について国土交通省は2018年度の検討を経て2018年12月に「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方について」(第二次報告案)を公開した5)。2018年12月7日〜2019年1月5日にこの案についてのパブリックコメントの募集が行われた。 第二次報告案 ・大規模中規模建築物(住宅以外)は省エネ基準を義務付ける。 ・大規模中規模の住宅は届出を義務付ける。 ・小規模の住宅・建築物(延べ面積300㎡未満)においては審査による省エネ基準の義務付けを行わない。 ・小規模の住宅・建築物については「省エネ基準への適否等」の建築士から建築主への説明を義務付ける制度を創設する。 連絡会議としては,小規模な住宅への義務化が当面行われないことで,2020年に大きな問題が生じる事態が避けられると受けとめる一方で,義務化の方針が継続されている状況であることも認識していた。 パブリックコメントの募集は,沖縄の専門家や市民が省エネ基準についての意見を直接国に届ける重要な機会ととらえ,連絡会議は建築設計関連三団体へ呼びかけ文を送付し,パブリックコメントが実施されている状況を各団体の会員に知らせる活動を行った。パブリックコメントへの意見提出は個人の判断によって行われたが,審議会の部会資料によれば,総数902件の意見のうち,事務局が「沖縄の気候・風土にあった省エネ基準を検討すべき」という意見に分類したものが83件,さらに別の分類に収録されたものが4件以上あると思われることを合わせると全体の約1割が沖縄県における省エネ基準のあり方に関わるものであった(表3-1)。 パブリックコメント後の社会資本整備審議会建築環境部会において,第二次報告案の方針は一部の表現修正を経て承認され確定された。 この方針を受けて2019年5月の国会で建築物省エネ法の改正法が成立し公布された。 表3-1 パブリックコメント(2018年12月〜翌年1月) (沖縄関連のもので,審議会資料に掲載された要約) は、デフォルト化し入力項目を大幅に削減することで、簡易な評価方法とすることとしています。 その他(1件) 利用の少ない評価手法は廃止する等、評価手法を整理した方がよいのではないか。(1件) 今後の検討の参考にさせていただきます。 26 3.8地域における住宅の外皮基準の合理化(75件) パブリックコメントにおける主なご意見 見解・対応等 沖縄独自の取組を評価すべき(47件) 沖縄のような蒸暑地域においては、外皮基準は馴染まない。沖縄の気候風土を踏まえた基準を検討してほしい。(32件) 今後の検討の参考にさせていただきます。 2 沖縄の気候に対応した花ブロック、遮熱ブロック、雨端、自然風利用等の取組を評価対象にしてほしい。(14件) 8地域特有の省エネに資する取組について、省エネ性能を適切に評価する手法の検討を引き続き進めてまいりたいと思います。 2 基準値を緩和するのではなく、開口部における日射を遮蔽する様々な技術を評価するべき。(1件) 今回の見直しは、沖縄県における建築物の仕様の実態を踏まえ合理化したものです。開口部からの日射を遮蔽する花ブロックや遮熱ブロック等については、引き続き、適切な評価手法の検討を進めてまいりたいと思います。 2合理化に賛成(28件) 8地域の外皮基準の見直し案であるηAC=6.7という水準は、沖縄に適した住環境づくりに取組む上で実態に合った水準である。(28件) - 3表3-2 パブリックコメント(2019年9月〜10月) (沖縄関連のもので審議会資料に掲載された要約) 3.2 省エネ基準の見直しとパブリックコメント 改正法の成立後,関係政令の整備の検討に国土交通省は着手していたと考えられる。その内容は,2019 年7月以降の社会資本審議会の小委員会の資料と議事録から知ることができる。この段階で多岐に渡る具体的な基準の見直しが検討課題となった。その一つとして「8地域の冷房期の平均日射熱取得率の見直し」が 2019 年7月の小委員会で検討課題として示された後,8月の小委員会で沖縄県(8地

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