2019実践研究報告集NO.1826
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17 建築物省エネ法に基づく省エネ基準に対して建築設計者の活動団体である「沖縄の気候風土適応住宅連絡推進会議」(連絡会議)は,蒸暑地域の住まいづくりの原則を示し,省エネ施策の改善を求める活動を行ってきた。 住宅の外部から内部までの多様な要素で熱を制御し風を活用する遮熱,湿度対策などは,外皮基準と異なった考え方による住まいづくりの方法であり、連絡会議は沖縄の気候風土に適した住まいづくりの考え方の十原則を公開研究会で提示し,提言を作成し,沖縄県や国土交通省に意見を伝える活動を行った。この間,国土交通省が沖縄県での冷房期の平均日射熱取得率の数値の見直し案を示すなど,国の対応の展開も見られた。 蒸暑地域の住まいにおける 「外皮」概念の再編と沖縄モデルの提示 松田まり子建築設計事務所 代表/松田 まり子 伊志嶺 敏子,清水 肇,中本 清,平良 啓,金城 優 1. 活動の背景 1.1 建築物省エネ法と「省エネ基準」 「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(2015年公布,以下,建築物省エネ法)にもとづく省エネルギーのための建築関連の基準(以下,省エネ基準)は,住宅について,国内を8地域に区分し,地域ごとの建築の内外の境界(外皮)に関する基準値を定め,算定される設計一次エネルギー消費量が基準値を上回らないものとしている。 本稿執筆時点(2019年10月)で,300㎡以上の建築物の新築,増築の際の届出の義務付け,「住宅トップランナー制度」(年間150戸以上を供給する住宅事業者に遵守を促す)等により「省エネ基準」が推進されている。 1.2 沖縄県(8地域)における問題点 この省エネ基準はUA値(外皮平均熱貫流率)とηAC値(冷房期の平日射熱取得率)の基準値を地域ごとに定め,基準値を越えない均ことを求める(以下,外皮基準)。沖縄県(省エネ基準の区分の8地域)の外皮基準は,UA値の基準値はなくηACが3.2以下としていた(2019年11月まで)。 沖縄県においては,現行の外皮基準が示されて以降,沖縄の建築設計者が通常の方法と考えている住宅設計の多くが外皮基準に適合しないことが指摘されるようになった。 さらに筆者らは特定非営利活動法人・蒸暑地域住まい資料1 省エネ基準と沖縄モデルの違い 実践研究報告No.1826 の研究会の活動を通じて,沖縄の気候風土に適応し省エネ性能を高めた住宅が外皮基準に適合しない問題を指摘してきた。 また、沖縄県は2017年度に「沖縄らしい気候風土適応住宅形成事業」を実施し,特定非営利活動法人・蒸暑地域住まいの研究会がその作業に関与した。その際,県内の一般的な住宅のηACが大幅に3.2を越えること,さらには,沖縄県,環境省,国土交通省それぞれのモデル事

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