2019実践研究報告集NO.1826
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<研究主査> ・松田 まり子 松田まり子建築設計事務所 代表 <研究委員> ・伊志嶺 敏子 伊志嶺敏子一級建築士事務所 主宰 ・清水 肇 琉球大学・教授/博士 ・中本 清 特定非営利活動法人 蒸暑地域住まいの研究会 理事 ・平良 啓 株式会社国建・常務取締役/博士 ・金城 優 有限会社門 代表取締役 <活動協力者> ・西里 幸二 沖縄県建築士会 会長 ・金城 傑 K・でざいん ・久高 多美子 東設計工房 ・大城 通 てぃーだ建築設計室 ・根路銘 安史 アトリエ・ネロ ・井上 智至 琉球大学 学生 ・常松 寛未 琉球大学 学生 *当実践研究報告普及版は『住総研 研究論文集・実践 研究報告集』No.46の抜粋版です。 参考文献は報告集本書をご覧ください。 外皮の考え方が再編される方向性 ① 建築の内外の多重の環境上の要素を外皮とは異なる概念として位置づけることである。設計理念として,住宅の内外を外皮で隔てるものと,内外を多重の境界で構成するものを対比することで両者の相異がわかりやすいものとなる。この考え方を省エネ基準に反映させるためには,外皮基準とは別の計算方法,あるいは仕様規定による推進などの方法を方法を構築する必要がある。 ② 外皮の概念を拡張し,外皮内外の条件を含めて外皮を評価の評価を行う方向である。平均日射熱取得率(ηAC)は熱貫流だけでなく,外皮が受け取る日射量という要素を含んでいるため,外皮の外側の条件を加味して評価する余地がないとは言えない。日射遮蔽物をηACの算定の要素に加えていく作業が今後進行すると考えられるが,これは外皮の指す範囲が拡張されていく方向として理解することもできる。 沖縄モデルの構築二面の可能性 ① 設計モデルとしては,特定のモデル的なものを打ち出すよりも既存の多様な取り組みの中に理念と技術が映されており,それらを系統的に集約したものをモデルとすることが望ましいという方向で取り組むことになり,2章で述べた形でモデルを表現することとなった。 ② 制度については,基準案等の具体的な方法(計算方法や数値)の提示も考えられたが,国土交通省が省エネ基準自体の検討を継続している情勢であったため,手法論ではなく制度の基本的な方向性を提示することを継続した。とくに制度上の沖縄モデルを提示する段階には至っていない。次の段階として所管行政庁が定めることができる気候風土適用住宅認定基準(1.3参照)を沖縄県が具体的に検討する段階に入れば,制度上の沖縄モデル構築が課題になると想定している。 4.3 今後の活動課題 気候風土に適した住まいづくりの理念と技術を集約する活動は,より多くの建築設計者・関係者の関与するものとして継続する必要がある。 一方,国の省エネ施策は,小規模住宅の適合義務化の見送りや8地域の基準値の変更が行われた分,今後の義務化や8地域の施策や基準の具体的な方向に注意深く対処する必要がある。省エネ基準には気候風土適応住宅という地域での制度構築の余地もあり,次段階の課題となると考えている。

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