6.4実践活動のメディア掲載実績域の公共財や⽇常⽣活の場へと裾野を広げることも必要であり,⾝近な施⼯事例は,住⽣活における畳復権へと繋がるきっかけとなりうる。8.まとめと今後の課題古来よりその本質を変えず,独⾃に継承してきた畳は,現代⽇本の多様な住⽣活においても,靴脱ぎの⼤前提を捨てない限り重要な要素であり続ける本課題表6-1 主な掲載記事(準備期間含む)提を捨てない限り重要な要素であり続ける。本課題をきっかけに,⽇本に数台しか現存しない,希少な動⼒中継織機を商⽤レベルで動態保存できたことの意義は⾮常に⼤きい。備後表だけでなく,⽇本住⽂化の核⼼と⾔っていい畳とその原材料に関する学術研究が⾶躍的に進むと思われる。今後も再⽣織機を実践活動に活⽤し,技術継承しながら畳表の流通に直接参与する⽅法で学術研究を展開し,備後表の保全と継承のための知⾒と指針を得たい。また,単なる保存ではなく,最新CG技術なども駆使し,再⽣織機にさらなる改良を加え,製織技術開発にも貢献したい。動⼒中継織機再⽣の移管⼿続きや作業⼯程が想定より多く,保管状態がよくなかったこともあり,実践研究期間内に⼿織中継織機の再⽣と技術指導を受けるまでに⾄らなかった今後も福⼭⼤学備後地域遺産までに⾄らなかった。今後も福⼭⼤学備後地域遺産研究会を核として,備後表継承会や地域遺産フォーラム(ギャラリー蔵フォーラム)など地域と協働で,「備後藺草による備後表」の保全と継承に努めたい。⼀定の研究成果を得た後は,再⽣織機を⽣産者が使⽤できる仕組みをつくりたい。最後に,当該再⽣織機を特定するための名称を再⽣関係者と委員で検討した。設置した福⼭⼤学の所在地名である三蔵を取り⼊れ,またお披露⽬式が三蔵祭当⽇であったことから,「備後三蔵動⼒中継織機(略称:三蔵中継)」(2019年10⽉26⽇Rebirth)とした。<研究主査>・佐藤圭⼀福⼭⼤学⼯学部建築学科教授福⼭⼤学⼯学部建築学科教授<研究委員>・中嶋健明福⼭⼤学⼈間⽂化学部メディア・映像学科教授<活動協⼒者>Atelier Hongo, 上原経⽷有限会社7.施⼯計画今後の再⽣織機を活⽤した備後藺草による備後表施⼯計画として,⾻董&ギャラリー喫茶蔵(福⼭市松永町,旧塩⽥主岡本家の宝物蔵)の蔵内茶室3畳(炉切り)と蓮華寺(福⼭市今津町旧⼭陽道今津宿脇本陣)の書⾻董&ギャラリー喫茶蔵, 有限会社佐野商店髙橋畳店, 有限会社中村機械製作所, 広島県藺業協会備後表継承会, 福⼭商⼯会議所, ⽂化財畳保存会マルヱ株式会社, 株式会社⼭園織機製作所, 蓮華寺・⼤岩智之福⼭⼤学⼤学院建築学専攻修⼠課程・河⽥陽依菜福⼭⼤学⼤学院建築学専攻修⼠課程図6-4 2019.10.12中国新聞記事(掲載許諾)と蓮華寺(福⼭市今津町,旧⼭陽道今津宿脇本陣)の書院上段の間4畳の表替えを検討している(図1-1)。いずれも⺠間施設であるが,地域コミュニティの核となり,公共財としての役割を果たしている。地元国宝に和紙畳表が使われる⼀⽅,⽇々多くの地域住⺠が訪れる場所に,備後藺草による備後表が中継ぎの伝統技術で施⼯されることで⼀般への普及啓発となる。備後表継承には,指定・登録⽂化財だけでなく,地元備後地福⼭⼤学⼤学院建築学専攻修⼠課程・来⼭淳平/⼿織中継職⼈・廣川ヨシエ/藺草農家・渡辺幸三/備後産業⽀援コーディネーター*当実践研究報告普及版は『住総研研究論⽂集・実践研究報告集』No.46の抜粋版です。参考⽂献は報告集本書をご覧ください。
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