2019実践研究報告集NO.1823
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4.2製織唯⼀の商⽤動⼒中継織機をもち,福⼭⼤学と協働事業契約を結ぶ佐野商店に依頼し,社員である製織職⼈から研究会のメンバーに製織指導いただいた(図4-3)。これまでも,数名の学⽣は佐野商店の中継六配の織機で製織・加⼯体験を⾏っており,製畳して,仮設の茶室などを設計・施⼯した実績がある⽂3)。製織実践にあたり希少な備後藺草(地草)を⽤意した製織実践にあたり,希少な備後藺草(地草)を⽤意した。刈り取り・乾燥後,しばらく倉庫で寝かせた後,機械で⻑さの選別を⾏う。通常,上から1番(⻑引き), 2番(中⻑)が引き通しの⾼級備後畳表⽤で,3番⽬が中継六配に使われる。試作は,本郷町で栽培した藺草の内,通常使⽤には⼗分な品質の4番⽬を⽤意した。廉価な短い藺草を⾼度な技術で継ぐことで品質を担保する,中継の本質を試すためである。次は5番⽬で,試みる予定である。まず,「かす」と現場で⾔われる,乾燥した藺草に霧吹きによる湿りを与え,⽔分を浸透させるために束ねて⽴て置く作業を⾏う。これにより藺草に粘りを与え,製織中に折れることを防ぎ,締めた藺草同⼠が互いに馴染むようになる。次に,藺草の束の根を⼿で握って⽴て,傘状に広げ,折れたものや細すぎて⾃⽴しない藺草を除外するさらに製織後に表に出る部分を想藺草を除外する。さらに,製織後に表に出る部分を想定し,傷物や⾊違いの藺草を⽬視で除外するという,⼀連の「選り出し」作業を⾏う。この製織前の作業に熟練された職⼈の⽬利きが必要であり,これを如何に早く丁寧に⾏うかで,製織作業効率や畳表の品質が⼤きく左右される。再⽣織機は当初,相当強く締めて打つ(織る)設定であったが,職⼈の指導により,3.5kg/7尺を⽬安にジシ図3-9 3分割されたツムの上下(正面)とその駆動部(背面)メの圧⼒を緩めて調整した。通常の畳表は1〜2kg/7尺程度,中継六配は4kg/7尺以上ある。約2時間で,1畳分(7尺)を織ることができた。モーターベルトの位置で,製織スピードを調整できるが,早すぎるとトラブルも多くなる。図4-3 藺草選り出し作業の技術指導4.3加⼯加⼯は,現場では「仕上げ」や「こさえる」と⾔われる製織の最終⼯程である(図4-4)。包丁やメスと呼ばれる専⽤のナイフで,製織後に傷物の藺草を取り除く作業である。ここまでの藺草栽培と畳表⽣産(製織・加⼯)が,伝統的な藺草農家の仕事である。現在では,栽培と⽣産は分業されていたり,また⽣産と流通をし防⽌装置は実装しなかった。また,打ち込みの密度や織り上げ枚数も電⼦制御できるが,⼤量⽣産を前提としないため,今回は実装しなかった。卸業者(製造卸業)が担ったりすることもある。建築関係者や⽂化財専⾨家にもあまり理解されていないが,ここまでの作業を畳屋(製畳職⼈)が⾏うことはないことを特筆しておきたい。農産加⼯品である畳表と,床を付けた畳とは,その流通過程において似て⾮なるものである。畳表製造卸業者からなる広島県藺製品商業協同組合が,「びんご畳表」という地域団体登録商標をもつこの制度で畳表」という地域団体登録商標をもつ。この制度では,加⼯作業だけを備後地域の認定業者が⾏った⼀定品質の畳表ならば, 「びんご畳表」となりうる。「原草:熊本,製織:熊本(もしくは広島),加⼯:広島」という⾃主検査シールの貼られた「備後表」が流通している⽂1)。これを「熊備(くまびん)」と称することがある。加⼯後は,5〜10分ほど表裏を天⽇⼲しするので,製織時の天気も勘案しなければならない。図4-4 加⼯(仕上げ)作業の技術指導と天⽇⼲し

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