2019実践研究報告集NO.1824
3/12

その住宅を社会や地域においてどのように実装するかの⽅法論が抜け落ちている。2.⽬的と⽅法本実践活動においては,第⼀に家主建物仲介管理業者居住⽀援団体に対1.背景本実践活動の背景には,特に⼤都市における⺠営借家に居住する⾼齢者,⾮正規雇⽤の若中年者およびシングルマザー世帯の急増がある。こうした世帯の経済的な基盤は極めて脆弱で,適正な居住環境の確保もままならず,そうした貧困が次世代に連鎖する懸念も拡⼤している。ところがその⼀⽅で⽇本は今や空家⼤国である第⼀に,家主,建物仲介管理業者,居住⽀援団体に対してヒアリング調査を実施し,空き住⼾改修のハード整備とその後の継続的な⽣活⽀援等に関する課題や解決策を明確化する。第⼆に,NPOモクチン企画が積み重ねてきた「モクチンレシピ」を元に,既存住宅を改修するための「地域善隣版モクチンレシピ」を開発し実装化する。簡便・ところが,その⼀⽅で,⽇本は今や空家⼤国である。2013年の住宅・⼟地統計調査では全国に820万⼾の空家があり,耐震性があり駅から1km以内に⽴地する賃貸⽤空家だけでも137万⼾に上る。それに加えて,近年は元持家だった住宅が空家になり,放置された状態に近いものが急増している。上記の状況を解決する⽅法は誰が考えても極めて単低廉なことはもとより,⾼齢者等に対応したバリアフリーをはじめとする安⼼レシピや,家主・店⼦の双⽅にとって付加価値を⽣むデザイン的に優れたレシピを開発する。第三に,家主や居住⽀援団体の協⼒を得て,モクチンレシピを⽤いた住宅改修を実⾏する。それを通じてモクチンレシピの特性や有効性を明らかにしつつ本実純である。空家を活⽤して居住に困窮している⼈たちを受け⽌めればよい。しかし,家主は家賃の不払い,近隣トラブル,孤独死等を懸念して,単純には貸したがらないのだといわれている。これでは,放置空家が増える⼀⽅で住む場所に困る⼈が増加する⼤⽭盾は解消されない。そこで,2017年4⽉に住宅セーフティネット法が⼤幅に改正され新たな住宅セフティネット制度1)クチンレシピの特性や有効性を明らかにしつつ,本実践を多点展開するにあたっての事業的な課題を明確にする。以上の⼀連の活動を通じて,家主,宅地建物取引業者,居住⽀援団体,本⼈や⾃治体,地域社会等の多様なステークホルダーを巻き込みながら,住宅確保要配慮者が良質な住宅に居住し安⼼して⽣活できることを幅に改正され,新たな住宅セーフティネット制度1)が始まった。この制度は①セーフティネット住宅の登録制度,②登録住宅の改修・⼊居への経済的⽀援,③マッチング・⼊居⽀援の3本柱で構成されている。ところが,登録住宅は,制度開始後2年半近く経過した2019年10⽉現在でも923物件,12,335⼾に留まっており,数が順調に増えているとは⾔い難い。⼀⽅,住宅確保要配慮者への居住⽀援を地域で⾏う主体として実現するための「地域善隣版モクチンメソッド」を確⽴することが本実践活動の⽬的である。新たに定められた「居住⽀援法⼈」は,265団体と⽐較的順調に増えている。すなわち,適格な住宅さえ確保できれば,事態は⼤きく展開する可能性があるのに,3.実践活動3.1ヒアリング2018年7⽉〜2019年4⽉までの間に住宅セーフそこで,もやいが宅建業の資格を取得し,住宅確保を⾏いたいと考えている。家主からNPOが借り上げ,当事者にサブリースする⽅式も考えている2018年7⽉2019年4⽉までの間に,住宅セフティネット法に多少ともコミットしている居住⽀援団体等3者,家主1者,宅建協会⽀部1者,宅建業者1者,⾃治体1者へのヒアリングを⾏った。事者にサブリースする⽅式も考えている。◆NPO法⼈ふるさとの会&株式会社ふるさと⼭⾕の⽇雇い労働者の街でホームレス⽀援の実績を基に,1999年にNPO法⼈となり,現在は荒川区,墨⽥区,台東区,新宿区等で,独り暮らしが困難な⽣活困窮の⾼齢者・障害者を主対象にして,借上げ住宅にスタッフが常駐する「⽀援付き住宅」を中⼼に地域で◆認定NPO法⼈⾃⽴⽣活サポートセンター・もやい⽣活困窮者に対して,当⾯のシェルターを提供することを⽬的に活動を⾏っている。アパートを借りるに住み続けられるための社会的包摂活動を⾏っている。住まいの確保に関しては,㈱ふるさとが⾏い,住まい⽅の⽀援はNPOふるさとの会が担う体制である。㈱ふるさとを家賃債務保証のために⽴ち上げ,過去10年間は居宅⽣活の継続を⽀えることができたが,近年は⾼齢者が増加し,⼼⾝の機能障害による死亡事故や急な⼊院,退去等で保証債務の代位弁済が増え事業リスクとなってきたそこで宅建業者となり「社会際しての難関は連帯保証⼈がいることである。その部分をNPOが団体として保証している。現在は2名の専従スタッフとボランティアで600世帯を対象に家賃滞納回避の⽀援を⾏っている。主な⽀援対象者はDV被害者,児童養護施設出⾝者,精神障害者等で30歳代以下が30%を占め,10代の⼈もいる。⼥性が30%である。家賃滞納の般的な事故率は1%程度と云われてい業リスクとなってきた。そこで宅建業者となり「社会的不動産事業」を展開することとなった。経済的な問題や社会的な制約の多い⽣活困窮者の家探しを仲介することは容易ではなく,店舗や内⾒同⾏など様々なサポートが無ければ⼊居申込⾃体が成り⽴たない。さらにオーナーの審査に引っかかるなど最終的に契約に⾄るまでのマッチング⾃体が⾮常に難しい。そこで,㈱ふるさとは仲介業から不動産賃貸業への展家賃滞納の⼀般的な事故率は1%程度と云われているが,もやいの事故率は5%程度であり,これを下げることに注⼒している。そのこともあって,「もやい結びの会」という互助組織や交流や⾷事提供のための居場所づくりを⾏っている。本来であれば,⽣活困窮者は⽣活保護を申請すればアパートを確保できるはずだが,⺠間の⼊居差別と公的住宅の不⾜により実際に確保することが容易でない。

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る